Vlogger(Video Blogger)向けカメラが売れている。自らのライフスタイルを動画で撮影しYouTubeなどで発信する、いわゆるVlogger。彼らをターゲットにして動画撮影に重きを置いた製品だ。小型で取り回しが良く、クリアな映像と音声の収録ができるのが特徴だ。口火を切ったのはソニーが6月に発売した「VLOGCAM ZV-1」。パナソニックも、8月に同様のコンセプトの「LUMIX G100」を発売した。


 ソニーのZV-1は、発売直後の6月15日週に、BCNランキングによるデジカメ全体の販売台数シェアで2位、販売金額シェアで1位を記録。コンパクトカメラとして、久々のヒット商品になった。コンパクト市場の平均単価(税別)は2万円台後半が相場。この8月では2万7500円だった。ZV-1の8月最終週時点での平均単価(同)は9万3800円。似たような価格帯では、リコーのGRIIIが有名だが、ビデオ撮影前面に押し出したコンパクトカメラとして破格の売り上げといっていい。レンズ交換はできないコンパクトカメラのカテゴリでは、異彩を放つ存在だ。

 一方のパナソニックのG100は、発売直後の8月17日週では、販売台数シェアこそ28位とそこそこの売れ行きだったものの、販売金額では9位とトップ10入り。レンズ交換型であるためZV-1と異なるカテゴリだが、Vlogger向けという点では真正面からの競合製品。平均単価(同)も9万5300円と同レベルだ。
 
ソニーが6月に発売した「VLOGCAM ZV-1」

 いずれのカメラも形状が静止画撮影用のカメラだが、主な用途は4Kを含む動画撮影を念頭に置いている。Vlogでは、動画を自撮りする機会が多い。背面液晶がバリアングルになっており、自撮りしながらでも撮影映像を確認できるのも大きな特徴だ。

 デジカメでの動画撮影でとりたてて重視されることが少なかったマイク性能にこだわったのも共通。ソニーのZV-1で「指向性3カプセルマイクとウインドノイズ低減機構」、パナソニックのG100で「NOKIAのOZO Audio」を採用するなどで、それぞれでクリアな音声収録を実現したのも特徴だ。

 デジカメ市場はこのところ、激しい市場縮小に悩まされている。外出やイベントの自粛を強いられた新型コロナウイルス感染症の拡大が、さらに追い打ちをかけた。しかし、外出自粛やイベント自粛が徐々に解除されつつある中、カメラの販売も緩やかながらも回復基調にある。

 とはいえ、スマートフォン(スマホ)に市場を奪われている基本的な構造に変化はなく、カメラ市場の生き残りに各社苦戦しているのが現状だ。そこで、ソニーとパナソニックがVlog市場に目を向け、活路を見出そうとしている。
 
パナソニックが8月に発売した「LUMIX G100」

 消費者向け動画撮影市場の拡大には大きな障壁がある。編集だ。普通の人が編集なしで、単に撮影しただけで一般公開できる水準の動画を手に入れるのは至難の業。少なくともYouTubeなどでの公開を前提とした動画を制作するなら、編集は必須だ。言い間違えや、撮影のミスなどは編集でカバーせざるを得ない。

 面白い動画を作ろうと思うなら、なおのことだ。きちんと編集するとなれば、数分から10分程度の動画でもPCやソフトなどの環境もしっかりしたものが欲しい。それなりのテクニックも必要で作業時間もかかる。

 最近は、スマホでも動画撮影や編集が可能。SNSへのアップロードも簡単だから、手っ取り早くVlogを楽しむにはスマホが一番だ。Vlogをきっかけにした動画撮影をカメラ需要喚起の一要素として考えるなら、スマホと同等かそれ以上に、仕上がりの動画の品質を高める環境をセットで考える必要がある。撮影専用機ならではの画質・音質の良さはもちろんのこと、編集からアップロードまでを含む、結果としての動画の「良さ」をいかに簡単に実現できるかが重要だ。(BCN・道越一郎)