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デルタ電子と出光興産、カフェとキャッシュレス融合した次世代EV充電サービス

経営戦略

2020/08/07 20:00

 デルタ電子と出光興産は8月8日、横浜市中区のサービスステーション跡地を改装した複合型EV充電サービスの実証店舗「Delta EV Charging Station(Yokohama)」をオープンする。「Park&Charge」をテーマに、駐車場と電気自動車(EV)の充電、カフェ、災害時のエネルギー供給など複合したサービスを提供することで、ガソリンスタンドに代わる新たなサービスモデルを探る。

複合型EV充電サービスの実証店舗「Delta EV Charging Station(Yokohama)」

EV充電にプラスアルファの知恵が必要

 両社はオープン前日の7日、報道陣向けにオープニングセレモニーと内覧会を開催。デルタ電子の柯進興(コウ シンコウ)社長は、「EVやPHVに関心が高まっているが、インフラサービスを提供する事業者にとってEVの給電だけではビジネスが成り立たないという現実がある。新しいビジネスモデルを検証する目的で、出光興産と共同で実証店舗をオープンする。このステーションは、2018年に台湾で開催したCOMPUTEX TAIPEIで出品したコンセプトがもとになっている。充電以外のサービスを組み合わせることで集客効果を上げるとともに、電力需要の平準化や災害時の拠点としても活躍する、新しいビジネスモデルを構築したい」と意気込みについて語った。

 出光興産の平野敦彦取締役常務執行役員は、「消費者ニーズの多様化やデジタル技術の進展でモビリティーの環境やエネルギー供給の在り方が大きく変わっている。中心にあるのはEVの拡大だ。エネルギーをチャージするビジネスで培ってきた経験や資産を最大限活用しながら、EVの世界でどのような形でエネルギーやサービスを提供していくのか模索している中、デルタ電子とPark&Chargeというコンセプトで今日に至った。実証を通じて新しいEVのインフラを拡大していきたい」と語った。
 
オープンセレモニーでテープカットするデルタ電子と出光興産の幹部。
左から出光興産の内川尚和執行役員販売部長と平野敦彦取締役常務執行役員、デルタ電子の柯進興社長と
HSIEH YUNHO(シエ ユンホウ)IoT&e-mobility事業開発部ゼネラルマネージャー

 実証店舗は、横浜市中区山下町193-1のサービスステーション跡地で、900平方メートルの敷地内に6カ所の駐車場、4基のEV充電器、独自ブランドのカフェ「Innergie CAFE」を併設する。
 
併設する「Innergie CAFE」

 EV充電器は、直流25kWの急速充電スタンドが3基あり、EVに30分、700円(30分駐車無料券配布)で充電できる。充電している間は、カフェでコーヒーを飲んだり、モバイル機器を充電したりすることができる。
 
直流25kWの急速充電スタンド

 もう1基は、直流6kWのV2B充放電スタンドで、EVへの充電が60分で300円(30分の無料駐車場券配布)でできるほか、災害時にスタンドから充電したり、逆にEVからスタンドに放電(無料でコーヒーのクーポン券などを配布)したりすることができる。
 
直流6kWのV2B充放電スタンド

 なお、EVに充電をしなくても駐車場として活用できる。その際は、8~22時が30分で500円、22時~8時が60分で200円となっている。

ステーション内はキャッシュレス決済で完結

 実証店舗は、現金での支払いはできず、全てキャッシュレスで完結しているのも特徴だ。メンバーズカードなどの個人情報の登録は不要で、スマートフォン(スマホ)アプリ「EZQC」をダウンロードするだけ。後は画面に従って充電器を選択し、充電が始まると定価350~500円のコーヒーの無料クーポン券などがスマホに届くので、カフェでくつろぐことができる。キャッシュレス決済は、Apple Payや楽天ペイのほかクレジットカードに対応する。
 
個人情報の登録不要のアプリ「EZQC」で充電すると無料クーポンなどがもらえる。
ステーション内は全てキャッシュレス決済
 
EV充電中はカフェでくつろいだり、モバイル機器を充電したりできる

 ステーション内の設備は、全てデルタ電子の製品が採用されており、いわば同社のショールームのような役割を果たしている。電気室には、16個のリチウムイオン電池が直流でつながっており、隣接するパワーコンディショナーで交流に変換してステーション全体の電源を供給する。
 
リチウムイオン電池の直流電源を交流に変換する電気室

 スタッフルームとしての管理室では、ステーション全体のEMS(エネルギー・マネジメント・システム)が見える化できるほか、遠隔からの操作も可能になっている。

 今後の展開について、具体的な内容はまだ決まっていない。まずは、約3年かけてユーザーがどのような使い方をするのかなどを検証していく。ステーション内には、監視用カメラも設置してあり、ユーザーの行動などがモニタリングできる。それとEZQCアプリのデータやキャッシュレス決済のデータを突き合せることで改善点などがみえてくるのだろう。オープン後の稼働状況に期待がかかる。(BCN・細田 立圭志)