千葉大学大学院薬学研究院と医学研究院の研究グループは4月21日、西洋の国々で陽性率が7%未満の国で、陽性率がそれ以上の国に比べて1日の死亡者の割合が15%でしかないとの解析結果を発表した。アジアでも、陽性率が7%以上の多くの国で感染者の増加が続いている。日本の陽性率は、4月10日時点で7.8%で上昇傾向にあり、死亡者数を増加させないために陽性率を低下させるようPCR検査能力を拡大することが急務としている。

世界各国の新型コロナ感染症による人口1億人当たりの1日の死亡者数(2020年4月8日時点の情報による)

 新型コロナ感染症が世界的に猛威を振るっているが、現在はどこも自国での対応に精一杯で、他国との客観的な比較が十分ではない。そこで今回、千葉大学の研究グループでは入手可能な世界の情報を科学的に解析することで、感染症終息のための新たな戦略が見出せると期待し研究に取り組んだ。

 一般に、世界の感染拡大は国ごとのPCR検査陽性者数の増加で報告されているが、新型コロナ感染症では無症状の感染者が多くいることから、この数字は各国の検査の徹底度に影響されており、感染者数を正確には表していないと考えられる。そこで、1日の死亡者数をその国の人口で補正したデータを、その変化のパターンから地域ごとの予測を可能とする機械学習で解析した。

 人口1億人当たりの1日の死亡者数は、世界の多くの国で感染拡大30日後にほぼ一定となり、その推定値(中央値)が西洋諸国(欧州、北米、オセアニアを含む)で1180人に対し、中東で128人、ラテンアメリカで97人、アジア(中東を除く)で7人だった。このように死亡者数から解析すると新型コロナ感染症の広がり方には、西洋とアジア地域で100倍程度の著しい地域差がある。

 地域差の原因は、国の政策、高齢化の程度、BCGワクチン接種を含む厚生制度、医療環境、そして国民性などによる影響が考えられるが、民族の遺伝的要因(遺伝子配列の違い)による可能性もあるという。遺伝的要因の候補としては、ウイルスの細胞への侵入に関わる蛋白質や、ウイルスから体を守る蛋白質の遺伝子の民族による違いなどが考えられている。新型コロナとの関連について、この分野の今後の研究が必要としている。

 次に、感染による死亡者数とPCR検査の状況を比較した。人口で補正した死亡者数とPCR検査数の間に関係はなかったが、その陽性率との間に明確な相関が見られた。機械学習の解析によると、陽性率が7%未満の国の死亡者数は陽性率がそれ以上の国の15%に過ぎなかった。

 陽性率が7.0~16.9%の国と17.0~28.0%の国の間に推定死亡者数の差はなく、7%未満の陽性率を保つことが、死亡者数の抑制に重要と考えられる。また、西洋諸国に限らず、陽性率が2%以下の国には、1日の死亡者の減少傾向が認められる国が含まれている(オーストラリア、台湾、中国、韓国)。

 なお、日本を含めアジア諸国の陽性率は、これまでは感染者が少ないため西洋諸国に比べて決して高くないが、4月13日の東京の陽性率は32%もあった。

 どの国でも、PCR検査の陽性者が増加して数日経過してから死亡者の増加が始まる。この二つの増加の間の期間は、国によって1~25日間の違いがあった。研究グループでは、この死亡者数の増加がみられるまでの期間とPCR検査の陽性率が反比例することを見出した。

 陽性者が見出されて直ちに死亡者が増加した(この期間の短い)国は、PCR検査が不十分で症状が出る前の早期感染者を見落としていた、または重症者の入院が手遅れになった可能性が高いと考えられる。この結果からも、PCR検査の陽性率は死亡者数変動の指標となることが明らかになった。

 研究グループは、これらの結果から、新型コロナ感染症で死亡者数を減らすためにPCR検査の陽性率を低下させることが必要であり、そのためにPCR検査数を濃厚接触者などで症状が見られていない人にまで幅広く拡充させることが急務であると結論している。