家庭にも、オフィスのように1台でプリント・スキャン・コピーができる複合機が普及し、標準的な収入水準の家庭なら一家に1台、インクジェット複合機があって当然と思われていた。しかし、今年2月半ば以降、デスクワーク従事者を中心に、通勤せずに自宅で作業する「リモートワーク(在宅勤務)」が推奨され、ここにきて完全リモートワーク推奨となった。

 急なリモートワークや大学の授業、イベント・セミナーのオンライン移行を受け、収入の多寡を問わず、自宅にPCがない、プリンタ(複合機)がない、光ファイバーの固定回線がないという家庭が多い実態が浮かび上がってきた。プリンタは、リモートワークで進める業務によっては不可欠だ。

 また、年少以上の未就学児から大学生までの子どものいる家庭では、日々の学習や事務手続きのため、プリント機能のみの単機能プリンタではなく、コピー機能のあるインクジェット複合機があったほうがいい。本体だけなら、最安で税込み1万円以下で手に入るので、所有していない家庭や調子の悪い家庭は、新規購入・買い替えを検討しよう。
 

 家電量販店・オンラインショップの実売データを集計した「BCNランキング」によると、複合機を含めたインクジェットプリンタの月間販売台数は、消費増税直前の2019年9月、前年同月比131.0%と大幅な伸びを記録。ここで需要を先食いしたためか、19年10~12月は前年割れとなった。ただ、一桁減と落ち込みは小幅で、20年1月が前年同月比98.6%、2月が101.6%と、前年並みの水準に回復していた。

 3月は前半と後半で、店頭販売を取り巻く環境が激変し、最終的に前年同月比91.6%にとどまった。メーカー別でみると、モデルチェンジを前に値下がり、最安販売店舗で5000円を切る、機能を抑えた4色ハイブリッドインクのエントリーモデル「PIXUS TS3130S」の好調を受け、キヤノンのみ19年12月以降、4カ月連続で前年を上回っており、リモートワーク需要、家庭学習需要は、とりあえず自腹で買ってもいいと許容できる、低価格モデルに集中しているようだ。

 PIXUS TS3130Sやその後継機種PIXUS TS3330は、自動両面給紙やレーベル印刷、便利な2WAY給紙にこそ対応しないが、Wi-Fi経由のネットワークプリント、Wi-Fiなしで使えるダイレクトワイヤレスプリントに対応し、実用性が決して低くない。両面コピーは、紙詰まりが起きやすく、動画配信利用者にレーベル印刷機能がそもそも不要だ。
 
キヤノンのインクジェット複合機「PIXUS」のシンプルモデル「TS3130S」

 ただ、1台のプリンタを長く使い続けたい場合、L判やA4サイズ1枚当たりのカラー・モノクロ印刷コストや、メーカー純正の詰め替えインクなどの価格を事前に調べ、プリンタの本体価格と合算したトータルコストで比較しないと、「コスパのいい機種」かどうか分からず、機種選びの難しいところだ。また現在、一部の機種は在庫なし・入荷待ちとなっている。

 インクジェットプリンタのうち、主流のA4サイズ対応機種は、もともと持ち帰りに不向きな梱包サイズ・重量なので、今後、家電量販店の営業時間短縮、臨時休業が長期化しても、実店舗からインターネット通販に流れるだけで、影響は軽微だと予想される。(BCN・嵯峨野 芙美)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。