「CP+2020」が中止になった。寂しい。春を目前にしたこの時期の横浜といえば、カメラ・映像機器の祭典、CP+だ。本来なら今週末、2月27日から3月1日までの4日間、およそ7万人のファンがパシフィコ横浜に大集結するはずだった。折から新型コロナウイルス感染症のリスクが心配される中、やむを得ない措置。主催するカメラ映像機器工業会(CIPA)では今年、代替のイベントは行わない予定という。残念でならない。

CP+2020中止で閑散としているパシフィコ横浜

 この週末、パシフィコ横浜を訪れてみた。折しも25日、安倍首相がイベントの中止や延期要請を発表したばかり。付近は閑散としていた。毎年、会期中によく見かける、みなとみらい周辺の風景を撮影する人たちの姿もない。幸い1月から3月で開催されている横浜写真月間「フォト・ヨコハマ」は継続。報道写真展や佐藤健寿企画展といった写真展は開かれていたのが救いだ。
 
当然ながら展示会ホール内は人気もなく静まり返っている

 人気のないパシフィコ横浜で、これからのカメラ見本市のあり方について、思いをはせた。今年は、世界最大級の写真・映像の見本市、フォトキナがドイツ・ケルンで開かれる。予定通り開催されるとすれば、5月下旬だ。しかし、すでにおひざ元のライカを筆頭に、ニコン、オリンパスが出展しないことを表明している。

 特に、35mmフィルムカメラを発明したライカが出展しないことは、一つの事件として受け止められている。ライカジャパンによれば、ヴェッツラー郊外にあるライツパークを18年に拡張。ホテルや博物館ができたことで自前の施設が充実。フォトキナに出展する必然性が薄れたという。もちろん、費用の問題が大きいとも聞いた。
 
CP+2019の開幕を待つ来場者。毎年のことながら長蛇の列をなしていた

 フォトキナに大きなブースを構えると数千万規模での経費が掛かるといわれており、日本からの出展ともなれば、メーカーにとっては大きな負担だ。一方国内のCP+であっても、大きな経費がかることに変わりはない。

 カメラ市場の縮小が依然続く中、今回のCP+中止をきっかけに「もう見本市はいらないのではないか」という議論が起こることを心配している。メイン会場は即売会ではないから、直接の売り上げはない。「費用対効果」が疑問視されるかもしれない。
 
いち早く新製品を試せるのもCP+の大きな魅力だ
(CP+2019・ニコンブース)

 大宣伝イベントに、果たしてどれだけのカメラメーカーが耐え続けることができるのか。複数の出展関係者に取材したところ、はやりCP+を一つのターゲットとして準備を進め、プロモーション計画を練っている企業は多かった。

 カメラ本体はもとより、バッグや三脚など周辺機器で出展する企業はなおさら、こうした大勢が参加する「リアルイベント」でアピールする機会を重視しているという。このところ来場所の伸びは鈍化しているとはいえ、依然として7万人規模の人々が訪れるCP+。このパワーは絶大だからだ。
 
CP+の名物企画「上級エンジニアによるパネルディスカッション」。
2019年のテーマは「ミラーレス新時代に向けて」だった。カメラファンにとっては、
主要メーカーのキーパーソンから生の声が聞ける貴重な機会だ

 カメラファンとしても、CP+は心躍る4日間だ。発表直後の新製品を実際に試すことができるほか、各社工夫を凝らした企画で、撮る楽しみを体験することもできる。セミナーでは、撮影のテクニックを学んだり、最新の市場動向や技術動向についての情報を一挙に仕入れたりすることもできる。

 そしてもう一つの楽しみが、撮影だ。特に、コンパニオンやモデルを撮影できる機会が多い。今のご時世、なかなか路上スナップでは人が撮れない。かといって、スタジオや撮影会でしっかりとポートレート写真を撮る機会もなかなかない。しっかりとライティングを施して撮影できるブースもあり、奥深い人物撮影の入り口を体験できる。
 
豊富な撮影体験ができるのもCP+の醍醐味のひとつだ
(CP+2019・ソニーブース)

 カメラそのものは、見本市に行かずとも、いずれ量販店でじっくり試すこともできる。しかし、そこに集まるテクニックやノウハウ、撮影体験や同好の士との交わり、業界のキーパーソンからの情報共有は、実際にその場所に行かなければ味わえない魅力だ。カメラというハードウェアが柱ではあるが、写真を撮るという体験の魅力が秘められているからこそ、カメラの見本市には意味があるのだと思う。CP+2021は、ハードウエアの魅力をはるかに凌駕する「撮る楽しみ」を最大限に楽しみ、共有し、体験できる見本市としてリベンジ開催してほしい。(BCN・道越一郎)
 
CP+の前身、フォトイメージングエキスポ(Photo Imaging EXPO=PIE)では、
撮影会などの企画もあった(PIE 2009)