テレビ市場に異変が起きている。販売台数で不動のトップを走るシャープだが、シェアの下落が続いているからだ。2018年の秋ごろまでは安定的に3割前後のシェアを維持してきたが、直近で最後に30%を超えたのが19年の1月。以降シェアが下がり続け、消費税が増税された10月以降は25%を割り込んでいた。この1月は初売り効果で25.7%まで回復したが、昨年1月比で5.8ポイントもシェアを落としている。


 逆に台数を伸ばしているのが東芝だ。昨年1月は13.4%だったが、今年は18.5%まで5.1ポイント上昇。シャープに次ぐ2位の座を固めた。東芝躍進の原動力は安さ。1月に税抜き平均単価(以下同)が6万7300円と、ほぼシャープに並んだことが大きい。

 有機ELテレビの台頭もシャープを悩ませている要因だ。この1月、テレビ全体で有機ELの販売台数構成比は6.1%に過ぎなかったが、販売金額では19.2%とほぼ2割。有機ELテレビを持たない「液晶のシャープ」にとって、無視できる数字とはいえなくなってきた。

 事実、販売金額のメーカーシェアではトップがソニーで27.0%。シャープは22.7%で2位に甘んじている。昨年春までは、両社が互角に戦いパナソニックが絡むという三つ巴の状態だった。しかし、6月に投入した新製品をきっかけにソニーが頭一つ抜け、以降販売金額ではトップを走っている。
 

 販売金額の前年比をみても、シャープの苦戦は明らかだ。昨年の1月からこの1月までの13カ月間、前年を上回ったのは消費増税前の駆け込み需要が高まった8月と9月の2カ月だけ。ほかの月は前年割れだ。駆け込み需要が盛り上がった2カ月にしても、伸び率は競合他社に比べ低く、特需の波に乗れなかった。一方、ソニーは6月まで前年割れで苦戦したが、8~9月は大きく回復。10月は反動減でいったん前年を割れたものの、2桁増水準まで回復してきた。
 

 1月の売上高上位の製品をみても、シャープとソニーの違いは明らかだ。シャープの売り上げトップは単価10万8000円の50型4K液晶、2位が6万3000円の40型4K液晶、3位が3万4000円の32型ハイビジョン液晶。一方、ソニーの稼ぎ頭は単価23万1000円の55型有機EL、2位が16万2000円の55型液晶、3位が12万8000円の49型液晶、というラインアップだ。

 2月4日にシャープが発表した2019年度の第3四半期決算では、テレビ事業を含む「8Kエコシステム」セグメントの売上高が第3四半期までの累計で8.2%減、営業利益が27.6%減だったことが分かった。白物家電などの「スマートライフ」が35.1%増、パソコンのDyabookなど「ICT」が27.4%増である中での大幅マイナス。テレビ関連事業が大いに足を引っ張っている状況だ。

 シャープの野村勝明代表取締役兼副社長執行役員は、説明会で「中国での景気後退や米中貿易摩擦の影響が出ている」として、中国での需要減速を要因としたが、それだけではない。
 
2019年度の第3四半期決算を説明するシャープの野村勝明代表取締役兼副社長執行役員

 同社は、有機ELテレビに対抗できる高付加価値商品が乏しい。野村勝明副社長は、「数を追わず収益を重視していく」として、この数年来ソニーが歩んできたものと同様の戦略をとっていく方針を示した。

 シャープは今春、有機ELテレビに参入すると一部で報道されているが、主要メーカーで最後発。しかも、新型コロナウイルスによる生産体制への影響も無視できない状況だ。すぐに反転攻勢とはいかないだろう。8K製品のテコ入れとともに有機ELの投入で右肩下がりの現状から脱するには、しばらく時間がかかりそうだ。(BCN・道越一郎)