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【編集部座談会2020】スーパーのセルフレジは「無機質?」、テクノロジーの本質を見失わずに

時事ネタ

2019/12/28 19:30

 セルフレジや店舗における作業の省人化など、少子高齢化による人手不足を解消するために小売業におけるリテールテクノロジーの導入は避けられない。2020年中にローソンでは、レジなし店舗「ローソンゴー」の実験店舗をオープンする計画もある。11月にオープンした新生「渋谷PARCO」では、買い物体験の新しい試みが行われるなどリアル店舗の変化について編集部で議論した。

小売業の動向について議論する細田 立圭志編集長

セルフレジの賛否

 大手スーパーでも、導入が進んでいるセルフレジについて賛否の議論があるものの、編集部では前向きな動きとして議論が盛り上がった。部員がレジで見かけたほほ笑ましい光景は、小さな子供がセルフレジを操作したがっていたシーン。自分でお金を払ってみたいという自立心を刺激するようだ。

 子供に人気のセルフレジだが、年配の人の中には買い物するときの会話がなくなって寂しいといった意見もある。この点については、立ちながらのレジ作業を人に強いること自体が、そもそも今の時代に逆行しているのではないかといった話もあった。

 日本では立ってレジ作業をするのが当たり前だが、海外では人が座って作業するケースが多い。座って作業するのが失礼にあたるとの意識からか、働き手にかける負荷を必要以上に消費者が求めてはいないだろうかという見方である。
 
主婦目線で小売りをみる嵯峨野芙美記者

 米国のアマゾンで導入が進む無人レジ店舗の「Amazon GO」は、逆に人とのコミュニケーションが増えているという。店舗は無人かといえば実はそうではなく、人がおすすめの商品を説明したりしながら、来店客とのコミュニケーションを深めているのだ。

 単純作業から店員を解放して、店員は顧客満足度の向上につながる接客などに集中することの方が、よっぽど重要だろう。しかし、一方で無人レジは「冷たい」「寂しい」「無機質」といった批判も少なくない。セルフレジ導入による「コスト削減」や「人減らし」の視点から議論がスタートしがちだからそうなるのかもしれないが、本来は単純機能はロボットに任せて、人がより付加価値の高いサービスの提供に携わるといった、働き方改革にも通じるテーマであることを忘れてはいけない。

「渋谷PARCO」が示す新しい買い物体験

 11月22日に約3年の改装工事を経てオープンした「渋谷PARCO」を取材した記者は、ネットとリアルの融合した新しい買い物体験に注目した。130坪の売り場に11店舗が入居する。小さなスペースに多くの店舗が入れるのは、店頭在庫を極力最小限に抑えてデジタルサイネージと客自身のスマートフォン(スマホ)を連携させているからだ。

 サイネージに表示された気になる商品をピックアップすると、自分のスマホの画面に商品データが転送されて、そのままECサイトの「PARCO ONLINE STORE」で購入できる。サイネージのQRコードをスマホで読み取るだけでリンクする世界観だ。出店する企業にとっても高い費用をかけずに、渋谷のど真ん中のPARCOでポップアップ的な出店が可能になる。
 
新しい買い物体験に注目する南雲亮平記者

 これまでの複合商業施設は、都会の真ん中に出店するだけのコスト負担ができるテナントしか出店できなかった。そのため、どの施設に行っても同じようなブランドが入り、魅力に欠けて客足も遠のくという負のスパイラルが起きる。渋谷PARCOの挑戦は、そうした閉塞感に一石を投じるテクノロジーとして期待したい。

 ほかにも、鏡に映した自分の後姿を時間差で表示することで、服を着た時の後姿を自分で確認することができたり、メガネをかけたままバーチャルでいろんなメガネを試しにかけてみることができたりするなど新しい試みが見られる。

 小売領域のVRMRの導入は新しい話ではないが、来春から商用化される「5G」になれば、そういったことがストレスなくできるようになるだろう。2020年は、リテールテクノロジーの導入が加速するはずだ。(BCN・細田 立圭志)