2018年後半から市場が急拡大しているスマートフォン(スマホ)決済。その国内における先駆者といえば、15年に「Origami Pay」をローンチしたOrigamiだ。12年に設立したばかりのスタートアップ企業ながら、現在では大手金融機関やクレジットカード会社ともパートナーシップを結び、日本のキャッシュレス推進を象徴する存在にまで成長した。6月に拡張した新オフィスを取材してきた。

6月に床面積を2倍に拡張。リニューアルしたOrigami本社

全体を見通せるオープン“すぎる”新オフィス

 Origamiが本社を構えるのは、六本木ヒルズ森タワー。18年2月に移転したばかりだが社員の増員を受け、6月に約2倍の広さに増床した。記者がOrigamiのオフィスを訪問するのは、今回が初めて。ただ、森タワーに入居する他の企業の取材には何度も来たことがあるので、さぞや洗練されたおしゃれな空間が広がっているのだろうと予想していた。

 しかし、実際に同社が入居するフロアに到着して驚いた。受付は至ってシンプル。入口をくぐると正面に飾り気のない白いプレハブがポツン。アクセントとして前にOrigamiロゴのサイネージ、中に大きめの花を生けた花瓶があるのみだ。
 
飾り気のないシンプルな受付。
六本木ヒルズ森タワーの華やかなイメージとはちょっと異なる

 受付の手続きをしながら、周囲を見回して、また驚いた。会議室(これもプレハブ造り)から執務室まで、全てガラス張りで入口側以外の三方の外の風景が見通せるのだ。IT系スタートアップのオフィスというと、遊び心満載の仕掛けや独自色強めのレイアウトをよく目にするが、Origamiの場合はそれとはちょっと異なる。“オープン”を徹底的に突き詰めた、そんな印象を持った。

 同社PRコミュニケーション部の古見幸生ディレクターによると、オフィスのテーマは「未完成・発展性」と「透明性」とのこと。前者は、シンプルな造りの受付や会議室に象徴される。仕切りのパーテーションは実際に工場内の事務所や倉庫で用いられているものと同じで、これをあえてオフィスで採用しているそうだ。ヒルズらしくないむき出し天井も未完成さを際立たせている。
 
PRコミュニケーション部の古見幸生ディレクターが新オフィスのテーマを説明してくれた

 後者は、ガラスで四方を仕切った会議室が最も分かりやすい例だ。古見ディレクターいわく、「重要な情報を多く取り扱う金融会社だからこそオープンに」とのこと。外部の重役を招く際に使用する応接室や社長室までガラス張りという徹底ぶりで、オフィスのコンセプトに会社の目指すべき姿を反映させたいという思いがひしひしと伝わってきた。
 
オフィス全体がガラス張り! 四方から丸見えの会議室も

 ここまでの紹介だと、殺風景という印象を与えかねないが、決してそんなことはない。受付の裏側には、こだわりを感じる家具でコーディネートされたラウンジスペースが広がっており、社員がのびのびと打ち合わせをしたり、作業に没頭したりしていた。
 
広々としたラウンジスペース。シンプルイズベストの会議室とは異なり、
こちらはリビングのようなくつろげる空間に

 Origamiでは部署をまたいだプロジェクトが常に走っており、執務室を出てラウンジスペースでディスカッションが行われることが非常に多いそうだ。この空間は、週に1回開催される「ALL Hands」と呼ばれる全社ミーティング、勉強会、イベントなどにも活用されている。

 また、いかにも“Origami”らしいと感じたのが、オレンジの枠で構成された社内キオスク。ここでは、飲料水や食料品、Origamiグッズなどがあり、全て「Origami Pay」によって決済が可能。社員の福利厚生という側面もあるが、決済機能の検証などにも用いられているという。
 
「Origami Pay」で決済する社内キオスク

オフィスがシンプルでもコミュニケーションは活発

 非常にシンプルにまとめられたオフィスではあるが、コミュニケーションは活発だ。これが実現できている理由は二つある。一つ目は、テクノロジーがしっかり使いこなされているということ。Origamiでは、ビジネスチャットアプリ「Slack」や、Facebookのエンタープライズ向けSNS「Workplace」を頻度高く活用。Workplaceについては、Facebookから日本で最も社員が利用している会社として表彰されたこともあるという熟練度だ。
 
ビジネスチャットアプリ「Slack」
 
Facebookのエンタープライズ向けSNS「Workplace」

 また、支店(大阪・福岡・名古屋)とは会議システム「ZOOM」を通して執務室と常時接続している。「隣の席にいるような感覚でコミュニケーションをとっている」と古見ディレクターは説明してくれたが、このあたりにテクノロジーを取り込む深さのようなものを感じた。

 二つ目は、社内制度を機能させることへの意識の高さだ。Origamiは、ワークフロムホームやフレックスタイムの制度を設けている。これは特段珍しいことではないが、同社が重きを置くのは制度をいかに形骸化しないかということだ。例えば、ワークフロムホームは育児など特定の理由がなくてもすべての社員が週に1度利用できる。“誰でも取れる”ので育児を理由に利用する社員も引け目を感じることはない。

 Origamiで働く社員は、外国籍社員が全体の約3割、ワーキングママが約1割。慶弔休暇を同性カップルや事実婚カップルに適用するなど、ダイバーシティを推進している。多様な働き方の容認は、多様な人材がパフォーマンスを発揮するための施策でもある。

 設立から8年目を迎え、年数・規模ともにスタートアップから脱しつつあるOrigamiだが、「気持ちはいつまでもスタートアップでいたい」と古見ディレクター。金融業界は今だレガシーで旧態依然というイメージがあるが、Origamiの新オフィスにはその慣例を打ち破ろうという意思が体現されていた。(BCN・大蔵 大輔)