LINEとLINE Payが5月20日から29日の10日間にわたって実施した「祝!令和 全員にあげちゃう300億円祭」。開始翌日の21日に90億円分、3日後の23日に半分の150億円分を送付と、まさに記者会見で両社が「早い者勝ち」と掲げていた通りの展開で、300億円の達成も時間の問題かに思えた。しかし一転、キャンペーン期間が終了した翌30日に、無期限の延長戦を発表。残り100億円分が配りきれなかったというのだ。

「早い者勝ち」を掲げて突入したキャンペーンは無期限の延長戦に

鳴り物入りの「かんたん本人確認」だったが…

 終了前日の28日、「いよいよ明日で終了」というアナウンスがLINEキャラクターのムーン・ジェームズの「そうだった。大変!」といわんばかりの驚愕する顔と一緒にLINEに送られてきたが、延長の決定後に振り返るとどこか白々しい。残り1日で100億円分を配るのが難しいと分かっていたのなら、もっと早くにアナウンスする手段もあったのではないかと思う。
 
キャンペーン終了翌日に「早い者勝ち」の旗を降ろし「延長決定」に変更
 
「残り1日」を告知するムーン・ジェームズの顔が今となっては白々しい

 キャンペーンは、総額300億円相当をLINEの友だちに送り、それを受け取った友だちが1回限り1000円相当の「LINE Pay ボーナス」をもらえるというもの。つまり、200億円分の送付の完了は、2000万人の友だちに1000円相当の「LINE Payボーナス」が配られたことを意味する。LINEの国内月間利用者8000万人の4分の1に、1000円相当がばら撒かれた計算だ。

 ただし、このLINE Pay ボーナスを実際の店舗などの支払いで使うには、銀行口座と紐づける「本人確認」という登録作業が必要になる。LINE Pay ボーナスが送られてきた2000万人全員が本人確認をしているかは別問題。LINEでは、この数字を公表していない。

 しかも本人確認は、6月30日までに登録しないと1000円分の「LINE Payボーナス」は失効するというタイムリミットがある。「2000万人がLINE Payを使えるようになった」とは言えないもどかしさがある。

 もう一つ、気になるのが本人確認を簡単にできるようにして鳴り物入りで発表した「かんたん本人確認」(e-KYC)が、思ったようにはかどらなかったことだ。

 通常の「銀行口座連携」は、銀行のサイトで操作をしなければならず、登録手続きが煩雑というデメリットがあった。そこで、かんたん本人確認ではスマートフォン(スマホ)による顔写真と身分証を撮影した画像をアップロードするだけで操作が完了できるようにした。

 5月16日の記者会見でもその簡単さを大々的にアピールしたのだが、延長発表のリリースでは一部システム障害や遅延によってユーザーに迷惑をかけたことを報告している。

 そして、キャンペーン延長の発表によって再びかんたん本人確認にアクセスが集中する可能性があるとして、銀行口座連携による手続きの方を勧めているのだ。

1000円相当で個人情報を取得

 今回のキャンペーンの本質は、1000円相当のボーナスと引き換えに本人確認を促すことにあるという見方もできる。実際に、「1000円の販促費と考えれば安いのではないか」といった趣旨の論評も見受けられた。

 だが、かんたん本人確認に必要な身分証は、簡単とはいうものの運転免許証や運転経歴証明書、パスポート、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書となっている。これらに記載されている個人情報は、住所やパスポート番号、マイナンバーなどセンシティブなものばかりだ。
 
一部システム障害が起きた「かんたん本人確認」

 これらの個人情報を、スマホでアップロードすることに抵抗を抱くユーザーも少なくなかったのではないだろうか。ましてや、そのシステムで障害や遅延が起きたとなれば、なおさら慎重にならざるを得ないだろう。

 1000円相当を高いと感じるか安いと感じるかは個人の価値観によって異なるところだが、LINE Payのサービス価値を見極めるには、やはり2000万人のうちの何割が本人確認をしたのかが気になるところだ。

 そして、キャンペーンの延長を「300億円相当を配りきるまで」と無期限にしたことからも、残り1000万人の達成は意外に時間がかかるのかもしれない。

 だが今回、LINEは新たにLINEの公式アカウント各種で友だちになっているユーザーを対象に、1000円相当のLINE Pay ボーナスを送るという「禁じ手」を発表した。

 LINEユーザーの基盤である8000万人に、送るだけなら残り100億円相当(1000万人)の達成も簡単にできてしまいそうだ。そうなると300億円の達成も、手放しでは喜べないのではないか。(BCN・細田 立圭志)