「BCN+R」編集部では年末企画として、編集長・編集キャップ・編集部員3名の計5名が今年のトレンドを振り返る座談会を企画。テーマごとに、5回に分けて公開します。

クラウドファンディングはECの新しい形

 クラウドファンディングは、スタートアップや海外製品の国内販売代理店が利用するという常識は、2017年あたりから変わりつつある。特に、今までなかったカテゴリの製品や異業種からの新規参入は、大手企業であっても、いきなり一般販売せず、クラウドファンディングや数量限定販売・抽選販売などを活用し、慎重にユーザーニーズを確かめる動きが加速していると、一同の意見は一致した。

 今年登場した、ヒーリングサウンドでノイズをマスキングするボーズのワイヤレス耳栓「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」、プロジェクター・スピーカーを内蔵した3in1スマートライト「popIn Aladdin」は、クラウドファンディング発のヒット商品。他にも、コクヨが新しく開発したIoT文具「しゅくだいやる気ペン(仮)」、すぐに100台が完売した睡眠をサポートするロボット「nemoph」、世界最小・最安値のスマートロック「SESAME mini」などは、今後の一般販売に期待大だ。
 
ニッチな悩み、小さなニーズの市場性を確かめるクラウドファンディング
(左:ボーズのBOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS、右:コクヨの「しゅくだいやる気ペン(仮)」)
 
「Makuake」歴代3位の支援金調達を記録した「SESAME mini」

 キングジムは、同社初の試みとして、カフェなどで持ち物を見守るモニタリングアラーム「トレネ」のプロジェクトを「Makuake(マクアケ)」で展開するにあたり、クラウドファンディングを、新規概念の製品の市場受容性の確認、ユーザーに対するコミュニケーション手段の一つとして活用するとした。特に“コミュニケーション”は、他の手段にはないメリットだ。

こうした動きは、SNS活用ともリンクする。製品を実際に販売するため、売上も確保できる。自治体での活用も広がっており、テストマーケティングの場としてもECの新しい形としても、クラウドファンディングは浸透しつつある。

大手企業とスタートアップの力関係が変わる?

 ソニーは18年1月、バンド部分にスマートウォッチ機能を内蔵した腕時計「wena wrist」を生み出した自社の新規事業創出クラウドファンディング&ECプラットフォーム「First Flight」で、他の企業・スタートアップ向けに新規事業の加速支援サービスを開始した。

 15年7月のオープンから培ってきたノウハウを他社に提供し、業界全体を盛り上げていこうという意気込みを感じるという意見が出る一方で、今後の成長が期待できるスタートアップ・ベンチャーにいち早く目を付け、囲い込む狙いも見え、大手企業の技術力・アイデア力の低下を懸念する声が挙がった。最近始まった、公募・コンテスト形式でスタートアップを支援する大手企業のアクセラレータープログラムは枚挙にいとまがない。
 
ソニーの「First Flight」のコンセプトとスキーム

 また最近は、一般販売前に直営店やApple Storeに加え、「蔦屋家電」で販売するケースも多い。シロカの「かまどさん電気」や、11月に一般販売を開始したメッシュWi-Fiシステム「VELOP(ヴェロップ)」は、「蔦屋家電 二子玉川」で体験・体感イベントを開催していた。
 
「二子玉川 蔦屋家電」は頻繁に、クラウドファンディングや新製品のPRイベントを開催している
(写真は、18年11月に開催した「スマートな暮らし・製品体験イベント by Belkin/Linksys」)

 19年4月には、同店に、消費者と創り手をつなぐ、リアルならではの「場」と位置付ける「蔦屋家電+(ツタヤカデンプラス)」がオープンする予定。AIカメラで来店者の行動を分析する仕組みを導入し、以前はアンケートというかたちで集めていた来店者の声を行動解析で汲み上げ、製品開発に生かすという、新しいマーケティングリサーチの手法を提案している。

 矢野経済研究所の調査によると、「Makuake」などのクラウドファンディングサイトで支援したケースが該当する「製品購入型」のクラウドファンディングの市場規模は、14年度の約24億円から17年度は約100億円と、3年間で4倍に伸張した。18年度も増加を見込む。リアルイベントとも連動し、今後しばらく拡大が続くだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)