<KeyPerson> 今年2月の事業戦略発表会で8年ぶりとなるコンセプトの変更を発表した日立アプライアンス。広く知れわたった名キャッチコピー「エコに足し算」から卒業し、「ひとりひとりに寄り添い、暮らしをデザインする」というコンセプトのもと、新たな方向に舵を切る。今回、BCNの単独インタビューで徳永俊昭社長が新コンセプトに込めたビジョンを語った。

取材・文/大蔵 大輔、写真/松嶋 優子
2017年4月の社長就任時からコンセプト変更を意識していたという日立アプライアンスの徳永俊昭社長

“エコ”はすでに当たり前 機能訴求からシーン訴求へ

―― 新コンセプトである「ひとりひとりに寄り添い、暮らしをデザインする」について教えてください。これまで「エコに足し算」というとてもキャッチーなコンセプトを8年にわたって展開してきたわけですが、このタイミングでの変更にはどのような意味があるのですか。

徳永 たしかに秀逸なコンセプトゆえに長い間変えなかったということはあります。しかし、これだけデジタル化が加速しているなかで、変わらずにいるということに危機感も抱いていました。また、“エコ”というのは、いまや当たり前の価値になりました。

―― コンセプトの見直しは社長就任後に動き始めたのですか。

徳永 就任後すぐにというわけではありませんでしたが、事業の実態を知るにつれて変更の必要性を徐々に実感していきました。今までの仕事でいかに世の中がデジタル化しているかはわかっていたので、家電の世界に身を置いて、とてもギャップを感じました。

―― ITを基幹にする金融システム事業の出身だからこその気づきがあったんですね。具体的に家電のどのような部分に危機感をもたれたのですか。

徳永 金融システムでいうと、これまで日本企業は得意とする大規模システムをつくりあげるという構造で一定の成功を収めていました。そこにブロックチェーンのような新しいデジタル化の波や、アリババやテンセントなどのIT企業でありながら金融サービスを提供するディスラプターが登場してきた。そこに危機感が生まれていましたが、それでは家電の世界はどうなのかと。

 金融システムと家電は実はよく似ていて、すり合わせの世界なんです。不具合を起こさないために徹底した作りこみを行う。デジタル家電では当てはまりませんが、生活家電はまさに日本企業の得意とする技術力を生かせる分野でした。ところが、急速にデジタル化とグローバル化が進んできたことで状況が変わってきた。その危機感が新コンセプトにつながっているわけです。
 
「金融システムに携わっていたからこそ家電分野のIT化の遅れを実感した」と語る徳永社長

―― 今回、「ひとりひとりに寄り添い、暮らしをデザインする」というコンセプトに加えて、「360°ハピネス」「ハロー!ハピネス」という標語を発表されています。この違いは何ですか。

徳永 「エコに足し算」のときはこのキーワードに一本化していましたが、今回はわれわれの事業スローガンとして「360°ハピネス」、家電コンセプトとして「ひとりひとりに寄り添い、暮らしをデザインする」、そして製品のキャンペーンワードに「ハロー!ハピネス」を設定しました。

 なぜこうなったかというと、これまで「家電の機能を訴求する」というメッセージを前面に出してきましたが、現在のお客さまは「いかに暮らしを豊かにするか」「どう問題を解決してくれるのか」というシーンで製品を購入していると考えたからです。一人ひとりの困りごとはそれぞれ異なります。ゆえにさまざまな要素が凝縮したメッセージになりました。
 
コンセプト・事業スローガン・製品のキャンペーンワードが果たす役割のイメージ

―― 「エコに足し算」が成功しただけに社内では反発もあったのではないですか。

徳永 ご指摘の通り、「エコに足し算」を設定した当初はこのキーワードにぶらさがる各家電の機能も好評で、他社を圧倒する大きな成果をあげました。しかし、そのアドバンテージはいつまでも続くものではありません。「このままではいけない」という問題意識はそれぞれの社員にも共通してありました。なので、抵抗感はほとんどありませんでした。

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