Appleの最新スマートフォン「iPhone 8/8 Plus/X」は、新たに「Qi(チー)」規格のワイヤレス給電に対応し、別売の「Qi」対応充電台の上にのせるだけで充電できる。大手オンラインショップのAmazon.co.jpで販売中の「Qi」対応ワイヤレス充電パッドは、高くとも4000円程度。気軽に買い足せる価格帯だ。

Qiが普及しなかった理由は「充電中に使えない」から

 充電中もスマホを操作し続ける人は多いらしい。背面をガラスで覆い、ワイヤレス充電システムを組み込んだ新iPhoneが発表されると、「Qi」対応ケータイやAndroidスマホを利用していたユーザーは「充電中に使えないため、実は便利ではない」と、使い勝手の悪さを指摘。充電時間も通常の有線接続より長くなる。「置くだけ充電」の愛称の通り、「Qi」のメリットは、充電時にケーブルをつなぐ煩わしさを解消する点にある。
 
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11月3日発売予定の「iPhone X」の特徴の一つ、ワイヤレス充電

 2018年に発売予定のApple純正のワイヤレス充電パッド「AirPowerマット」は、新iPhone、Apple Watch、完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」の3台を同時に充電可能。「ワイヤレス充電」の仕組みは、iPhoneに限らず、モバイル製品に共通する新たな仕様として取り入れたとわかる。
 
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「Qi」のメリットは「置くだけ」の手軽さ

 サードパーティ製品はもっと多彩だ。「急速充電」ほど短時間ではないが、高出力で通常より早く充電できるタイプや、ケースにスタンド機能を付加し、充電しながら操作できるタイプなど、デザインや機能をそれぞれ工夫。全面ディスプレイの「iPhone X」の発売後には、そのデザインを活かした、さらに奇抜な製品が登場するかもしれない。新規参入や再参入するメーカーも増えそうだ。
 
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新iPhone向けに、Apple純正の「AirPowerマット」に加え、サードパーティ各社からも対応製品が登場する見込み
(左からベルキンの「Boost↑Up Wireless Charging Pad」、
BEZAREL(ベザレル)の「Futura X Wireless Charging Pad」、Ankerの「PowerPort Qi」)
 

ワイヤレス化を推し進めるApple 異業種を巻き込む強さは健在

 Appleは、かつて初代iMacからフロッピーディスクドライブを廃止し、USBが普及するきっかけをつくった。モバイルノートPCからは、薄型・軽量化のため、光学ドライブや有線LANポートをなくし、極力、ワイヤレスでつなぎ、光学ドライブなど、有線接続が必要な周辺機器は必要な時だけつなげて使う外付けスタイルを提唱した。

 「iPhone 7/7 Plus」ではヘッドホンジャックを廃止し、スマホでもワイヤレス化を推進。その結果、全国の家電量販店・オンラインショップの実売データを集計した「BCNランキング」によると、ヘッドセットタイプ含む、Bluetooth対応ヘッドホン・イヤホンの販売台数は、16年秋を境に跳ね上がり、そのまま右肩上がりで推移。今年に入り、各社から「Air Pods」と同じ、左右をつなぐケーブルのない完全ワイヤレスイヤホンが相次いで登場しており、ますます伸びそうな気配だ。
 
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 にわかにワイヤレス充電が注目を集める一方で、新iPhoneは、Android搭載スマホでは標準仕様になりつつある「急速充電」に新たに対応し、30分で最大50%までバッテリを充電できるようになった。ただし、付属品だけでは利用できず、別途、Apple純正の対応ケーブル(USB-C-Lightningケーブル)とUSB-C電源アダプタが必要だ。

 実用度は、むしろ急速充電のほうが高い。ワイヤレス充電のサポートは、外出時の不意のバッテリ切れ対策としての側面が強く、全世界の名だたる企業・ブランドとのコラボレーションの一環ともいえる。マイナーチェンジ感の強い「iPhone 8/8 Plus」の真の狙いは、GoogleのAndroidの広がりに対抗する、iPhoneのエコシステムの強化・拡大にあると考えると納得できる。
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ここまで多くの企業を巻き込めるのはAppleだけ。
モバイルライフをさらに快適にする、街中でのワイヤレス充電がいよいよ普及する?

 カフェやキャリアショップ、カ―ディーラーなどのお店に、無料Wi-Fi(公衆無線LANサービス)と無料で自由に使える「Qi」対応ワイヤレス充電パッドがあれば、滞在時間が長くなっても安心。導入店舗からみると、お得意様への最高の「おもてなし」になるだろう。モノとしてのスマホは成熟し、他のサービスやアプリと連携した「体験」の新しさ、便利さを訴える段階に入っている。(BCN・嵯峨野 芙美)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。