「ThinkPad」や「YOGA」シリーズなどのPC、タブレット製品で知られるレノボ。海外ブランドゆえ、購入後のサポート品質が不安に思われているかもしれない。しかし、それはまったくの杞憂だ。レノボの国内製品に関しては、技術サポートや修理など、すべてのカスタマーサービスが国内拠点から「日本品質」で提供されている。現在も改善を重ねるレノボ・ジャパンのサービス体制について、同社の責任者に取材した。

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レノボ・ジャパンのビジネスノートPC「ThinkPad X1 Carbon」

 PCのグローバルシェアトップを走り続けているレノボ。世界における販売実績が物語る通り、製品自体の品質や使い勝手について不安はない。しかし、海外ブランドの製品とあって、もしサポート窓口に問い合わせをしたとき、国内メーカー並みの対応が受けられるのか、疑問に思う日本のユーザーは少なくないようだ。中には、レノボの窓口に電話をかけると、海外のコールセンターへ転送されると思い込んでいる人すらいると聞く。

 まず知っておくべきは、日本法人のレノボ・ジャパンから提供されたすべての製品について、テクニカルサポートや修理といったカスタマーサービスは、日本国内の拠点を通じて提供されてきているという事実だ。電話が海外につながることはあり得ない。

 加えて、国内で提供されているサービスの品質にも改善を重ねている。2011年以降、レノボは日本におけるPC事業を、NECパーソナルコンピュータ(NECPC)とのジョイントベンチャーとして運営している。国内PC市場でトップシェアの地位を不動のものとしてきたNECPCの知見をとり入れることで、日本のユーザー向けにきめ細かいサービスを提供している。

 現在、レノボ・ジャパンでサービス事業本部長を務める中土井一光氏は、NECでPCの生産と品質保証に長年携わり、2012年にNECPCへ移籍、現在はレノボ・ジャパン、NECPC両社のカスタマーサービスに関する責任者を務めている。
 
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サービス事業本部
中土井一光・本部長

 中土井本部長は「サービスの満足度を特に大きく左右するのが、修理のリードタイムと、コールセンターの応答時間です」と話し、レノボでのサービス品質向上にあたっても、これら2点をキーとして取り組んでいったと説明する。

修理の自社工場移管で、納期を大幅短縮

 レノボ・ジャパンでは従来、国内の修理サービス事業者へ製品の修理を委託していた。ここで問題となっていたのが、保守部品の管理だ。ユーザーから修理品を預かって故障箇所を特定し必要な部品を準備するが、その部品管理プロセスも修理サービス事業者に委託していたため、適正な管理が出来ていないことがあった。

 そこで同社では、修理業務と部品管理を段階的に自社へ移管することを決定。2016年8月までに、国内で販売するすべてのPCおよびタブレットの修理を、NECPCの群馬事業所(群馬県太田市)内で行う体制を確立した。
 
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PC-9800シリーズの生産も手がけたNECパーソナルコンピュータ群馬事業場。
現在はNECPCのコンシューマ向け製品と全レノボ・ジャパン製品の修理業務を担う

 修理の効率を高めるためには、単に作業の場所を社外から社内に移すだけではなく、作業のプロセスを細かく分析する必要がある。そのため、コストはかかるが、日本独自のシステムを開発し、そこにNECPCが培ってきたノウハウを投入することにした。
 
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群馬事業場で昨年夏に操業開始したレノボ製品の修理エリア。
工場内での修理作業時間は最短で1日以下という

 例えば、修理作業が行われている製品は、一台ごとの工程進捗を一元管理することで、当日出荷可能な修理を優先させるなどの細かい進捗管理を実現させることで、事業所全体の効率を高めた。
 
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群馬事業所での修理業務開始以降も改善を継続。
平均修理期間が短くなり、ばらつきも少なくなっている

 故障箇所や作業内容も細かく分析することで、修理の精度が向上し、1台あたりの修理リードタイムは毎月縮まっていった。日本で稼働したこのシステムは、レノボグループの各国法人でも採用が始まっており、そのノウハウを得ようと各国のチームが次いで群馬事業所を訪れているという。

 中土井本部長は「家電量販店や販売パートナーの皆様にも、レノボのサービス品質がどれほど高いか、ぜひ一度群馬で実際にご覧いただきたい」と話し、世界で認められた日本品質のサービスを、できるだけ多くの業界関係者に知ってほしいと呼びかけている。

ユーザーとの接点拡大と、改善を継続

 ユーザーからの問い合わせを受け付ける「レノボ・スマートセンター」(電話サポート業務)も、従来NECPCのコンシューマ向けサポートを提供していた国内拠点を活用して体制を強化した。コンシューマのユーザーにはビギナー層も多く、NECPCにはそのサポート力に一日の長がある。その力を活用することで、国内レノボユーザーのあらゆる問題解決に取り組んでいる。
 
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国内レノボユーザーからの問い合わせを受け付ける「レノボ・スマートセンター」。
NECPCのサポート拠点の一部を利用して開設したが、現在はレノボ専用の拠点となっている

 電話対応能力の増強に加えて、メールやチャットを通じたサポートも強化しており、現在はサポート窓口への問い合わせの約30%が電話以外の経路となっているという。連絡手段の選択肢が増えたことで、ユーザーは自分の都合の良い時間に、最も便利な方法で問い合わせを行えるようになり、利便性が向上した。一方レノボ側としては、本当に電話対応が必要なユーザーに対して、より時間をかけて丁寧な対応ができるようになった。
 
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電話による技術サポートや修理受付に加え、メールやチャットでの問い合わせ対応業務も行う

 また、人材採用が容易ではない現在、レノボ・ジャパンとNECPCでは、新たなテクノロジーを利用したサポート業務の効率化にもあわせて取り組んでいく方針だ。具体的な中身はまだ公開できる段階ではないということだが、例えばAIが問い合わせの一部に対応できるようになれば、ユーザーにコスト増を転嫁することなく、深夜早朝などにもサポート提供時間を拡大することが可能になるだろう。

 経営用語的な解釈をするならば、直接的な収益を生まないカスタマーサービス部門は「コストセンター」に分類される。しかし、不特定多数のコンシューマに向けて製品を販売するメーカーにとって、サービス部門はエンドユーザーからの意見を直接吸収できる数少ない接点である。中土井本部長は、「メーカーの中で、お客様の最もリアルな声を聞いているのは、われわれサービスの人間です。そこでいただいた貴重なご意見を、製品開発の現場に伝えていくのも重要な役割だと考えています」と、声に力を込める。

 同社でも一度、日本市場向けの電話対応サービスを海外拠点に移すことが検討されたという。しかし、レノボ本社とも議論を重ねた結果、そのプランが実行に移されることはなかった。日本のユーザーの気持ちに寄り添えるメーカーであるためには、やはり日本の地に根ざしてサービスを提供する必要があるという判断だった。

 群馬でのレノボ事業が始まってまだ1年足らずだが、中土井本部長は「改善に終わりはありません」と述べ、さらなるサービス品質向上に継続して取り組む姿勢を強調した。

※『BCN RETAIL REVIEW』2017年7月号から転載