【MVNO座談会2017】店頭販売における課題は?

 MVNO事業者のターゲットがアーリーアダプターからマジョリティーに移行するなかで、リアル店舗での顧客とのタッチポイントは重要な施策になる。だが、「格安」を売りにするMVNO事業者だけあって、大手キャリアのような店舗網を全国に張り巡らせるにはコストも体力も不十分だ。既存のプラットフォーム事業者との連携を模索しながら、どのように折り合いをつけていくかで、議論は盛り上がった。


■【MVNO座談会2017】
テーマ2:販売における課題とは
「餅は餅屋」で既存プラットフォームを活用

家電量販の販売力に期待

 MVNO事業者が自社のサービスを販売する際、特定の家電量販店とがっつり組んだり、家電量販店以外の異業種のチャネルを活用したりするなど、その戦略はさまざまである。

 特定の家電量販店と組む最大の魅力は、全国に展開する店舗網が活用できることに加え、家電量販店自らが店頭で培ってきた販売ノウハウを自社サービスの販売に応用できることだ。具体的には、接客における顧客の悩みやその解決方法を得ながら、顧客ニーズに合致したサービスづくりに反映させることができる。
 

リアル店舗での場所争いも顕著になってきた

 一方で、店頭での接客品質を均一に保つための特別なトレーニングや店頭支援の面で心配はないだろうか。この点については「家電量販店はキャリアの携帯電話やスマートフォンを販売しながら、ここまで普及させてきた実績があるので心配していない。MVNOを自社ブランドとして販売できるとなると、なおさらモチベーションが上がるのではないか」と前向きにとらえる。

 MVNO自らが直営店を出店する戦略もあるが、こちらは「アンテナショップとしての位置づけで、顧客からダイレクトにニーズを得るのが狙い。むやみに店舗網を拡大していくわけではない」と語る。
 

NTTコミュニケーションズの岡本健太郎担当部長

 例えば、端末の初期設定で顧客が迷う箇所を把握し、それをウェブ受付サービスやカスタマーセンタのサービス品質の改善につなげられるメリットが大きい。

 ただ、消費者庁から景品表示法違反の措置命令を受けたMVNO事業者があったように、SIMフリースマホが普及するにつれて、販売手法やサポートに対する消費者からの視線が厳しくなっているのも事実。手厚いサポート体制とコストの狭間で難しい戦略の選択が迫られる。

 「お客様の納得を得ながら誤解のない契約締結を前提に、過不足のないサポートを展開する必要がある」と、際限のないフルサポートやサービス拠点の拡充ができないからこそ、販売現場でのコンプライアンスの徹底は基本中の基本となる。

 DVDやCDレンタル店を展開する小売業者や大手GMS、コンビニエンスストア、JA、日本郵政など、異業種のプラットフォームとの連携を強化する動きもある。

 異業種とのコラボでは、まだ開拓しきれていない郊外の潜在需要の掘り起こしに期待を寄せる。例えば、郵便局では主にスマホ端末とSIMサービスのセット商品をカタログに掲載して配布したところ、地方の年配層から予想以上の引きがあるという。

 まだ年配層の間ではフィーチャーフォンを使っているユーザーが多く、そうした層に「初めてのスマホ」を提案できる未開拓のマーケットは大きい。JAの顧客も同じ傾向があるという。

 一方でコンビニでの販売は、他のサービスと同様に棚からぶら下げるパターンだ。こちらは地方でも比較的リテラシーの高い層へのアプローチが可能だ。大手キャリアよりもしがらみが少ないMVNO事業者らしく、今後もあらゆるチャネルを使った販売戦略が展開されそうだ。(BCN・細田 立圭志)
 
開催日:2017年4月28日
場所:BCNアカデミールーム
参加メーカー:インターネットイニシアティブ(IIJ)、NTTコミュニケーションズ(OCN)、U-NEXT
▼MVNO3社が議論
https://www.bcnretail.com/market/detail/20170530_42901.html


※『BCN RETAIL REVIEW』2017年6月号から転載