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デルの渡邊常務が語る、販売店との関係強化で実現したシェア拡大(前編)

インタビュー

2017/04/21 18:00

 コンシューマー向けパソコン事業では多くのメーカーが何とか前年並みの台数を維持する中、デルはシェアを拡大している。順風ではない市場環境でも成長を続けている理由について、同社のコンシューマー事業を統括する渡邊義成・常務執行役員に聞く。

取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/日高 彰、写真/瀬之口 寿一

販売店との関係強化で、逆風下でもシェアを拡大
 

渡邊義成 常務執行役員 ビジネス&コンシューマー事業統括本部長

販売店との協業で見えた日本市場特有のニーズ

道越 法人向けに比べて厳しい市場環境にあると言われているコンシューマー向けのパソコン事業ですが、御社はここ1~2年顕著に販売を伸ばしています。長年主力としてきたダイレクト販売に加え、家電量販店の店頭での販売が非常に好調ということですが、具体的にどのようなことに取り組まれてきましたか。

渡邊 私がコンシューマー市場の責任者に就いたのが1年ほど前ですが、まずはすでにお付き合いのある販売店様とのビジネスを確固たるものにするため、四半期ごとに販売店各社様と当社との間でビジネスの進捗状況を確認する「QBR(Quarterly Business Review)」という場を設けました。販売店様のデルに対する認識や期待をお聞かせいただき、そのうえで互いに合意可能な短期的、中長期的目標を設定させていただく。そして次の四半期に進捗を確認する。このプロセスを繰り返すことで、デルが販売店様と一緒にビジネスをしていくための環境ができあがってきました。同時に、デルとしてご提案できる製品がますますよいものになったことも、販売増の大きな要因です。

道越 今日お持ちいただいている「NewXPS 13 2-in-1」のように、デザインを含め、一目見てほしくなる製品が増えていますね。

渡邊 コンシューマーのお客様からも、よりご評価・ご支持いただけるものになってきたと考えています。法人のお客様とはお取引に連続性がありますので、製品にフィードバックをいただき改善するというキャッチボールを頻繁に行えますが、コンシューマーのお客様からは、製品をご購入いただいた後に継続的にお声をいただくことは難しかったのです。それが、販売店様とビジネスをさせていただくことによって、デルが市場でどういう評価をいただいているのか、日本のコンシューマー市場ではどういう製品が求められているか、といった情報をたくさんいただけるようになりました。これによって、カラーバリエーションを増やしたり、ブルーレイドライブ搭載モデルを増やしたりといった、日本市場特有のニーズをきちんと把握した製品をご用意できる体制も整いました。
 

デルの成長には販売店との関係強化が必須と語る渡邊常務

デルのイメージと本当の姿とのギャップを埋める

道越 コンシューマー向けのパソコンは、スマートフォンやタブレットで置き換えられるという見方もありますが、その点についてはどのようにお考えですか。

渡邊 今後、市場が何十%も拡大するとは考えていませんが、逆に、大きく落ち込むこともないと思います。実際に、コンシューマー向けパソコン市場全体の前年比はほぼフラットです。その中で当社は売り上げを伸ばさせていただいている最中ですが、そうはいってもシェアは10%を切っており、デル以外の製品を選ばれている方が、9割以上もいらっしゃるわけです。まだまだ非常に大きな伸びしろがあると考えています。

道越 今後のさらなる販売拡大に向けた方向性、目標を教えてください。

渡邊 もちろん、売り上げやシェアをどれだけアップしたい、といった数値は社内的にもっていますが、それよりも根本にあるのは、いまのデルの製品やサービスと、お客様がもたれているイメージのギャップを埋めることです。私どもには、強く自信をもってお薦めできる製品やサービスがあるのに、まだまだそのことを認知いただけていない方々が、相当数いらっしゃるのが現状です。「デルはダイレクト販売だけ(店頭には置いていない)」「重くてごつくて大きなノートPCしかない」「サポートの質が……」といった、現在のデルの実態とは異なるイメージ、誤解をお持ちの方々の認識を変えていきたい。

 私たちはデル社員としても一個人としても、生活のさまざまなシーンの中でパソコンを使っています。新しいデルのパソコンを使ったら、生活がもっと楽しく便利になるということを、日本市場のお客様にお伝えしていく。それが、私たちの目標であり、チーム全員がその熱意を持っています。
 

New XPS 13 2-in-1
 

 モバイルノートPCの旗艦モデル「XPS 13」をベースに、画面部分が360度回転しタブレット型になる機能を追加した2-in-1モデル。画面のフレーム部分を極限まで細くしたほか、1.24kgの軽量ボディを実現し、美しさと携帯性を高めている。

■プロフィール
渡邊義成
1998年3月、デル入社。SMB(中小企業)市場の顧客担当営業を経て、SMBインサイドセールスマネージャー、コンシューマー営業本部、ミディアムビジネス営業本部、法人営業統括本部の本部長を歴任。2014年にパートナー事業本部統括本部長に就任。16年4月の執行役員ビジネス&コンシューマー事業統括本部長就任以降、コンシューマー向けパソコン事業を統括する。

・後編に続く
 
◇取材を終えて

 最近のDellのパソコンは素敵だ。特にフラッグシップのXPSシリーズは、超狭額ベゼルでコンパクトな本体サイズにもかかわらず画面が大きく、キーボードは快適。質感も高く、持ち運ぶメインマシンとして十分活躍できそうだ。店頭販売市場でのシェアは2桁目前まで上昇してきたが、製品の質を考えれば、まだまだ上が目指せるはずだ。店頭施策をさらに強化し、ようやく見えてきたパソコン市場の回復を軌道に乗せる中心的な存在になってほしい。(柳)
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年5月号から転載