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ホームシアターランキング1位、ソニー「HT-CT660」の生みの親に開発秘話を聞く

インタビュー

2013/06/28 17:10

 発売前から注目されていたソニーのバータイプのホームシアターシステム「HT-CT660」。家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」のホームシアターシステムの週間ランキングでは、6月第3週(6月17~23日)に1位を獲得した。月刊『BCNランキング』マガジン編集長の力石恒元が「HT-CT660」の生みの親、ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 V&S事業部 音響設計部3課 三浦宏司アコースティック マネージャーに開発経緯を聞いた。6月22日発行の『BCNランキング』7月号「ソニー新スピーカー 開発者に聞いた『ココにこだわり!』」で割愛したエピソードを含めて紹介する。

HT-CT660

注目のソニーのホームシアター「HT-CT660」

 6月1日に発売した「HT-CT660」は、発売日を含む5月第4週(5月27日~6月2日)にシェア7.9%で3位、翌週は10.2%で2位、そして6月第2週(6月10~16日)は10.4%のシェアで1位に上りつめた。翌週の6月第3週はさらにシェアを伸ばし、1位をキープした。
 
2013年6月第3週(6月17日~23日)
ホームシアターシステム 機種別 販売台数シェア トップ5
順位 メーカー 品名 型番 販売数量
シェア(%)
製品写真
1 ソニー ホームシアターシステム HT-CT660 13.7
2 パイオニア 3.1ch サウンドバーシステム HTP-SB550 10.1
3 パイオニア 5.1chサラウンドシステム HTP-S353 7.6
4 ソニー ホームシアターシステム HT-CT260 6.6
5 ヤマハ フロントサラウンドシステム YAS-101(B) 4.0
BCNランキング」2013年6月第3週 週次<最大パネル>
 

スマートフォンの音楽もさらなる高音質化を実現

 
三浦宏司マネージャー
「HT-CT660」と三浦宏司マネージャー

力石 6月1日発売の「HT-CT660」が話題をさらっています。そこで開発担当の三浦さんに、開発で苦労した点、特に力を入れた点についてうかがいます。「HT-CT660」は「HT-CT260」の上位モデルという位置づけですが、どのような点に力を入れて開発したのですか。

三浦 スマートフォンとの連携は、シアターシステムをリビングで活用してもらうアイデアの一つして「HT-CT260」で採用しました。スマートフォンやミュージックプレーヤーで再生する音楽データは圧縮しているので、「HT-CT260」は音楽をデジタル圧縮するときに失われがちな高域信号などを補完する技術「ポータブルオーディオエンハンサー」を採用しました。「HT-CT660」も継続して採用していますが、本機には新たに高音質を豊かに再現するトゥイーターを搭載し、それらをうまくかけあわせるためのチューニングを行い、音質を高めました。
 

かざしてスマートフォンと連携/中高域用メインスピーカー(左)と高域用トゥイーター(右)

かざしてスマートフォンと連携/中高域用メインスピーカー(左)と高域用トゥイーター(右)

力石 チューニングとは、具体的にどのようなことを行うのでしょう。

三浦 「ポータブルオーディオエンハンサー」は、デジタル信号を処理するなかで、圧縮音楽を最適化します。しかし、スピーカーが変われば周波数特性も音質も変わってくる。そのなかで、聴かせたい部分と抑えたい部分を調整しながらブラッシュアップしていくという作業ですね。

力石 それは、特定の楽曲を聴きながら調整するのですか。

三浦 流行の曲を中心にさまざまな楽曲を聞きこんでチューニングしました。そのなかで、よく使ったのが、声の帯域が非常に広いボーカルの曲ですね。それをしっかりと再現しないと音場感が出てこないんです。圧縮音楽は、どうしてもその広さが再現しにくくなるので、「HT-CT660」では、先ほどの「ポータブルオーディオエンハンサー」で納得できるレベルの音にまで追い込んでいます。

 例えば、北米向けモデルは北米で人気の高いアリシア・キーズさんや国内向けモデルは平井堅さんなどの楽曲をよく聞き込みました。というのも、言語が違うと歌手の発声も異なり、聞こえ方も変わります。また、その国々、地域によってお客様の好みの音色も異なりますので、トレンドに合わせた楽曲を用いながら「HT-CT660」の音質を徹底的に磨き上げました。
 

こだわりのチューニングが生み出した最高のゲームモード



力石 「HT-CT660」は、映画に加え、ゲームモードに力を入れたとうかがいました。

三浦 これまでのゲーム向けサウンドは、「ドン!」という爆発音や銃撃シーン、「シュン!」という音でスピードを表現するなど、臨場感を感じさせる効果音をつくっていました。つまり、派手な音を再現するのが、ゲームに最適だと考えていたんです。

 ところが、ソニー・コンピューター・エンターテインメント(SCE)と仕事をしたとき、あるサウンドエンジニアに「音は効果音として迫力を際立たせる以外にも重要な役割があると言われました。そのひとつが位置関係です。

 テレビなどに表示する映像は、プレーヤーの前方の情報を伝えますが、真横や背後の情報までは伝わりません。それを伝えてくれるのが音です。例えば、背後で扉が開く音、足音などで見えないところに敵がいることを伝えてくれます。その音を頼りに振り向いて敵を倒す、といったことができるんです。

 もうひとつはキャラクターのセリフですね。セリフのなかに進行に必要なヒントが紛れているので、映画やドラマ以上にゲームでもセリフが重要です。

 映画モードが映画館の残響や重厚な音の広がりを強調するのに対して、ゲームモードはSCEのサウンドデザイナーの意見を反映し、正確な音の位置関係と明瞭なセリフを重視してチューニングしています。
 

リモコンの「GAME」ボタンを押すとゲームに適したサウンドを再現する

リモコンの「GAME」ボタンを押すとゲームに適したサウンドを再現する

力石 バータイプのスピーカーで、そういった音の位置関係、声の聴こえ方をしっかり出すのは難しいですね。

三浦 その通りです。「HT-CT660」はバーチャルサラウンドを採用していますので、定位感を出すのは非常に難しいんです。調整を重ねて、ゲームに最適化した定位重視の音場感のバーチャルサラウンドをつくり出し、ゲームモードとして仕上げました。例えば、レースゲームをプレイすると、後ろから抜かれるのを体感できます。アクションゲームでは、気配や声で敵の位置に気づくことができます。ぜひ、「HT-CT660」でお気に入りのゲームのサウンドを味わってみてほしいですね。
 

スマートフォンの音楽から映画、ゲームまで 実売4万円以下とは思えぬ高音質!



力石 スマートフォンの音楽やゲームモードはもちろんですが、テレビ番組の音の違いにも驚かされます。

三浦 ホームシアターというと映画のイメージがありますが、テレビ番組も音楽もゲームも、最高の音で楽しんでほしいと思っています。

力石 「HT-CT660」の実勢価格は3万9800円前後。スマートフォンの音楽、映画、ゲームと一台でリビングの音楽をすべてまかなえる「HT-CT660」は、本当にコストパフォーマンスが高いですね! 本日はありがとうございました。
 

(文:コヤマタカヒロ)


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