• ホーム
  • トレンド
  • 世界のストリーミングサービスをけん引するRovi、三つのテーマを明らかに

世界のストリーミングサービスをけん引するRovi、三つのテーマを明らかに

インタビュー

2013/02/25 18:00

 最近は、テレビを見るよりインターネットの動画配信サービスを利用する時間の方が長い、という人が増えている。動画配信サービスは、テレビ番組のように放送時間に縛られず、好きなときにコンテンツを楽しめるからだ。動画配信のソリューションを手がけるRoviに、これからの動画配信サービスへの取り組みを聞いた。

Roviの技術を採用した「Media Markt」のトップページ

 動画配信サービスは、代表的なものを挙げるだけでも、「ニコニコ動画」「YouTube」「acTVila」「TSUTAYA TV」「Hulu」など、さまざまなプロバイダが提供している。配信方法は、PCなどにコンテンツをダウンロードしてから再生する方法と、ダウンロードしながら同時に再生するストリーミングの二つがある。

 ストリーミングは、ダウンロードが終了するまで待つ必要がなく、コンテンツ・プロバイダにとっても、ユーザーのデバイスにデータが残らないので、二次頒布や流通の心配がない。今後、動画配信サービスの主流はストリーミングになっていくだろう。

左から米国Roviの大沢幸弘シニアバイスプレジデント(日本CE統括)とカナーン・ジェミリ博士

 米Roviのプロダクトマネジメント担当シニアバイスプレジデント、カナーン・ジェミリ博士は「Roviは『Entertainment Unbound(境界のないエンタテインメントの世界)』を目指している。実現のための柱になるのが、コンテンツアクセスの効率化、動画品質の向上、そしてマルチスクリーン連携の推進だ」と、今後の動画配信ソリューション事業で目指すものを説明した。

途切れないストリーミング配信



 確かにストリーミングは簡単で便利だが、問題点がないわけではない。データをダウンロードしながら映像を再生しているので、通信速度が重要になってくるのだ。通信が遅いとデータのダウンロードが滞り、再生が途切れてしまう。

 この問題の解決策として、Roviはアダプティブ(適応型)ストリーミングソリューション「DivX Plus Streaming」を提供している。これは通信回線の帯域幅に合わせた画質で動画を配信する技術で、通信回線にかかる負荷によって9段階に転送レートを動的に変更する。つまり、負荷がかかっているときは転送レートを落として画質を下げて再生することで、映像が途切れることなく再生できる。

通信回線の負荷に合わせて転送レートを自動で変更する

 また再生開始時は低い転送レートでスタートするので、スムーズに立ち上がる。このほか、多言語字幕、音声トラックの切り替え、スムーズな早送り/巻き戻しができ、チャプターの表示にも対応する。

多言語字幕と音声トラックに対応する

 ジェミリ博士は、「日本ではまだ『DivX Plus Streaming』を採用したサービスは始まっていないが、欧州最大の家電量販店・メディアマルクトの動画配信サービスに採用されたほか、香港、イギリスなどでもサービスが提供されている」と説明した。

高画質化が進むストリーミングサービス、4K映像の配信も視野



 動画配信サービスは、テレビ放送と同じように高画質化が進んでいる。すでにフルHD画質映像を配信するコンテンツプロバイダもいて、今後、対応デバイスの普及とともに4K映像が配信される日も遠くないだろう。

 しかし、映像の解像度が上がれば上がるほど、データは大きくなる。圧縮しても現在の数倍の負荷がインターネット回線にかかり、スムーズな配信は難しい。そこで登場したのが、新しい圧縮技術「HEVC(High Efficiency Video Coding)」だ。

 「HEVC」は、現在の動画配信サービスの多くやビデオカメラなどの動画保存規格として使われているH.264/AVCの後継規格で、「H.265/HEVC」と表記されることもある。データ量はH.264の2分の1程度で、データ伝送に必要な帯域幅が狭くてすむ。

「DivX HEVC」で4K映像の圧縮、配信がスムーズに

 Roviは今後、HEVCエンコーディングソリューションを放送、業務用コンテンツ制作、携帯端末、コンシューマ向け製品業界で活躍する開発者に提供し、今年後半にはビデオ配信および再生ソリューションでHEVCのサポートを開始する予定だという。

デバイスにとらわれないマルチスクリーン対応を実現



 ストリーミング映像を視聴する機器は、PCだけではない。テレビやスマートフォン、タブレット端末など、ストリーミングはインターネットに接続できるさまざまな機器で楽しまれている。

 そこで活躍するのが、タブレット端末など、モバイル機器で探したVODのコンテンツを、Wi-Fi経由で他のモバイル機器や無線LAN対応テレビなどに送ることができる「Rovi Multi-screen Service」という技術だ。ジェミリ博士は「ユーザーは、PC、スマートテレビ、スマートフォン、タブレット端末など、複数のデバイスを持っている。これらのデバイス間でサービスを共有できる技術が必要だ」と、「Multi-screen Service」を開発した理由を語った。

 「Multi-screen Service」では、例えば外出先で、タブレット端末で視聴していた映像の続きを、帰宅後、リビングの大画面テレビで再生するという使い方や、友人など、ほかのユーザーとペアリングして情報を共有できるようになる。汎用ブラウザで動くので、Android端末やiOS端末、テレビ、PCなど、幅広いデバイスで利用できる。

 「Multi-screen Service」は、すでにイギリスのスマートテレビ向けゲームプラットフォーム、プレイジャムに採用されている。国内ではRoviの最先端技術を採用したサービスはまだ少ない。しかし、これからストリーミングサービスがより進化し、普及していく過程で、Roviが提供する技術は必要不可欠なものになっていくだろう。(BCN・山下彰子)