日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、「MADE IN TOKYO」「東京生産」を掲げ、一部を除いて国内向けのデスクトップPCのほぼすべてを東京都昭島市の工場で組み立てている。PCメーカーの多くが、人件費など生産コストを抑えられる国で生産するなかで、東京での生産にこだわる日本HP。その理由を、工場の責任者である清水直行昭島事業所長(パーソナルシステム事業統括PSGサプライチェーン本部本部長)に聞いた。

・第1弾・昭島工場レポートから読む

清水直行所長

──東京でのPCの生産はいつ頃から始まったのですか。

清水 1999年に、まず東京都あきる野市で企業向けデスクトップPCの組み立てを始めました。HPとコンパックが合併した後の2003年に昭島市に工場を移転して、ワークステーションやサーバー製品などの生産も加わりました。個人向けデスクトップPCの組み立ては、2007年からになります。現在では、個人向けデスクトップPCの国内向け販売のほぼすべてを昭島工場で組み立てています。

──地価も高く、人件費もかかる日本、しかも東京での生産にこだわるのはなぜですか。

清水 世界一厳しい日本のお客様からの要望に直接応えることができること、細かなオーダーにも即座に対応できて、受注から納品までを最大限短縮できることが、東京に生産拠点をもつ大きなメリットだと考えています。お客様の声がダイレクトに聞こえてくるということは、さらに品質を高めていこうという意欲にもつながります。また、海外生産品に比べて、納品までに長距離を移動する必要がないので、運搬での振動や温度・湿度の変化などによる初期不良や故障を抑える効果も期待できます。

──しかしコストなどを考えると、中国や東南アジアで生産するほうが有利なのでは。

清水 米国本社からは、常にそうしたプレッシャーをかけられています(笑)。ですが、昭島工場は工場規模として小さい割に、作業員1人あたりの生産性が極めて高い。コスト・納期・品質に関しては、世界に点在する工場のなかでもトップクラスなのです。また、1台1台の仕様が異なる注文でも、月曜日に受注すれば最短で金曜日に納品できます。5営業日納品を実現している工場は、昭島工場以外にありません。

──費用対効果が高いということですか?

清水 その通りです。しかも、今年2月から組み立てラインを1.5倍に増強したので、生産台数がさらにアップしました。HPにとって日本は非常に重要な市場で、生産拠点が東京にあることが輸送コストの面でもメリットになっています。また、昭島工場は優秀な作業員に恵まれていて、例えば製品の組付けのしやすさやメンテナンスのしやすさなどを独自に検証しています。検証した内容は、米国本社に提言もしています。生産工場以上の役割を果たしているともいえるのです。

「生産工場以上の役割を果たしている」と語る清水所長

──昭島工場ではPC本体を生産していますが、ノートPCやモニタ、プリンタなどはどこでつくっているのですか。

清水 ノートPC、モニタ、プリンタなどは海外で生産し、日本に送られてきた後、千葉・原木や東京・大井の倉庫で保管しています。昭島工場と倉庫、また運送会社の集荷・配送システムはオンラインで接続されています。

──出荷はどのような体制で行われるのでしょう。

清水 別々に保管している製品を一緒にご注文いただいた場合は、昭島工場からPC本体を出荷するのに合わせて、各倉庫からノートPC、モニタやプリンタも出荷し、運送会社の最終配送拠点で一緒にしてお客様にお届けする仕組みになっています。お客様は、どこで生産されたのかを気にすることなく、すべて揃った状態で受け取ることができます。こうした物流システムは業界でも画期的なものとして高く評価され、2005年には日本ロジスティック大賞を受賞しました。

──できればデスクトップPCだけでなく、ノートPCでも「東京生産」「MADE IN TOKYO」の製品が欲しいのですが……。

清水 ノートPCについてのご要望は、お客様やパートナー様からたくさんいただいていて、検討を始めています。ノートPCは海外生産なので、以前は注文いただいてからお届けまでに1か月以上かかることもありましたが、物流システムなどの改善を重ね、現在では10営業日でお届けしています。とはいえ、デスクトップPCと同じように、より高品質な製品をより短納期でお客様にお届けするためにも、「東京生産」「MADE IN TOKYO」のシールを貼ったノートPCを1日でも早く昭島工場から出荷できるようにしたい、と私たちも思っています。(フリーライター・榎木夏彦)