今、旬のデジモノといえば、携帯オーディオが筆頭だろう。価格が手ごろなこともあり、販売台数も順調に増え続けている。しかし少なからず問題が多いと聞くものがある。イヤホンだ。どうしても本体の付属品として「配布」されているためか、「これは」というものに出会ったためしがない。そこで、携帯オーディオの販売台数推移などもまじえながら、BCNランキング編集部の自腹レビュー第3弾、イヤホン編をお送りする。

 今、旬のデジモノといえば、携帯オーディオが筆頭だろう。価格が手ごろなこともあり、販売台数も順調に増え続けている。しかし少なからず問題が多いと聞くものがある。イヤホンだ。どうしても本体の付属品として「配布」されているためか、「これは」というものに出会ったためしがない。そこで、携帯オーディオの販売台数推移などもまじえながら、BCNランキング編集部の自腹レビュー第3弾、イヤホン編をお送りする。

●毎日量産される付属イヤホンの数々、しかし……

 オーディオセットの中で一番音を左右する部分はどこか? それはスピーカーだ。ということは、イヤホンで聴くことが多い携帯オーディオで、一番音を左右するのは、当然「イヤホン」ということになる。しかしこの、製品付属のイヤホンがイマイチで、せっかくの本体性能を活かしきれていない、という例を数多く耳にする。

 携帯オーディオの販売台数はこの1年で実に3.6倍増。爆発的に売れている。この事実は、とりもなおさず、それだけの数の「付属イヤホン」が毎日本体とともにユーザーの手元に届いているということを意味する。私など、どうしようもない音しか出ないイヤホンが家にいくつあることか……。根っからの貧乏性ゆえ、捨てるに捨てられず、しかし聞くに堪えない音と付き合うつもりもなく、という困った存在になっている。

●耳掛け式のあの音が忘れられなかった

 私の携帯オーディオの用途は、通勤8割、ジョギング2割という感じだ。まあ通勤時はどうでもいいのだが、問題はジョギング時。たとえばスポーツクラブのトレッドミルに乗っているとき、あるいは、近所を走っているとき、やはり音楽がほしくなる。しかし、ここで問題なのは、フィット感。付属のイヤホンだと音が悪いばかりか、走っているうちにポロポロと耳から外れ、不愉快極まりなかった。走ることに集中できない。外れにくく音がいいとくれば、SHUREのE2cやソニーのMDR-EX71SLなど、定番の耳栓タイプが思い浮かぶ。しかし、ジョギング中は安全面から外の音も多少は聞こえてほしい。それに、耳栓タイプは耳が圧迫される感じがして嫌いなのだ。

 そこで、しばらく某社の2000円程度の耳掛け式のイヤホンを使っていた。耳から外れることは少なくなったが、ユニットの直径が若干大きいせいか、しばらく使っていると耳が痛くなる。そして決定的にだめだったのは音の悪さ。ピアノの音が歪む。ボーカルがやせ細って病人の歌みたいだ。少し音がいいAMラジオを聴いているような感じだった。

 話は少し遡るが、以前から気になっていた耳かけ式のイヤホンがあった。オーディオテクニカのATH-EC7だ。よく行くショップには試聴コーナーもあり、聞いてみて音のよさにヒトミミボレしてしまったイヤホンだ。しかし、なかなか購入には至らなかった。高いのだ。家電量販店などで1万円以上。他のイヤホンが数千円のレベルであることを考えると、まさに桁違いの高さ。しかし魅力は音のよさばかりではなく、そのツクリにもある。アルミ削り出しのボディーはかっちりしていて、独特の耳掛けアームのメカっぽさも機械好きの心をくすぐる。ほしいとは思いつつ、なかなか手が出なかった。

●気がつくと背中で「ありがとうございました」の声を聞いていた

 ある日、だめだめイヤホンで音楽を聴きながら走っていると、やっぱりどうしても我慢ができなくなった。頭をよぎったのはあのATH-EC7だった。しかしこいつは高級品だ。ジョギングとかに使うのはオーバースペックではないか? 雨などに降られたらどうするんだ? など、いろんな心配が心をよぎる。しかし、この音の悪さは我慢ならん。「清水の舞台から飛び降りる」心境とはまさにこのことで、たかがイヤホンごときに大枚1万円以上もなんて考えられなかったが、エイヤと買ってしまうことにした。

 念のためにと少し店員に聞いてみる。今このクラスのイヤホンで一番売れているのは何ですか? 「一番売れてるのはオーディオテクニカのATH?CM7だね」。同じメーカーのATH-EC7はどうなんでしょう? 「ああ、耳掛け式ならこれだよね。こいつも売れているよ」。 お客さんがたかっているのは、やっぱり安いイヤホンのコーナーですけど、こんなに高いの売れるんですか? 「結構売れてるよ。この高いのが並んでる棚だけど、一週間で何回転かしてるもの」。 音はどうですか? 「あははは。付属のイヤホンなんかと比べると『雲泥の差』だよ。買って損はないね」。 この言葉が決定打となった。1万2600円なり。

●耳からウロコの音のよさ

 さて早速、某大手通販会社で購入した自慢の無名メーカー製携帯オーディオプレーヤーにつないで耳に掛ける。うーん。すごくいい。音が見違えるほど(聞き違えるほど?)変わった。一言で表現するなら、今まで使ってきた同タイプのイヤホンの中では一番いい(どうせ今までろくなイヤホン使ってなかったんだろう? という突っ込みは甘んじて受けることにする)。音のヌケ、立ち上がりの速さ、透明感、どれをとってもすばらしい。惜しむらくは若干低音域が弱いというところ。このタイプのイヤホンは、どうしても低音域は出にくい。耳栓型や、密閉型のヘッドホンには負けてしまうのは致し方ないところだろう。

 聴く音楽ジャンルによっても評価が異なるかもしれない。私はこの数年ボサノバにドップリ漬かった生活をしているので、聴く音楽はアコースティックギターとパーカッションとボーカルという組み合わせが多い。音がクリアで透明感が高く、このジャンルには向いている感じだ。その他、アコースティック系のジャンルには向きそうだ。逆に低音のずっしりとしたパンチがほしいクラブ系の曲には少し物足りないかもしれない。

 友人何人かに聴かせてみた。「おお。確かにいい音だ」「こりゃ凄い。買う」と私と同じ反応を示す者もいれば、「うーん何がいいのかわからないなぁ」という者もいた。しかしさすがに「音が悪い」と評した者はいなかった。



●豪雨のジョギングにも耐えた! しかし……

 ある日ATH-EC7で音楽を聴きながら、いつものコースをジョギングしていると、突然空が暗くなり、ものすごい雨が降り始めた。「傘を持つ人が雨宿りするほど」の豪雨。イヤホンをしまう間もなく降り始めたスコールで「いまさらしまっても遅かろう」とそのまま走り続けることにした。もちろん、全身ずぶぬれ。雨の音にかき消されて音楽を楽しむどころではなかった。

 家に帰り着き「高価なイヤホンをだめにしてしまった」と落ち込んだのもつかの間、まあダメモトだと、びしょぬれのユニットをタオルで拭き再生してみた。ちょっと変な音だがとりあえず鳴るではないか! その夜は鴨居からぶら下げて一晩干しておいた。乾いてしまうと特に音質にも問題はなく、翌朝から立派に通勤の友として復帰。雨の中使っても大丈夫! と言っているわけではないが、これはちょっとした驚きだった。

 しかし幸せな時代はそう長く続かなかった。購入して5か月あまりが経ったある朝、右のユニットから音が消えたのだ。断線なのか、ユニットが壊れたのかは分からない。耳掛け式でなかなか耳から落ちない、ということは、逆にそれだけケーブルやユニットに大きな力がかかる事が多いはずだ。あるいは、豪雨のジョギングの影響がここにきて出たのかも知れない。

 保証期間はスピーカーユニットが3年、コード、ブッシュ、延長コード、イヤハンガーカバー、ゴムリングが1年のようだ。保障期間内なのだが、残念ながらレシートはおろか実は保証書も捨ててしまっており、それどころではない。悔しいがあきらめることにした。結局、新たにもう一個買ってしまった(つまり自腹2倍レビューだ)。まあ、それだけ気に入っているんだからしょうがない。こんどは大事に使うことにしよう。

 実は、先週アップルのフィル・シラー氏にインタビューしたとき、日本土産ということでこのイヤホンをプレゼントした。アップルの純正イヤホンはあまり評判がよくない。イヤホンを替えることによってどれほど音が変わるかを知ってほしかった。そして、どうしても日本のイヤホンの水準を知ってほしかった。シラー氏はとても喜んでくれた。使ってみた感想までは聞く時間がなかったが、どう思っただろう? もし気に入ったのなら、アップルの製品にこのイヤホンが……(まあそんなことはないだろうが)。

 今使っている携帯オーディオの音に不満があるなら、イヤホンを替えてみてはどうだろう? 友達が使っているものでも、店で借りてみるのでもかまわない。想像以上に音が変わってびっくりするのではないかと思う。せっかく本体はそこそこのクオリティーで音を出しているのに、イヤホンの影響でいい音を楽しめないのは残念だ。「この携帯オーディオ音が悪いんだよなー」と嘆く前に、一度イヤホンをチェックしてみることをおすすめする。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)

◆オーディオテクニカ「ATH-EC7」の主な特徴
型式:ダイナミック型
ドライバー:直径15.5mm、ネオジウムマグネット
出力音圧レベル:100dB/mW
再生周波数帯域:10?24000Hz
最大入力:50mW(JEITA)
インピーダンス:16オーム
質量:11g(コード、プラグ含まず)
プラグ:直径3.5mm金メッキステレオミニプラグ
コード長:0.6m(U型)
付属品:延長コード1.0m、ポーチ、イヤパッド


*WebBCNランキング編集部「自腹」レビューとは、編集部員自らが購入した製品について、個人的な体験をもとにレビューしたものです。「自腹」レビューのほか、社として購入した製品を対象とする「社腹」レビュー、借り物の製品を対象とする「借腹」レビュー、もらい物を対象とする「他腹」レビューなどを予定しています。