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「Windows 7サポート終了の反動減は織り込み済み」、マイクロソフト檜山常務に聞く(中)

 2014年のWindows XPのサポート終了から6年、2020年1月14日にWindows 7の延長サポート終了(EOS)が実施される。XPで大きな課題になった大きな需要の反動減にどのように対応するのか。日本マイクロソフトでコンシューマPCビジネスを統括するコンシューマ&デバイス事業本部の檜山太郎執行役員常務に現状を聞いた。

取材/細田 立圭志 大蔵大輔、文/細田 立圭志、写真/松嶋優子
 

日本マイクロソフト コンシューマ&デバイス事業本部の檜山太郎執行役員常務

いかに買い替えサイクルを短くできるか

――EOSの駆け込み需要後の反動減は来年の2月から起きるのでしょうか。

檜山 来年の新生活の商戦期で扱うノートPCの春モデルは、それ以前の年末商戦やEOSで扱うモデルと違うので、EOS直後の2月、3月は独立した商戦となり、4月以降も上がってくることが期待できます。しかし、5月以降はWindows XPの例を踏まえると、かなり大きなインパクトが生じるのではないかと考えています。

 ですが、それはXPの経験も踏まえて事前に分かっていたことです。大切なことは、内閣府の消費動向調査で約7年まで伸びたPCの買い替えサイクルを、1年や2年でも短くすることではないでしょうか。それができれば、かなりの需要が掘り起こせるので、その対策を実は昨年末から行ってきました。

――具体的にどのような取り組みですか。

檜山 昨年の年末商戦では、インテルと当社の協業でキャンペーンを打ちました。「いい家族に、いい一台」というキャッチフレーズで、「NEW BUDDY」キャンペーンを実施したのです。当時は、PC市場の前年割れがずっと続いていたので、インテルの鈴木国正社長と話をして業界を挙げて盛り上げていこうと。その成果として、売り上げが少しづつ上がってくるなどの効果が出始めました。

 また、今年の第1四半期(1~3月)はインテルだけでなく、各PCメーカーと家電量販企業など、まさに業界が一体になったキャンペーンも一斉に展開しました。キャッチコピーやデザインは各社同じものを使って、下の社名だけを変えるというスタイルのキャンペーンです。これが大きな流れになりました。

――家電量販店やネットショップのPOSデータを集計した「BCNランキング」でも、6月のノートPCの販売台数は17年8月以来となる16.3%増の二桁成長になりました。

檜山 販売店とメーカーが一丸となった取り組みの現われで、EOSの切り替えはわれわれが思っているよりも前倒しで進んでいると考えています。海外ではメーカーと家電量販がここまで一体となって取り組む事例は少ないこともあり、米マイクロソフトでもユニークな事例として大きく取り上げられました。
 

――重さが1kg以下の最新のWindows 10対応ノートPCを「モダンPC」として訴求していますね。

檜山 約7年の買い替えサイクルを少しでも短くして新しい需要を創出するためには、まさにモダンPCの取り扱い比率を上げて、お客様に使いたいと思っていただけることがポイントになります。

 これは、家電量販にもメーカーにも当てはまるわれわれのユーザー調査ですが、モダンPCを積極的に扱うと従来よりもお客様の製品満足度が18ポイント向上し、平均単価が12.5%アップします。

 また、追加販売が22%増、製品や店舗に対するブランドロイヤリティが36%増に伸長します。その上、買い替えサイクルも6カ月短くなり、再び同じ店舗やメーカー製品を購入したいと思う確率が4倍に上がるなど、実際の数々の効果がデータとして表れているのです。

 お客様が持っている7年前のPCは起動するのに約1分かかりますが、モダンPCはSSDを搭載しているので、起動まで12~14秒という速さです。以前のPCは起動後のパスワード入力が必要ですが、モダンPCは搭載されたカメラで本人認証をするのでスマートに立ち上がります。

 また、災害時もクラウドに大切な家族の思い出を保存していれば失われる心配はありません。単にクラウドに保存するだけではありません。膨大な画像データの中からAI技術を駆使した検索機能で、ある人だけをまとめて表示させることも簡単にできます。

 SMBの観点からいえば、かなりの精度の高さで64カ国の翻訳がリアルタイムでできるなど、これまでのPCと全く違った新しい体験ができるのです。幸いにして、18年頭は20%強程度だったモダンPCの構成比率が、直近で60%近くまで上がっています。今後も、さらに数字を上げていけるよう、業界の皆さんと力を合わせて取り組んでいきたいと思います。(つづく)