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最新ロボットが築50年の団地を走る! 全国初の芝刈り自動化を通して見えた未来の暮らしの可能性

販売戦略

2021/09/09 19:00

 団地というと日本の古き良き時代の名残というイメージがある。たしかに築年数が古く、住人の高齢化が進んでいるのは事実だ。では団地は今後廃れていく一方なのかというと、どうもそうではないらしい。最新のテクノロジーと融合することで、団地の新しい可能性を発掘しようとする動きがあるのだ。仕掛け人は、BCN+Rの連載「木村ヒデノリのTech Magic」でもおなじみの木村英寛氏。今回、最新ロボットを活用した全国初の取り組みを実施していると聞き、木村氏の住む、東京都立川市の柏町住宅団地を訪問した。

今年で築50年を迎えた柏町住宅団地は、
見た目はよくあるTHE団地だが、
最新ロボットを導入した取り組みを行っている

 もしかすると、木村氏のことをテレビで見たことがあるという人もいるかもしれない。最近では日本テレビの「沸騰ワード10」に松丸亮吾さんのスマート家電の師匠として登場。団地にもかかわらず、最新ガジェットとおしゃれなインテリアに囲まれた近未来的な住宅が話題になった。記者が木村氏と出会ったのも、この「IoT団地」がきっかけだ。今からちょうど3年ほど前に初めて取材し、あまりの衝撃にその後も何回かお邪魔し、日々アップデートされる自宅を見学させてもらっていた。
 
住宅テック系の専門家として
多数メディアにも出演している木村英寛氏
木村氏の自宅兼モデルルーム。
日々アップデートを行っている

 そんな木村氏は今年5月に柏町住宅団地管理組合に就任したことをきっかけに、自宅を飛び出し、団地全体の改革にも着手した。注目したのが、団地の共有スペースである“芝生”だ。19棟からなる柏町住宅団地はそれぞれに建物を囲むように芝生が広がっているのだが、芝刈り作業にかなりのコストがかかっていたからだ。

 「これまでは業者に依頼して、年間で4~6回の芝刈り作業を行っていたが、決して頻度が高いわけではないので、芝がきちんと刈り込まれていない時期も多かった。また、人力だと作業の音がうるさかったり、ニオイが発生したりという問題もあった」(木村氏)

 そこで目を付けたのが、ハスクバーナ社のロボット芝刈り機「AUTOMOWER(オートモア)」だ。実はオートモアについては、木村氏に以前BCN+Rでレビューを書いてもらっていた(屋外も“ルンバ”する時代が到来! ロボットで芝生の手入れを完全自動化する「Automower 435X AWD」=https://www.bcnretail.com/news/detail/20200929_192471.html)。性能や使い勝手については把握していたこともあり、昨年冬から試験的に導入してみることにしたそうだ。
 
ハスクバーナ社のロボット芝刈り機
「AUTOMOWER(オートモア)」。以前に
BCN+Rでもレビューしてもらった最新ロボットだ

 運用形態はこうだ。各棟に1台ずつ二輪タイプ「AUTOMOWER 430X」(計19台)、起伏の激しいエリアに1台の四輪タイプ「AUTOMOWER 435XAWD」を配置。事前にガイドワイヤーを地中に埋め込み、決められたエリアで芝刈りを行うように設定。AUTOMOWER 430Xおよび435XAWDは3000平方メートル以上で稼働可能なモデルなので、1棟分の芝生エリアであれば余裕でカバーする。
 
各棟に配備された「AUTOMOWER 430X」。
充電ステーションを拠点に芝刈りを行う
四輪タイプの「AUTOMOWER 435XAWD」は
傾斜が急な場所でも芝をきれいに刈ることができる
1棟分の芝生エリア。相当広く見えるが、
AUTOMOWERならなんなくカバーする

 スケジュールはアプリで設定する。柏町住宅団地では、ほぼ毎日、6時~12時の6時間が作業にあてられているそうだ。もちろんなかには人の手が必要な箇所も発生する。木やマンホールなどの縁やガイドワーヤーの外側だ。ただそれも全体のごく一部で、芝生面積の8割はオートメンションによる芝刈りが実現できているという。
 
手前がAUTOMOWERが走る前、奥が走った後のエリア。
ムラなく刈り取れている様子が分かる
木やマンホールの側などは人の手が必要。
ガイドワイヤーを地中に埋め込み、
外にロボットが出ないようにしている

 AUTOMOWERの仕組みについても触れておこう。芝刈り機というと鋭い刃が大きな音を立てて草を刈り取っていくイメージがあるが、AUTOMOWERは少し異なる。3枚のカミソリ刃が備わっているのだが、動作機構に遠心力を利用しており、稼働中はほとんど音がしないという特徴をもっている。

 刈り取った草は1~3mmと細かく、そのまま土壌で分解される。したがって、あとで集める必要はない。また草はしっかりと刈り取るが、石などの硬いものにはほとんど力を与えないので、刈れていないエリアが発生してしまったり、刃こぼれしたりということはない。また異常を検知すると停止するため、安全性という面でもすぐれている。
 
AUTOMOWERの裏側。安全性にも十分に配慮してある

 とはいえ、小さな子どもを含む多数の住人がクラス団地で、この尖った試みに対する反対や不安の声はなかったのだろうか。木村氏によると、もともと柏町住宅団地には新しいチャレンジに積極的な気風があったそうだ。「芝刈りロボットについては、さすがに疑問の声はあった。それも団地内にあるさまざまなコミュニティーに出向いて、説明をしていくうちに納得してもらえた。実際に稼働しているのをみて性能や安全性を実感してもらえたということもある」。

 今では稼働している様子が「可愛い」と団地の住人からも好評だという。散歩中に芝刈りの様子を眺めている人がいたり、最新ロボットに興味津々の子どもがいたりと、すっかり受け入れられている。実用性はもちろん団地の活性化につながっているのもおもしろい。

 芝刈りロボット以外にも柏町住宅団地では駐車場のEV対応や遊具のリニューアルなどの議論も進めているという。団地という古き良き時代の人のつながりが残る場所に、最新テクノロジーがどのように融合されていくのか。未来の日本人の暮らしを想像する上でも、柏町住宅団地の取り組みは貴重な事例になっていきそうだ。(BCN・大蔵大輔)