日本経済復活の狼煙だ──日経平均29年ぶりに2万5000円超え

オピニオン

2020/11/15 18:35

 日経平均株価が2万5000円を突破した。月次終値で最後に2万5000円台を付けたのは1991年10月の2万5222円。なんと29年ぶりだ。コロナ禍で世界的に経済が縮小。大規模な経済対策や金融緩和が実施され、一部で金余り現象が起き株式市場に向かった。

 足元では、米ファイザーと独ビオンテックが新型コロナワクチンの臨床試験で好成績を収めたとの報道で、11月9日のNYダウ前日比が一時1600ドル以上も急騰。つれ高する形で、日経平均も11日の終値で2万5000円超えを果たした。パンデミックの最中とはいえ、形の上では、失われた30年ともいわれた経済の停滞を取り戻しつつあるかに見える。
 
日経平均とNYダウの株価比較。上下しながらも大きな上昇トレンドを維持するNYダウだが、
日経平均も2012年からようやく上昇トレンドに転換した

 バブル期につけた日経平均の月次終値での最高値は89年12月の3万8916円。当時証券会社の顧客向け日記帳の編集をしていた私は、巻末につけた長期にわたる株価指数の折れ線グラフを作り直すかで悩んでいた。目盛りの最大値が4万円だったからだ。投資家が自分で株価を書き足していくようなデザインになっていたため、4万円を超えるとなれば全部作り直すハメになる。

 グラフはふんどしのように長く、何度も折り畳まなければ収納できない特殊な版型。作るのにとても手間がかかった。

 DTPが当たり前の今でこそ、グラフの作り直しはパソコンで一発だが、当時はまだ写真植字全盛の時代。先輩から受け継いだふんどしグラフの版下に、うなぎ屋のタレよろしく、新たな株価を継ぎ足しつぎ足しして毎年株価グラフを完成させていた。結局、株価はそろそろ天井と自分に言い聞かせ、最大値は4万円のままで編集を続行した。

 日記帳だから刷り上がりは11月。年末以降に株価が急騰しても後の祭りだ。史上最高値を更新し続ける株価に投資家が熱狂していた89年の年末、4万円は超えないようにと祈った。直後、バブルははじけた。
 
1985年11月の終値を起点とした、日経平均とNYダウの指数比較。NYダウは19.97倍に上昇したのに対し、
円建ての日経平均で2.0倍、ドル建てでも3.84倍に過ぎず、大きく水をあけられた

 同じ89年の年末、NYダウ終値は2753.2ドルだった。日経平均とNYダウでは、そもそも円とドルで単位が異なり、銘柄の数も選択の基準も全く異なる日米の指標だ。しかし、数字だけで比較すると、バブルのピーク時は日経平均が14.1倍という位置関係だった。翻って今年の11月12日、日経平均は0.87倍。見事に大逆転を食らっている。

 1985年11月の終値を1とした指数にすると、さらにその差がよく分かる。NYダウは19.97倍に値上がりした一方、日経平均はわずか2.0倍。為替相場を考慮したドル建ての日経平均でも3.84倍になっただけだ。米市場と比べると、この程度では、株価が上がったと手放しに喜べない。

 急騰すれば利食いで売られ急落しやすく、今後大きく下がる局面もあるかもしれない。コロナの状況もまだまだ不透明だ。しかし、コロナをきっかけとして、社会構造と意識は大きく変わりつつある。遅々として進まなかったデジタル化も、あらゆる場面で急速に動き出した。コロナで失った多くのものを胸に抱きつつも、30年で失ったものを取り戻し、さらに飛躍するチャンスが訪れつつある。伸びしろはまだまだある。2万5000円超えは日本経済復活の狼煙だ。(BCN・道越一郎)