株式の新規上場、いわゆるIPOがにぎわっている。中でも注目度が高いのが、ニューノーマル時代をリードするとの期待が高いIT関連企業だ。

 画像認識技術のフィーチャもその一つ。自動運転など、AIを駆使した画像認識技術は、これからの社会に必要不可欠なものになっていくからだ。6月24日、東証マザーズ市場に新規上場を果たした。しかし、買いが集中して取り引きが成立しなかった。2日目の25日も同様に値が付かず、上場3日目の26日に公開価格520円に比べて9.1倍の4710円でやっと初値が付いた。

 6月26日に上場したECインフラビジネスのコマースOneホールディングスも、初値が付いたのが上場2日目の29日。公開価格の4.4倍の6970円だった。ITに特化したデザインビジネスを展開するグッドパッチは、上場2日目の7月1日に公開価格の4倍、2757円で初値、7月7日に上場したITエンジニア人材派遣などのBranding Engineerも3日目の9日になって公開価格の6倍の2920円で初値が付いた。
 
東証マザーズとNASDAQはすでに今年1月の株価水準を超えている

 4社とも東証マザーズに上場した新興企業だが、公開時点での時価総額は、フィーチャが28億1200万円、コマースワンが60億1800万円、グッドパッチが49億5000万円、Branding Engineerが25億1500万円と、いわゆる小型株。市場に流通する株式数が少ないため、ちょっとした売買の動きで高騰しやすく、また大きく下落しやすい。これから参加するには、そうしたリスクを覚悟しておく必要があるだろう。

 コロナ禍での株価下落などを受け、5月27日にTOKYO PRO Marketで上場したフィリップ証券を最後に、IPOはおよそ1カ月間途絶えていた。6月24日に3社が東証マザーズに新規上場し、再開する形になった。東証や大証などを率いる日本取引所グループによると、「東証などがコロナ禍でIPOを中止していたわけではないが、上場承認を取り下げる企業が相次いだため、結果的にIPOがない期間が生じた」という。IPOを待っていた投資家も多かったようだ。

 新興市場で、ここしばらくの話題の中心はアンジェス。大阪大学医学部の森下教授が創業、2002年に東証マザーズに上場した創薬ベンチャーだ。新型コロナウイルスのDNA型ワクチン開発で、にわかに脚光を浴びている。昨年は500円台から700円台で推移していた株価が、コロナ禍で3月2日に一旦375円まで下落、その後、ワクチン開発のニュースが流れると株価が一気に高騰。一時2492円を付ける場面もあり、盛んに取り引きされている。
 
新興市場を強力ににけん引しているアンジェスのウェブサイト

 株式市場は、業績や景気の先行指標だといわれる。コロナ禍による世界的な経済縮小にもかかわらず、このところ株式市場が堅調なのは、コロナ後の経済回復を期待しての動きでもある。実際、今年の1月1週の終値を100として、日米の主要株式指数の変動率をみると、2月の下旬から3月にかけて真っ逆さまに指数が下落している様子が分かる。

 特に、NYダウは下落率が大きい場合市場の混乱を避けるため一時的に取引を中断する「サーキットブレーカー」が短期間に4回も発動するなど、しばらく「この世の終わり」のような地合いが続いた。

 特に、大きく指数が落ち込んだのがITベンチャーが多い東証マザーズ市場だ。週次ベースで見ると、3月19日に62.7%まで下落している。しかし、直近では最も回復が急だ。6月26日には1月比で117.7%と、逆に2割近くも上昇している。

 NASDAQも同様の動きだ。いわゆるGAFAMと呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトが上場するハイテク関連企業がけん引する市場。2月に一旦史上最高値を付けた後、大きく下落したが、このところ再び史上最高値を更新する動きを続けている。NYダウや日経平均も戻りは鈍いものの、1月の水準に近づく回復の動きが続いている。

 日本のIPO人気や、東証マザーズの好調、NASDAQの史上最高値更新などの原動力になっているのはテクノロジーで勝負する企業群。投資家の期待も高い。一方で、世界的な金融緩和の影響で、あり余った資金が株式市場に向かっており、ミニバブル状態になっているとの見方もある。特別定額給付金をきっかけに株式投資を始めたり、再開したりする個人投資家も多いようだ。

 株式相場は、意地悪で個人投資家が急増すると株価が天井を打つともいわれる。新型コロナウイルスの状況いかんによっても株価が大きく下落するリスクがある。今回の株高は、一時的な金融バブルで終わるのか、社会が本当に変革していく入口に立っていることを表すものなのか……。結果はこれからの株価にも表れてくることになるだろう。(BCN・道越一郎)