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【編集部座談会2020】スマホ決済の次の姿は? 爆発的な成長の背景

 2019年は、消費税率が10%に引き上がり、多くの人の生活に大きな変化があった。これに伴い開始された、キャッシュレスで支払った消費者に5%(フランチャイズは2%)還元する「キャッシュレス・消費者還元事業」は救済手段として注目されている。特に期待を集めているのは、18年末から話題になっているスマートフォン決済サービスだ。編集部では、スマホ決済の現在地点と展望を探った。

19年に爆発的な成長を遂げたスマートフォン決済サービス

 スマホ決済サービスは、18年12月にPayPayが実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」を皮切りに台頭してきた。それ以前もLINE PayやOrigami Payなどはあったが、決済サービスの増加や加盟店の爆発的な拡大、スマホ決済サービスのキャンペーン合戦が始まるきっかけになったのは間違いない、というのが編集部の総意だ。

 19年に入ると、フリマアプリのメルカリ(メルペイ)や、キャリア事業を展開するKDDI(au PAY)、コンビニエンスストアのファミリーマート(ファミペイ)、みずほ銀行(J-Coin Pay)など、さまざまな業種の企業がスマホ決済サービス事業に参入してきた。サービスが乱立状態になったうえ、各社が独自のキャンペーンを実施するので、消費者や店舗が混乱していたのは記憶に新しい。
 
キャンペーンやサービスの乱立で店舗が受けた影響を語る細田立圭志編集長

スマホ決済のスーパーアプリ化

 乱立状態の中でも、抜きんでているのはPayPayだ。他企業のキャンペーンが落ち着くなか、高還元率のキャンペーンを頻繁に実施したことで、消費税率が引き上がった10月1日には登録ユーザー数が1500万人に到達。「キャッシュレス・消費者還元事業」が始まると、さらにユーザーは増え、11月には1900万人を突破した。この状況をソフトバンクの宮内謙社長執行役員兼CEOは「一人勝ち」と表現し、スマホ決済サービスが次に目指す姿を示した。それが、「スーパーアプリ」だ。

 座談会では、「日本のスマホ決済サービスは、中国のそれと同じように成長している」という意見が出た。実際、PayPayやLINE Payの目指す次の姿は、AlipayやWeChat Payを想定している。スーパーアプリとは、交通手段の確保や商品の検索など、決済につながるあらゆるサービスを一貫して利用できるアプリのこと。プラットフォーム化することで生活に欠かせない存在になりつつ、データを収集してユーザーごとに最適なサービスを提供することを目指す。

 データを集めるためには、いかにユーザーを拡大するかが重要になる。スマホ決済サービスがキャンペーンにリソースを注いでいたのは、ここに向けた布石ともいえる。スーパーアプリはさまざまな業界を巻き込んだサービスになるので、編集部でも注目していきたい分野だ。
 
スーパーアプリ化に期待感を示す大蔵大輔記者

いまだ消えない懸念

 一方で、編集部が懸念するのは、「セキュリティ」問題。不正利用が多発したことにより9月30日に終了した「7pay」は、業界に大きな衝撃を与えた。一人勝ちのPayPayも大型のキャンペーンを打つたびに接続が不安定になるなど、いまだに不具合を起こしている。決済サービスは「使えて当たり前」と認識されているので、スーパーアプリ化を目指す前に、安定して利用できる体制を整える必要がある。

 また、「スマホを落としたらどうするのか」といった懸念は消えていない。財布を落としても同様の問題が発生するはずだが、不具合や不正利用があったことで、警戒を強める人もいるようだ。

スーパーアプリ化は課題解決にも

 QRコード決済よりも、交通系ICカードなど、タッチするだけで決済できる「非接触型決済」のほうが使い勝手が高いことも見逃せない。使い勝手で難を抱える分、お得なキャンペーンでユーザーを拡大したが、リソースが尽きる前にお得以外のメリットを生み出す必要がある。その課題解決の手段としても、スーパーアプリ化が注目されている。

 編集部では、ユーザー拡大のためのキャンペーン合戦はひと段落し、各社は広告やキャンペーンよりもシステムや機能の拡充に注力し始めた、という見方が強い。「キャッシュレス・消費者還元事業」が終わる20年6月までに、どこまでスーパーアプリ化が進むのか。今後のキャッシュレス決済サービス業界を追いかける上で、重要な焦点になるだろう。(BCN・南雲 亮平)