ヤフーとLINE、経営統合に至った共通の危機感とは?

 ヤフーの親会社Zホールディングス(ZHD)とLINEは11月18日、両社の経営統合に関する記者会見を開催し、経緯と今後の方針を発表した。

経営統合に向け握手を交わす
ZHDの川邊健太郎社長CEO(左)とLINEの出澤剛社長CEO(右)

 今回の経営統合では、ZHDとLINEが経営統合を行い、その傘下にヤフーとLINEの事業会社が100%子会社として入ることになる。両社は対等な立場で事業を進めていくという。
 
統合後の構造(予定)

 LINEの出澤剛社長CEOは、「これまで両社は切磋琢磨する関係だったが、今日11月18日、手を取り合って、さらに高見を目指すという決断をした」と述べ、ZHDの川邊健太郎社長CEOは、話題になったラグビーW杯になぞらえて「最強の“One Team”を目指していく」と両社の関係を表現し、両者は握手を交わした。

 会見では、経営統合に至ったエピソードを紹介。ここ数年、毎年一回ほど川邊社長から出澤社長に対し、「何か大きなことを一緒にやろう」とラブコールがあった。これまで、具体的な話には至らなかったが、今年に入ってから出澤社長は「思うところがあった」とし、経営統合に向けて始動。その「思うところ」が、「共通する二つの強い危機感と成し遂げたい大きな志」だ。

経営統合に至った経緯

 危機感の一つは、“グローバルテックジャイアント”の存在だ。現在は、強大な企業に人材やデータ、金が集約されてしまうビジネス構造になっている。現状、ZHDとLINEが経営統合を果たしたとしても、単純計算で時価総額3兆円、営業利益1600億円、研究開発費200億円、従業員数1.9万人と、海外の大企業に比べて、桁が一つ、二つ足りない状況だ。

 出澤社長は、「世界のインターネット産業の中で、日本の存在感は非常に小さく、差が開いている」と分析。「あらゆる産業がデジタル化する中でこの差が広がり続けると、国力や文化にまで影響が出かねない」と懸念を明かした。

 もう一つの危機感は、「“課題先進国”と言われる日本において、テクノロジーで解決できる課題がまだまだあり、それを解決できていない」(川邊社長)ことだという。「労働人口の減少やそれに伴う生産性・効率の低下、自然災害などへの対策に、ITをもっと役立てるはず」と話し、もどかしさをにじませた。

 一方、大きな志について川邊社長は「日本に住む人々に最高のユーザー体験を提供し、社会課題を解決していく」ことだと述べた。まずは、日本にフォーカスしたAIテックカンパニーとして日本固有の課題を解決していくとした。

 出澤社長は、「日本を起点にアジアにも最高のユーザー体験を提供する」と続け、日本の次はすでにLINEのユーザーが多いタイや台湾などの国々でサービスを強化する方針を示した。その上で、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指す」とした。