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デジタルライフの健全な発展を目指し、PC周辺機器関連3社が「一致団結」

【喜びの原点・8】 PC周辺機器メーカーのバッファローをグループにもつメルコホールディングス創業者の牧誠氏は、経営理念であるメルコバリューに「一致団結」を掲げる。「千年企業」「顧客志向」「変化即動」とともに重要な四つのメルコバリューの理念の一つである。その理念はグループ内に留まらず、デジタルライフにおける利用者の利便性を守り、その健全な発展に寄与するために、2010年2月に設立したデジタルライフ推進協会(DLPA)の活動にも及んだ。

2010年2月1日、デジタルライフ推進協会の設立時。中央がメルコホールディングスの牧誠社長(当時)、
右がアイ・オー・データ機器の細野昭雄社長(当時、現・会長)、デジオンの田浦寿敏社長

 経営理念についての思いを収めた『理念BOOK メルコバリュー』の中で牧氏は、「私たちは、フェアーアンドオープンの精神で、高い志と情熱を共有する人たちと共に、いかなる困難をも乗り越え、一丸となって目標を達成します」と記している。

 そして、「大きな目標は人を一致団結させて、目標それ自体が人々を惹きつける」と、目標を示すことの大切さを語る。目標を定めるのはリーダーの役割だ。「リーダーは明確な目標を示し、その実現のために強い決意を示し、道筋(シナリオ)を用意する必要がある」と、あるべきリーダー像にも触れる。

 また牧氏は、組織に所属することで、個人として発揮する能力以上のことを成し遂げることができると考えた。つまり、組織として一致団結することは、「1+1が2ではなく、3にでも4にでもできる状態を指す」というわけだ。

顧客視点でデジタルライフ推進協会を設立

 「一致団結」の理念はメルコグループだけでなく、理念の一つにある「顧客志向」に基づくユーザーのため、ひいては業界のために関連する企業全体がまとまる活動にも及んだ。それがDLPAの設立である。

 DLPAは、地上デジタル放送などのデジタルコンテンツをユーザーがより手軽に楽しめる環境づくりや、ルールづくりへの提言などを行うために、メルコホールディングスとアイ・オー・データ機器、デジオンの3社が立ち上げた協会で、初代の代表理事を牧誠社長(当時)が務めた。

 自宅のレコーダーなどに記録されたデジタルコンテンツを外出先のスマートフォンタブレット端末などで見る「リモート視聴」は、IoT時代の今となっては当たり前に使われている機能だ。しかし協会が設立された当初は、11年7月に地デジ放送が開始される直前ということもあり、「ダビング10」などの強固なコピーガードが全面に打ち出され、ユーザビリティーの低下が危惧されていた。

 また、放送やBlu-rayなどの規格、機材の仕組みの多くは家電メーカーや放送事業者が主導権を握っていたことに対して、PC周辺機器メーカーからも積極的に発言していくという狙いがあった。

 10年4月の週刊BCNの取材に牧氏は「関連製品の開発と、著作権を保護したデジタル情報の流通方法とルールを幅広く議論する必要があるが、現時点では一部のメーカーに限られており、健全な状態ではない」と異議を唱えつつ、「PC周辺機器のメーカーは“一匹狼”的な企業が多く、他社と連携することはあまり考えてこなかった。だが、今回は1社だけではどうにもならないので、他社との連携が絶対に必要だと思った」と、異例のアライアンスが生まれた背景について語っている。

 それから3年後、DLPAではリモートアクセスによる録画コンテンツの視聴スタイルを実現させ、ユーザーの視聴環境の改善に大きく貢献した。現在では、正会員が7社と1法人、賛助会員が8社の協会に成長。家庭で安心してネットワーク機器を利用できるように、サイバー攻撃などの対策について会員企業が共有するなどの活動を展開している。

 20年2月に協会は設立から10周年を迎える。18年5月の社員総会では、新任の理事として牧誠氏の長男でメルコホールディングス社長の牧寛之氏が選任された。挨拶の中で寛之氏は「常にユーザー目線で、ユーザーにとっての利便性を追求すること。協会創立時の思いは今も変わっていません」と述べており、顧客志向に通じる設立当初の思いは今でも変わっていない。(BCN・細田 立圭志)