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日本市場の弱点を逆手に世界展開 伸び悩むAR/VR業界にエレコムが本腰

経営戦略

2017/10/04 12:03

 エレコムは10月2日、AR/VRコントローラのソフトウェア開発キット(SDK)「Vroom(ヴルーム)」を開発したワンダーリーグと提携し、AR事業に本格参入すると発表した。


AR市場に本格参入する

 IDCの調査によると、全世界のAR/VR市場は2017年で約1.2兆円だが、21年には約24兆円まで成長するという。毎年平均213%という高い成長率だが、これを日本だけでみると167%まで下がる。原因はスマートフォンのOSシェアでiOSが過半数を占める特異な市場構造にあるためだ。現在のAR/VRのプラットフォームはハードウェア主体で、スマートフォンであればAndroidの一部端末が対象だ。結果、対応端末が世界では約22%なのに対して、日本は約2%にとどまっている。
 

海外と日本のAR/VR対応端末のシェア比較

 しかし、エレコムの梶浦幸二 常務取締役は、この足かせがチャンスになるとみている。iOS向けのAR/VR市場は開拓されておらず、パイオニアとなれば世界市場に打って出ることも可能だからだ。17年2月時点で、iPhoneユーザーは日本で0.5億人、米国で1.2億人、中国で2.7億人と推測されている。
 

エレコムの梶浦幸二 常務取締役

 今回、提携するワンダーリーグはもともとゲームアプリの会社で、現在はOSに依存しないAR・VR開発キット「Vroom」を開発している。両社は国内のAR・VRプラットフォームを整備することで、市場全体を活性化することを目指す。
 

「OSに依存しないマルチプラットフォーム」をエレコムのAR/VR製品の特徴にしていく

 第一弾としてリリースするのは、世界95%以上のスマートフォン(iOS/Android)に対応したARモーションコントローラ「JC-VRR02VBK」。価格は税別で6740円で、10月下旬に発売する。
 

ARモーションコントローラ「JC-VRR02VBK」

 本体は6軸モーションセンサ―やアナログスティック、トリガー、音量調整ボタンなどを搭載。Bluetooth(2.4GHz)で2台までのコントローラをスマホに接続できるので、両手に持って操作することが可能だ。ゲームが主要な用途だが、不動産業界向けのソリューションなどのアプリも充実させる。現在、メガハウスやSony Digital Entertainmentなど13社がアプリ制作に参画予定。エレコム自身もこれを機にスマホゲーム市場に参入するという。
 

13社の制作会社が「JC-VRR02VBK」対応のアプリ開発に参画

 エレコムでは15年からスマホ向けVRヘッドセットを販売しており、17年度の売り上げは5億円前後になる見込み。今後、BtoB向けを含めて360°カメラやARグラスのような関連アイテムを拡充し、21年までに30億円まで伸びると予想する。AVデジタル家電の周辺機器で手広く展開するのは、いつも通りのエレコムといえるが、今回はハードだけでなくソフトにも目配せしているのが新しい。対応OSとコンテンツの少なさという弱点を解消し、自ら市場に熱を吹き込めるかが、事業の成功を左右しそうだ。(BCN・大蔵 大輔)