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<Special Report>激変する家電マーケット、国勢調査に見る「日本の暮らし」

データ

2016/09/28 09:00

 総務省統計局は、国勢調査をはじめとするさまざまな調査結果をWebサイトで公開している。データの中から家電製品の開発や販売に影響を与える「暮らし」に関わる五つの数字を挙げる。空き家率、世帯数、一人暮らし世帯、未婚率、共働き率から見えてくる家電マーケットの将来像とは。

家電量販店・メーカーが押さえたい五つの数字>
(1)過去最高を更新 高まり続ける空き家率

 一つめの数字は、5年ごとに公表される「空き家率」だ。「平成25年住宅・土地統計調査」によると、2013年10月1日時点の空き家率は13.5%で、20年前の1993年(9.8%)に比べ約4ポイント上昇、過去最高を更新した。
 

 建て方別では、一戸建てが半数を占めるが、伸び率は共同住宅の方が高い。野村総合研究所(NRI)は、空き家率は2023年に21.0%、2033年に30.4%となり、3割を超えると予測。わずか8年後には、5軒に1軒が空き家となる。
 

 空き家になる要因は、賃貸・売却の場合、物件の供給過剰、工場の撤退・縮小によるエリア人口の減少、駅近志向の高まり、物件の広さと家賃のミスマッチなどが挙げられる。

 建物の老朽化や防犯などの点で問題視されている空き家の増加は、一見、家電製品やデジタル製品の販売とは関係がない動きにみえる。しかし、背景にある「人口減少」と「東京都心や地方の中核都市への一極集中」は、さらなる成長拡大を見込む小売企業やメーカーにとって足かせになる。都道府県や市単位の空き家率は、商圏の把握や出店計画に欠かせない重要なデータになるはずだ。
 

(2)人口減でも増える世帯数 一人暮らしは3割を占める

 今年6月に発表された「平成27年(2015年)国勢調査(速報)」によると、定まった住居に暮らす一般世帯数は5187万7000世帯で、1世帯当たり人員は、前回調査(2010年)の2.42人を下回る2.39人だった。なお、平成27年国勢調査は10月以降、順次、確定報が公表される予定だ。

 世帯人員別にみると、「1人」が1684万5000世帯で最も多く、一般世帯の約3割、32.5%を占める。配偶者と死別・離別した高齢者や学生・社会人の一人暮らしなども含む数字だ。一方、18歳未満の子どものいるファミリー世帯は約1145万世帯(22.1%)。6歳未満に限ると約473万世帯と少なく、全体のわずか9.1%にすぎない。

 ここ数年、日本の総人口はほぼ横ばいで推移し、出生数から死亡数を差し引いた人口の自然増加数はマイナスが続くが、世帯数は年々増えている。しかしそのピークもわずかで、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると2019年の5037万世帯を頂点に減少に転じる。将来的には5000万世帯を切る水準まで減少すると見込まれている。

(3)増える未婚率と子育て世帯の共稼ぎ率

 同じく平成27年国勢調査によると、「生涯未婚率」と呼ばれる50歳の未婚割合は男性22.8%、女性13.3%に達し、5年前より男女とも2ポイント以上アップした。未婚率の上昇は、ファミリー層をターゲットにした、これまでの製品開発や販売戦略の見直しが迫られる。

 一例は、子どもの成長を記録するニーズの高いデジタルビデオカメラだろう。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、アウトドア向けのアクションカメラを除く、従来のデジタルビデオカメラの年間販売台数は2012年をピークに減少し、売り場も縮小しつつある。

 子どものいる世帯では、夫婦ともに働く「共稼ぎ」が増えている。夫婦と6歳以上~18歳未満の子どものいる世帯だと約7割、夫婦と6歳未満の子どものいる世帯でも半数近くを占めて、18歳未満の子持ち世帯の共稼ぎ率は58.7%に達した。
 

 共稼ぎ世帯をターゲットとする製品は増えている。食洗機やロボット掃除機などの時短家電や、ハウスクリーニング・家事代行・食材宅配などのサービスに見られる「家事の効率化・外注化」がポイントになる。家事負担の軽減は、一人暮らし世帯にも共通するニーズだ。

 人口が減少して空き家が増えていくなか、これまで以上に駅前や再開発エリアなどに人が集中する商圏の見極めや、販売ターゲットのニーズの変化を把握する必要がある。(BCN・嵯峨野 芙美)
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2016年10月号から転載


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。