【ハイレゾ入門】まずは手持ちのヘッドホンにプレーヤー&アンプを追加しよう

レビュー

2014/07/29 18:12

 最近よく耳にする「ハイレゾリューション・オーディオ(ハイレゾ)」。ICレコーダーや携帯オーディオで対応機種が増え、今夏はハイレゾ対応のスマートフォンが登場するなど、徐々に身近な存在になりつつある。とはいえ、「ハイレゾって何?」「CDの音とどう違うの?」と、まだその高音質を体感したことがない人には、多くの疑問が浮かぶだろう。そこで、ハイレゾとは何かを解説しながら、初心者がハイレゾを体験するために必要な製品を紹介する。

「MICRO PRECISION DH1」と「iBasso Audio DX90j」

左から「MICRO PRECISION DH1」と「iBasso Audio DX90j」
 

CDの3.0~6.5倍の高解像度をもつ音声データ「ハイレゾ」



 ハイレゾとは、CDよりも高解像度の音楽データを指す。限りあるメモリを有効活用するために、音声ファイルのサイズを圧縮する方式として最も一般的なのはMP3だが、実は録音スタジオで収録したCDの音源も、CDに収めるために、一般的な音楽CDの場合で44.1kHz/16bitというフォーマットまで圧縮している。
 


 音楽データを圧縮すると、高域の倍音(基本音の周波数の整数倍の周波数をもつ音)のみずみずしさ、ほかの楽器にかき消されてしまうような小さな音量の楽器の繊細な響き、空気感や左右の広がりといった音楽をより深く楽しむための要素がどうしても薄くなってしまうのだ。
 

左からハイレゾ音源のデータ量(イメージ)とCD音源のデータ量(イメージ)

左からハイレゾ音源のデータ量(イメージ)とCD音源のデータ量(イメージ)

 ハイレゾの音源は、音楽CDの約3倍の情報量をもつ96kHz/24bitや、約6.5倍の情報量をもつ192kHz/24bitなど、最大100kHzを超える周波数帯域をカバー。情報量が大きくなればなるほど、ミュージシャンが生み出す原音の息づかいや空気感、倍音の伸びなどが生き生きと再現できる。

 また、少し前まで入手が難しかったハイレゾ音源は、いまではインターネット経由でダウンロード購入することができる。ソニーやオンキヨーなどの大手オーディオメーカーが配信し、ロックやポップス、ジャズ、クラシックなど、ジャンルも幅広い。対応機器は、据置き型のハイレゾ対応レシーバーのほか、歩きながら使えるポータブルタイプのプレーヤーも多く登場している。
 

手持ちのヘッドホンにポータブルプレーヤーを追加



 最近は、音にこだわった高級ヘッドホン/イヤホンが売れている。しかし、いいイヤホン/ヘッドホンを用意しても、一般の携帯オーディオ/スマートフォンの音源は圧縮したMP3であることが多く、クオリティには限界がある。せっかく買ったイヤホン/ヘッドホンのよさを最大限に引き出すなら、ハイレゾ対応のプレーヤーを手に入れて楽しもう。外出先で高音質の音楽を楽しみたいなら、7月18日発売のヒビノインターサウンドのハイレゾ対応ミュージックプレイヤー「iBasso Audio DX90j」がオススメだ。
 

iBasso Audio DX90j

iBasso Audio DX90j

 「iBasso Audio」は、ヘッドホンアンプなどを手がける中国のハイエンドオーディオメーカーで、ハイレゾ関連製品を積極的に開発・販売している。「DX90j」は海外で販売している「DX90」の日本版で、日本市場で販売するにあたっては、多くのディテールをブラッシュアップした。

 基盤にパーツを装着するハンダには、「DX90」の7倍の銀含有率をもつ無鉛銀入りハンダを採用。銀は鉛よりも抵抗値が低く、スムーズに電流が流れるので、伝送情報量が向上する。こうしたアナログの部分をおろそかにしていない点には、好感がもてる。

 デジタルデータをアナログ変換するDAコンバータには、米ESSテクノロジーの「ES9018K2M」をモノラルモードで2個搭載。ESSテクノロジーのDACは、高級オーディオに多数採用されている定評のあるパーツだ。今回使用したDACはポータブル機器での使用を考えた省電力仕様で、音質のよさとバッテリもちの両方を実現している。対応フォーマットは最大192kHz/24bit(PCM)。

 こだわっているのはパーツだけではない。組立てにも細心の注意を払っている。「DX90」とは異なる検品チェックの厳しい工場に組立てを依頼しているだけあって、ていねいな仕事がされているのが見てわかる。

 肝心のサウンドは、さすがにハイレゾらしい透明感があり、高域の伸びも申しぶんない。特に左右の定位感は非常にわかりやすい。これは、DACを左右別々に備えた効果だろう。

 内蔵ヘッドホンアンプもクオリティが高く、鳴りもパワフルで、ヘッドホンのポテンシャルを最大限に引き出す。ハイレゾ対応のポータブルプレーヤーは各社からさまざまなモデルが出ているが、「DX90j」のサウンドは、そのなかでもかなり上位に入るクオリティだ。
 

micro SDHC/SDXCカードスロット

micro SDHC/SDXCカードスロット

 内蔵メモリは8GBで、micro SDHC/SDXCを挿入して容量を増やすことができる。大容量データを扱うポータブル機器だと、レスポンスが悪い機器も散見されるが、「DX90j」は電源を入れてからの起動が早く、各種操作のレスポンスもいい。
 

自宅でハイレゾを楽しむならヘッドホンアンプを追加



 手持ちのイヤホン/ヘッドホンを使って自宅でハイレゾ音源を楽しみたいなら、PCなどに接続するUSB-DAC内蔵ヘッドホンアンプ「MICRO PRECISION DH1」がオススメだ。「DH1」は最高192kHz/32bitまでと、現在流通しているほとんどのハイレゾ音源に対応しているので、PCや据置きのオーディオ機器に接続することで、気軽にハイレゾを楽しむことができる。
 

MICRO PRECISION DH1

MICRO PRECISION DH1

 プロの録音現場で一般的に使われているフォーマット、DSDを、DSD信号として認識して再生するDSDネイティブ再生に対応。DSDならではのナチュラルなサウンドを、自宅で体験できるのはうれしい。米テキサス・インスツルメンツのDAC「PCM1795」が、クセのないサウンドメイキングに貢献している。

 電源はUSBバスパワー。バッテリを内蔵していないので外の持ち出しにはあまり向いていないが、実売で2万円を切る価格で、自宅で手軽にハイレゾ体験ができるのは、やはり特筆に値する。外装は黒いヘアライン仕上げで高級感があり、大きさも手のひらサイズなので、ノートPCの側に置いてもじゃまにならない。
 

ライン出力端子も備える

ライン出力端子も備える

 ヘッドホン端子に加え、ライン出力を備えているので、オーディオアンプにつなげばスピーカーでガンガン鳴らすこともできる。リーズナブルかつお手軽にハイレゾを楽しみたい人にオススメだ。
 

初心者からオーディオマニアまで 手軽に始めるハイレゾ生活



 iBassoは、ハイレゾ分野で早くから製品開発を進めていたこともあって、ここで紹介した「iBasso Audio DX90j」も「MICRO PRECISION DH1」も、ハイレゾの最大の魅力である音楽が本来もっているバイタリティのあるサウンドを忠実に再現する。さらに、リーズナブルかつ導入が簡単な点が大きな魅力といえる。

 そのクオリティは「ハイレゾを体験してみたい」という初心者はもちろん、手練のオーディオマニアをも納得させるレベルにある。音のよさというのは、いくら言葉を並べても体感しないとわからない。ぜひ店頭などで視聴してほしい。(ITライター・巽英俊)