インクジェットプリンタ(IJP)の市場規模は、前年を下回る水準で推移している。例年、11月から市場は大きく盛り上がるが、今年はいまのところ、勢いはいまひとつ。IJPには印刷に特化した単機能モデル(SFP)とスキャナやコピー機能などを有する複合機(MFP)に分けられ、市場の9割弱をMFPが占めている。このMFPだけに絞り込むと、キヤノンとエプソンの台数シェアの合計は8割、さらに3番手に位置するブラザーを合わせると3社で市場の9割を占める。各社がしのぎを削る中、年末商戦に向けて新モデルの比率は増加しており、順次切り替わりつつあることが分かる。

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 IJP市場の過去3年における、10月1週から12月4週までの3か月間にわたるMFPの台数指数を図1左に示した。この台数指数は2014年10月1週(14年10/6-10/12)の販売台数を「100.0」として算出したもの。毎年11月3週(14年11/17-11/23、15年11/16-11/22週、16年11/14-11/20週)から12月4週にかけ、IJP市場は年間を通じて販売台数が最も多くなる時期だ。しかし、16年は10月1週(16年10/3-10/9)の時点で既に14・15年を下回っており、11月4週(16年11/21-11/27)でも台数指数は、152.3と14年の201.5や15年の189.5より低い水準で厳しい状況が続く。

 図1右は、台数指数と同一期間におけるメーカー別の台数シェアをチャート化したもので、キヤノンとエプソンのシェアは高く、ともに3割後半から4割台半ばで首位争いを展開している状態だ。大きく引き離されているものの、3番手のブラザーは1割強を占めている。この上位3メーカーのシェアを合計すると、市場全体の9割以上を占有しており、寡占状態は今後も続くと考えられる。
 
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 図2は、上位3社が16年8-10月に発売した年末商戦用の新モデルが、それぞれのメーカー内で占める割合をあらわしている。年末商戦モデルの比率は週を追うごとに増加していることが分かる。10月は、3社とも旧モデルや型落ちモデルが市場をけん引していたが、その後、新モデルへとシフトしている様子が明らかだ。11月に入ると、3社とも新モデルの比率が4割を超え、切り替わりが進んでいることを示している。ただし、キヤノンはエントリーモデルの「PIXUS MG3630」を前年から引き続き販売し、一定の台数比率を保っているため、他の2社よりも新モデルの比率が若干低くなっている。

 パソコンとデジタルカメラ市場の冷え込みに加え、スマートフォンネイティブ世代の増加などにより、年々家庭での印刷需要が減少している。このような状況を考慮すると、今後IJP市場が大幅に拡大することは難しいだろう。年末年始の需要期に買い替え需要の掘り起こしを図るため、エプソンとブラザーは最大5000円、キヤノンは最大3000円のキャッシュバックキャンペーンを実施している。このような施策は一時的に需要を喚起するが、恒久的な対策にはなりえない。今後はキャンペーンに耐えられるか、メーカーの体力勝負へと移行する可能性が高い。