2026.10.30 09:00

スマホ・PC

AI PCが当たり前になる時代へ 高校「情報I」必修化とQualcommが変える学びと暮らし

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 生成AIの活用が広がり、学びや仕事のスタイルが大きく変わろうとしている。調べものや文章作成、翻訳、要約といった作業はもちろん、アイデア出しや創作活動まで、AIは身近なパートナーになりつつある。

 eラーニング戦略研究所が2026年9月に公開した「小中高・大学におけるAI活用比較調査報告書」によると、教員の日常的なAI活用は小中高・大学ともに6割を超え、AIを活用する小中高生の8割近くが「調べ学習」に利用しているという。

こうした変化の中で注目されているのが、AI処理に特化したプロセッサー「NPU」を搭載し、クラウドを介さず端末内でAI処理ができる「AI PC」だ。
 
児童生徒・学生のAI利用状況
(eラーニング戦略研究所調べ)

「AI PC」の比率はすでに約4割

 家電量販店・オンラインショップの実売データを集計した「BCNランキング」によると、ノートPCの販売台数におけるNPU搭載モデル(AI PC)の構成比は2026年7月時点で39.2%と、4割に迫る水準まで拡大。月ごとに変動はあるものの、右肩上がりの拡大基調を維持しており、ノートPCの過半数がNPU搭載となる日もそう遠くはない勢いだ。
 
2026年7月時点で39.2%まで拡大

 PCを選ぶ際に重視するスペックといえば、これまでは「CPUのクロック周波数」や「メモリ容量」「GPU性能」だった。しかし、スマホ向けチップで培った技術をもとにPC向けに開発した「Snapdragon Xシリーズ」を展開するQualcommは、新たなPCの選定基準を提唱している。それは「NPUが載っているか」「そのAI演算性能(TOPS)はどれくらいか」の2点だ。

 QualcommのSnapdragon Xシリーズのほか、AppleのMシリーズやIntel、AMDの新世代チップもNPUを搭載しており、各社とも、エッジAIの処理は専用チップのNPUに任せるアプローチで開発を進めている。

 エッジAIとは、クラウドを介さず、主に端末側でAI処理を行う仕組みのこと。「ローカルAI」とも呼ばれている。その対極がクラウドAIで、いま単に「AI」というと、クラウドAIの意味で用いられているケースが多いが、それぞれのメリット・デメリットを把握して状況に応じて使い分ける「ハイブリッドAI」こそ、今後は主流になるとの見方もある。
 
エッジAI(ローカルAI)とクラウドAIの比較

 AI PCのシェア拡大をけん引するクアルコムのSnapdragon Xシリーズの特徴は、モバイル向けチップで培った技術を生かした静音・低発熱・低消費電力による長時間のバッテリー駆動、そしてAI専用NPUによるAIの高速処理。米Microsoftは「Copilot+ PC」の基準を40 TOPS以上と定めており、2024年発売モデルで「45 TOPS」のSnapdragon X Plus/Snapdragon X Eliteを採用した。2026年モデルの「Surface Laptop/Surface Pro」は次世代のSnapdragon X2シリーズを搭載し「80 TOPS」に向上。驚くほど動作音は静かで、レスポンスは速く、AI処理もより高速になったという。

 静音性や長時間利用し続けても熱くならない本体は、AI機能の活用有無にかかわらず、PCに求められる基本性能であり、「NPU搭載」は高性能モバイルノートPCの目印と言い換えることもできる。

暮らしに溶け込むAI 「情報I」は必履修化に続き「共通テスト」の試験科目に

 AI(クラウドAI・エッジAI)は、ビジネスはもちろん、教育分野でも大いに注目を集めており、学びのあり方を根底から変えようとしつつある。

 もっとも分かりやすい事例が、2022年度からの高校での「情報I」の必履修化と、それに続く2025年度からの大学入学共通テスト(共通テスト)への「情報I」の導入だろう。「情報I」では、プログラミングやネットワーク、データベースの基礎などについて学ぶ。国立大学では、共通テストで「情報I」を含め、原則6教科8科目が課されることとなり、入学者選抜において、より幅広い知識が求められるようになった。

 そもそも文部科学省は、大学の教養教育において、文理問わず「数理・データサイエンス・AI」を国語や数学、英語などと並ぶ基礎的な教養と位置付けており、データサイエンスとともに、AIもまた学校で学ぶべき教養となっているのだ。

 近年、利用者が増えている大学入試の総合型・学校推薦型選抜で重視されやすい「探究的な学び」でも、AIやデータを活用して課題解決に取り組む力が求められている。その意味でも、AIを日常的に活用できる学習環境の重要性は今後さらに高まっていきそうだ。

 大学が求める学生の変化にあわせ、私立中学・高校や公立高校、中高一貫校などでも、特色ある教育として「AI対応人材の育成」を前面に掲げる学校が目立つ。特に私立学校は学生獲得競争が激しく、「6年後」ないし「3年後」の大学受験を見越し、いち早く保護者に学びの新たな潮流を示す必要に迫られている。

 さらに文化面を見ても、以前から頻出していたアニメ・ゲームはもちろん、実写のTVドラマや映画でも「AIロボット」や「AIパートナー」などが作中の重要な要素として登場する作品が増えつつある。日本俳優連合が声のAI生成に関するガイドラインを発表するなど、否定的な動きも若干あるものの、今やAIは暮らしに欠かせない存在となりつつある。
 
放送中のドラマ『VIVANT』は第2シーズンから番組制作において生成AIを導入。
作中には、人間らしい受け応えを見せるAIキャラクター「AIハヤト」が登場する
(画像は生成AIで作成したイメージ)

教育現場でのAI PCのメリット

 今や中学生どころか、小学生からスマートフォン(スマホ)を持つようになり、日常的にAIに触れる時代。これからの学びや暮らしを支えるPCには、どのような性能が求められるのだろうか。

 ここで重要になるのが、「ローカル環境(エッジAI)」の安全性と「NPUの省電力性」だ。例えば、学校の教室で40人の生徒が一斉にクラウドAIに接続して重い課題演習を行えば、校内Wi-Fiの通信帯域はあっという間にパンクし、遅延が発生する可能性がある。また、生徒の個人的な学習データやテストデータ、校内の機密情報を外部のクラウドへ送信することはセキュリティーやプライバシー上のリスクをはらんでいる。

 しかし、10月15日に当サイトに掲載した<AIはクラウド+エッジのハイブリッド時代へ>でBCNの道越一郎エグゼクティブ・フェローが実証したように、 NPU搭載のAI PCでエッジAIを作動させれば、ネットワークの混雑や通信環境に左右されずに応答が得られ、情報漏えいのリスクをほぼゼロにできる。
 
 また、生徒・学生にとっても、バッテリー駆動時間は重要なポイント。バッテリーのみで長時間AI処理にも活用できるのはメリットが大きい。重いAI処理をCPUではなく、省電力設計のNPUに任せることで、AI処理以外の通常タスクはスピードを落とさず処理できる。NPU搭載PCは実用性でも大いにメリットがあるのだ。
 
MicrosoftのタブレットPC「Surface」シリーズは、
2024年発売モデルからSnapdragon X Plus/Snapdragon X Eliteを搭載し、Copilot+ PCに準拠している

 スマホが普及する以前、受験生の学習を支えるデジタル機器の代表格といえば「電子辞書」だった。しかし、今やスマホ1台で辞書や翻訳、音声学習などの機能を利用できるようになり、さらにはPCに求められる役割も変化している。スマホと連携し、スマホでは難しいAIを活用したレポート作成や情報整理、プレゼンテーション資料の作成など、より高度な学習に向け、重要性が高まっている。

 AI PCは、NPUがAI処理を専門に受け持つことで、長時間のバッテリー駆動を実現し、クラウドだけに頼らない新しいAI活用の可能性を広げる。学習データを手元で扱える安心感や、場所を選ばず利用できる利便性は、これからの学びを支える大きな強みだ。また、静音・低発熱・低消費電力という特徴も、製品選びの際、非AI PCではなく、AI PCを選ぶ理由になるはずだ。教育・文化面の変化と、PCそのものの性能向上から、PCは単なる学習端末ではなく、AI時代に自身の可能性を広げるためのパートナーへと進化し始めている。


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
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嵯峨野 芙美

Fumi Sagano

神奈川県出身。横浜国立大学卒。広告代理店を経てBCNへ。IT・デジタル、マネー、スマホ、まちづくりに関心を持つ。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。趣味は音楽・映画鑑賞。

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