2026.9.13 18:30
スマホ・PCプロジェクターでエプソンが4位に陥落、新旧交代で大激戦[道越一郎のカットエッジ]
プロジェクター市場が大きく動いている。長らくトップの座に君臨していたエプソンがこの7月、8月と一気に4位にまでシェアを落とす「事変」が起きたからだ。一方で、市場全体の販売は好調。台数ベースでは昨年10月以降11カ月連続で前年比増。金額ベースでもこの3月以降6カ月連続前年比増が続いている。特にこの8月は、台数は前年同月比で149.1%、金額も157.9%と、いずれも大幅に伸びた。平均単価も8万円台(税抜き、以下同)と高水準で推移している。要因は、新興メーカーの台頭による市場構造の変化だ。全国2400の家電やカメラの量販店、オンラインショップなどの実売を集計するBCNランキングで明らかになった。
プロジェクター市場は、2024年8月以降、販売が2桁で伸びた月は台数で12回、金額では16回と好調だ。逆に前年を下回った月は、台数が4回、金額は3回だけ。しかもマイナス幅は1桁と軽微だった。テレビに押されて苦戦を強いられているかと思いきや、実は非常に堅調。原動力は競争の激化だ。このところ勢力図に大きな変化が起きている。8月のメーカー別販売台数シェアは、首位がAnker(アンカー)で19.2%、17.3%と同率で2位だったのがAladdin X(アラジン・エックス)とXGIMI(エクスジミー)。エプソンは16.4%で4位に後退した。とはいえ、各社の差は小さい。長らく、トップをひた走るエプソンとその地位を脅かすAnkerという2強状態が続いていた。ここに、Aladdin XとXGIMIが加わり、4社で僅差のダンゴ状態に突入したわけだ。
首位Ankerのプロジェクターと言えば、何といっても「Nebula Capsule」シリーズ。従来のプロジェクターの概念を突き破った、茶筒のような円筒形。コンパクトな筐体にバッテリーを内蔵し、持ち運べるのも大きな特徴だ。さらに、Wi-Fiと内蔵スピーカーで、本体だけで動画視聴が完結する「スマートプロジェクター」の普及に大きく貢献したシリーズでもある。一番人気は、24年発売の「Nebula Capsule 3」。内蔵のGoogle TVでWi-Fiがあればすぐ動画コンテンツが楽しめる、というのは変わらない。フルHD(1920×1080)で200ルーメンと基本性能をしっかり押さえた。安価なエントリーモデル「Nebula Capsule Air」が登場した後も、同社で最も売れるプロジェクターとして売れ続けている。
2位のAladdin Xは、天井に設置するシーリングライト一体型のスマートプロジェクター「Aladdin X3」で知られている。前身は、シーリングライト型の元祖「popIn Aladdin」を開発、クラウドファンディングでヒットさせたpopIn。22年にXGIMI傘下に入った。同社の稼ぎ頭は「Aladdin Poca」だ。茶筒型本体は「Nebula Capsule」シリーズに似ているが、450ルーメンと明るく、投影方向を調整できる「足」がついているのが特徴。独自のAladdin OSを搭載し、アプリやコンテンツはオリジナル。8月現在の実売価格は「Nebula Capsule 3」とほぼ同じで、税抜きで5万円台前半だ。
同率2位のXGIMIは、前述の通りAladdin Xの親会社。13年創業の同社は「スマートプロジェクター」のパイオニアとも言われている。いち早くAndroid TVなどのOS、Wi-Fi、本格スピーカーを本体に一体化させた製品をリリース。家庭用プロジェクターでは大きな世界シェアを握っている。現在、最も売れているのは「HORIZON 20 Pro」だ。平均単価が20万円前後の高価な同社のフラグシップモデル。RGB3色レーザーエンジン搭載。4100ルーメンと非常に明るい。240Hz対応で本格ゲーミング用途にも耐える入力遅延1msというスペックも人気の秘密だ。また、茶筒型で3万円前後と安価な「Nova Cloud Ash」もラインアップ。幅広い製品構成でシェアを稼いでいる。
新興メーカー台頭著しいプロジェクター。
左からAnkerの「Nebula Capsule 3」、Aladdin Xの「Aladdin Poca」、
XGIMIの「HORIZON 20 Pro」(右上)、エプソンの「EB-W55」
一方、精彩を欠くのがエプソンだ。売れ筋は従来型のビジネスプロジェクター。最も売れている「EB-W55」は、4000ルーメンと明るく8万円前後と手ごろなのが特徴だ。しかし、単体で動画を楽しめるような機能はない。HORIZON 20 Proと似たコンセプトの「Lifestudio Flex EF-72」なども展開するが、売れ行きは芳しくない。同率2位のAladdin XとXGIMIが同系列のメーカーであることを考えれば、エプソンはXGIMI系メーカーにダブルスコアで負けてしまっている。エプソンが05年に、DVDプレーヤーとスピーカーを内蔵する一体型のプロジェクター、dreamio「EMP-TWD1」を大ヒットさせたのは記憶に新しい。ネット動画を1台で楽しめるという、現在の売れ筋製品と発想は極めて近い。新たなコンセプトの製品で再起を期待したい。
プロジェクターは、会議室に設置するものから、生活に潤いをもたらす家電へと進化を遂げつつある。最も大きな要素は単体で完結する動画視聴機能。そして、持ち運べるという可搬性だ。その波を捉えたメーカーがシェアを伸ばしている。画質の高さは必要だが十分ではない。「何ができるか」に購買の主要ポイントはシフトしつつある。この傾向はテレビでも同様だ。メモリーやストレージをはじめとした部材高に加え円安。メーカーにとっては厳しい状況が続く。しかし、きちんと新しい価値を提示できれば、伸びる要素がある。プロジェクター市場はその好例といっていいだろう。(BCN・道越一郎)
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プロジェクター市場は、2024年8月以降、販売が2桁で伸びた月は台数で12回、金額では16回と好調だ。逆に前年を下回った月は、台数が4回、金額は3回だけ。しかもマイナス幅は1桁と軽微だった。テレビに押されて苦戦を強いられているかと思いきや、実は非常に堅調。原動力は競争の激化だ。このところ勢力図に大きな変化が起きている。8月のメーカー別販売台数シェアは、首位がAnker(アンカー)で19.2%、17.3%と同率で2位だったのがAladdin X(アラジン・エックス)とXGIMI(エクスジミー)。エプソンは16.4%で4位に後退した。とはいえ、各社の差は小さい。長らく、トップをひた走るエプソンとその地位を脅かすAnkerという2強状態が続いていた。ここに、Aladdin XとXGIMIが加わり、4社で僅差のダンゴ状態に突入したわけだ。
首位Ankerのプロジェクターと言えば、何といっても「Nebula Capsule」シリーズ。従来のプロジェクターの概念を突き破った、茶筒のような円筒形。コンパクトな筐体にバッテリーを内蔵し、持ち運べるのも大きな特徴だ。さらに、Wi-Fiと内蔵スピーカーで、本体だけで動画視聴が完結する「スマートプロジェクター」の普及に大きく貢献したシリーズでもある。一番人気は、24年発売の「Nebula Capsule 3」。内蔵のGoogle TVでWi-Fiがあればすぐ動画コンテンツが楽しめる、というのは変わらない。フルHD(1920×1080)で200ルーメンと基本性能をしっかり押さえた。安価なエントリーモデル「Nebula Capsule Air」が登場した後も、同社で最も売れるプロジェクターとして売れ続けている。
2位のAladdin Xは、天井に設置するシーリングライト一体型のスマートプロジェクター「Aladdin X3」で知られている。前身は、シーリングライト型の元祖「popIn Aladdin」を開発、クラウドファンディングでヒットさせたpopIn。22年にXGIMI傘下に入った。同社の稼ぎ頭は「Aladdin Poca」だ。茶筒型本体は「Nebula Capsule」シリーズに似ているが、450ルーメンと明るく、投影方向を調整できる「足」がついているのが特徴。独自のAladdin OSを搭載し、アプリやコンテンツはオリジナル。8月現在の実売価格は「Nebula Capsule 3」とほぼ同じで、税抜きで5万円台前半だ。
同率2位のXGIMIは、前述の通りAladdin Xの親会社。13年創業の同社は「スマートプロジェクター」のパイオニアとも言われている。いち早くAndroid TVなどのOS、Wi-Fi、本格スピーカーを本体に一体化させた製品をリリース。家庭用プロジェクターでは大きな世界シェアを握っている。現在、最も売れているのは「HORIZON 20 Pro」だ。平均単価が20万円前後の高価な同社のフラグシップモデル。RGB3色レーザーエンジン搭載。4100ルーメンと非常に明るい。240Hz対応で本格ゲーミング用途にも耐える入力遅延1msというスペックも人気の秘密だ。また、茶筒型で3万円前後と安価な「Nova Cloud Ash」もラインアップ。幅広い製品構成でシェアを稼いでいる。
左からAnkerの「Nebula Capsule 3」、Aladdin Xの「Aladdin Poca」、
XGIMIの「HORIZON 20 Pro」(右上)、エプソンの「EB-W55」
一方、精彩を欠くのがエプソンだ。売れ筋は従来型のビジネスプロジェクター。最も売れている「EB-W55」は、4000ルーメンと明るく8万円前後と手ごろなのが特徴だ。しかし、単体で動画を楽しめるような機能はない。HORIZON 20 Proと似たコンセプトの「Lifestudio Flex EF-72」なども展開するが、売れ行きは芳しくない。同率2位のAladdin XとXGIMIが同系列のメーカーであることを考えれば、エプソンはXGIMI系メーカーにダブルスコアで負けてしまっている。エプソンが05年に、DVDプレーヤーとスピーカーを内蔵する一体型のプロジェクター、dreamio「EMP-TWD1」を大ヒットさせたのは記憶に新しい。ネット動画を1台で楽しめるという、現在の売れ筋製品と発想は極めて近い。新たなコンセプトの製品で再起を期待したい。
プロジェクターは、会議室に設置するものから、生活に潤いをもたらす家電へと進化を遂げつつある。最も大きな要素は単体で完結する動画視聴機能。そして、持ち運べるという可搬性だ。その波を捉えたメーカーがシェアを伸ばしている。画質の高さは必要だが十分ではない。「何ができるか」に購買の主要ポイントはシフトしつつある。この傾向はテレビでも同様だ。メモリーやストレージをはじめとした部材高に加え円安。メーカーにとっては厳しい状況が続く。しかし、きちんと新しい価値を提示できれば、伸びる要素がある。プロジェクター市場はその好例といっていいだろう。(BCN・道越一郎)
道越 一郎
Ichiro Michikoshi
古屋の手作り万年筆と天秤にかけ、選んだNECの文豪mini5HTでCP/Mを操りCompuServeで遊んでいたのが原点。以来、筋金入りのモバイラーとして活動すること40年。人生の師と仰いだジョアン・ジルベルト亡き後、回転しながら浮遊して生息する。近年は音の人を自称。
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外部リンク
Anker=https://www.ankerjapan.com/pages/projector
Aladdin X=https://www.aladdinx.jp/
XGIMI=https://jp.xgimi.com/
エプソン=https://www.epson.jp/products/projector/?fwlink=jptop_carousel_34
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