この人誰だっけ?を解決するイヤホンや脳を騙すふしぎな石ころで賑わった「CEATEC 2025」【道越一郎のカットエッジ】
人の顔と名前を覚えることができない。顔と名前の記憶領域がものすごく小さい、という感じだ。ほんのわずかな人しか覚えられない。顔はわかるが名前がついてこない。昔からだ。ちょっとした病気ではないかと思っている。一枚写真でも撮って名刺とともに保存しておけば、後から思い出せるのだが、毎度いちいち写真を撮るのも……と悩みは尽きない。
JVCケンウッドの
「カメラ付きAIイヤホン」
そんな私に朗報がもたらされた。JVCケンウッドの「カメラ付きAIイヤホン」だ。最先端技術の見本市「CEATEC 2025」で参考出品されていた。ちょっと見たところ、大ぶりな完全ワイヤレスイヤホン。カメラが内蔵されており、対面した相手の画像を登録データと照らし合わせ、船場吉兆の女将よろしく音声でこっそり誰かを教えてくれる、というものだ。すばらしい。初対面の時の顔写真のデータも自動取得できる。ずっとイヤホンを付けて過ごすのは煩わしいが、将来的に眼鏡のフレームに仕込めるようにでもなれば、実用性は大いに増すだろう。昨今AIが花盛りだが、ようやく実生活に役立つAIの応用事例が増え始めた感がある。
村田製作所のふしぎな石ころ「echorb」(左)とその内部。
一番手前で基盤から少しはみ出しているのがアクチュエーター
このほかの出展では、村田製作所のふしぎな石ころ「echorb」も面白かった。大阪万博にも出展していたものだ。手に持つと、特殊な振動によって、あたかも引っ張られたり左右に動かされたりする感覚が生まれる。また、耳を近づけると、スピーカーがついていないにもかかわらず、雨粒が落ちるような音を聴くこともできる。「3Dハプティクス技術」によるものだという。「振動で脳を錯覚させ「引っ張られるような『力覚』、堅さ・柔らかさという『圧覚』、触り心地につながる『触覚』を再現」する。錯覚を生じさせるのは「アクチュエーター」と呼ばれる振動素子。特にechorbに採用されたものは、2軸方向に振動するのが大きな特徴だ。これによって360度どの方向へも引っ張られるような感覚を生み出すことができる。今後は、ゲームやイベントへの利用、視覚障碍者の誘導などへの応用も目指しているという。
自転車に装着した太陽誘電の
「振動スピーカー」
アクチュエーターといえば、太陽誘電も積層電圧アクチュエーターを応用した「振動スピーカー」のプロトタイプを展示していた。ブースには自転車が1台置かれ、音楽が流れている。しかしどこから音がしているのかイマイチわからない。よくよく見ると、後輪近くのフレームに小さなユニットが装着されていて、その振動がフレーム全体に伝わり、自転車そのものから音が出るようになっていた。以前から、テーブルに置いてテーブル全体をスピーカーにするような製品はあったが、それよりも小型で音がクリア。かなり大きな音も出せるようになっている。災害時に自転車に乗って近隣の人たちに避難を呼びかける時などにも応用できそうだ。
鹿島建設のスピーカー
「OPSODIS 1」体験コーナー
以前この【カットエッジ】でも取り上げた3D音響を実現する鹿島建設のスピーカー「OPSODIS 1」も出展していた。バイノーラル技術を応用したスピーカーだ。通常、ヘッドホンでしか得られないバイノーラル効果を、スピーカーでも実現したところが画期的な製品。クラウドファンディングで9億円を集めたことでも話題を呼んだ。実際に試聴してみると、目の前にある小さなスピーカーから上下前後左右と、あらゆる方向から音がするように聞こえる。体験コーナーでは、開発に携わった鹿島建設 立体音響プロジェクトチームの村松繁紀 事業推進統括部長が直々に説明。体験希望者が列をなしていた。3D音響を実現するエンジンとして、アナログ・デバイセズのDSP(Digital Signal Processor)が採用されていることから、OPSODIS 1は同社ブースで出展されていた。また【対談連載 千人回峰】でも取り上げたミューシグナルも出展。クラウドファンディングで1億円以上を集め、この9月に出荷開始したばかりのスタンドアロンのDJマシーン「FJ1」がメインだ。当初の24年10月出荷予定からは1年弱遅れてしまったが、無事にやり切った。ハードウェアの性能が前作「GO-DJ Plus」よりも格段にアップし、リナックスベースに変更したことで、ソフトウェア面でだいぶ苦労したという。
ミューシグナルのスタンドアロンDJマシン
「FJ1」
CEATECは2016年、脱・家電見本市を宣言。以降、より幅広いテクノロジーの見本市として開催してきた。10月14~17日の4日間、千葉市の幕張メッセで開催した今回のテーマは「Innovation for All」。最先端のテックがコンパクトに詰め込まれたイベントになり、ようやく新たな形に収れんしてきたように思えた。次回のCEATEC2026は10月13~16日、同じく幕張メッセで開催される。今度はどんな最新テックを体験できるか、今から楽しみだ。(BCN・道越一郎)
「カメラ付きAIイヤホン」
そんな私に朗報がもたらされた。JVCケンウッドの「カメラ付きAIイヤホン」だ。最先端技術の見本市「CEATEC 2025」で参考出品されていた。ちょっと見たところ、大ぶりな完全ワイヤレスイヤホン。カメラが内蔵されており、対面した相手の画像を登録データと照らし合わせ、船場吉兆の女将よろしく音声でこっそり誰かを教えてくれる、というものだ。すばらしい。初対面の時の顔写真のデータも自動取得できる。ずっとイヤホンを付けて過ごすのは煩わしいが、将来的に眼鏡のフレームに仕込めるようにでもなれば、実用性は大いに増すだろう。昨今AIが花盛りだが、ようやく実生活に役立つAIの応用事例が増え始めた感がある。
一番手前で基盤から少しはみ出しているのがアクチュエーター
このほかの出展では、村田製作所のふしぎな石ころ「echorb」も面白かった。大阪万博にも出展していたものだ。手に持つと、特殊な振動によって、あたかも引っ張られたり左右に動かされたりする感覚が生まれる。また、耳を近づけると、スピーカーがついていないにもかかわらず、雨粒が落ちるような音を聴くこともできる。「3Dハプティクス技術」によるものだという。「振動で脳を錯覚させ「引っ張られるような『力覚』、堅さ・柔らかさという『圧覚』、触り心地につながる『触覚』を再現」する。錯覚を生じさせるのは「アクチュエーター」と呼ばれる振動素子。特にechorbに採用されたものは、2軸方向に振動するのが大きな特徴だ。これによって360度どの方向へも引っ張られるような感覚を生み出すことができる。今後は、ゲームやイベントへの利用、視覚障碍者の誘導などへの応用も目指しているという。
「振動スピーカー」
アクチュエーターといえば、太陽誘電も積層電圧アクチュエーターを応用した「振動スピーカー」のプロトタイプを展示していた。ブースには自転車が1台置かれ、音楽が流れている。しかしどこから音がしているのかイマイチわからない。よくよく見ると、後輪近くのフレームに小さなユニットが装着されていて、その振動がフレーム全体に伝わり、自転車そのものから音が出るようになっていた。以前から、テーブルに置いてテーブル全体をスピーカーにするような製品はあったが、それよりも小型で音がクリア。かなり大きな音も出せるようになっている。災害時に自転車に乗って近隣の人たちに避難を呼びかける時などにも応用できそうだ。
「OPSODIS 1」体験コーナー
以前この【カットエッジ】でも取り上げた3D音響を実現する鹿島建設のスピーカー「OPSODIS 1」も出展していた。バイノーラル技術を応用したスピーカーだ。通常、ヘッドホンでしか得られないバイノーラル効果を、スピーカーでも実現したところが画期的な製品。クラウドファンディングで9億円を集めたことでも話題を呼んだ。実際に試聴してみると、目の前にある小さなスピーカーから上下前後左右と、あらゆる方向から音がするように聞こえる。体験コーナーでは、開発に携わった鹿島建設 立体音響プロジェクトチームの村松繁紀 事業推進統括部長が直々に説明。体験希望者が列をなしていた。3D音響を実現するエンジンとして、アナログ・デバイセズのDSP(Digital Signal Processor)が採用されていることから、OPSODIS 1は同社ブースで出展されていた。また【対談連載 千人回峰】でも取り上げたミューシグナルも出展。クラウドファンディングで1億円以上を集め、この9月に出荷開始したばかりのスタンドアロンのDJマシーン「FJ1」がメインだ。当初の24年10月出荷予定からは1年弱遅れてしまったが、無事にやり切った。ハードウェアの性能が前作「GO-DJ Plus」よりも格段にアップし、リナックスベースに変更したことで、ソフトウェア面でだいぶ苦労したという。
「FJ1」
CEATECは2016年、脱・家電見本市を宣言。以降、より幅広いテクノロジーの見本市として開催してきた。10月14~17日の4日間、千葉市の幕張メッセで開催した今回のテーマは「Innovation for All」。最先端のテックがコンパクトに詰め込まれたイベントになり、ようやく新たな形に収れんしてきたように思えた。次回のCEATEC2026は10月13~16日、同じく幕張メッセで開催される。今度はどんな最新テックを体験できるか、今から楽しみだ。(BCN・道越一郎)





