JIMA(インターネットメディア協会)は6月8日、「インターネットメディアへの信頼性・多様性・創造性の確保に向けた今後の課題と可能性について」と題したシンポジウムを都内で開催した。4月16日にJIMAを設立したのを記念して開いたもので、およそ300人が来場した。

インターネットメディアで社会に貢献したいという思いからJIMAを立ち上げたと話す
JIMAの瀬尾傑 代表理事

 冒頭、あいさつ立ったスマートニュースメディア研究所の所長でJIMAの瀬尾傑 代表理事は「インターネットメディアで社会に貢献したいという思いから立ち上げたのがJIMA。横並びの業界団体ではなく、ニュースアプリやニュースメディアなど多様な媒体企業が集まって議論する場だ。大切にしたいのは信頼できる情報を届けることと創造性が発揮できる多様な言論空間を保つこと。同時にヘイトの言論やフェイクニュースなどの問題に対する答えも探していきたい」と話した。
 
「メディアの創造性と信頼を得るためにいま成すべきこと」と題したパネルディスカッション。
左からモデレータを務めた東洋経済オンラインの武政秀明 編集長、ジェイ・キャストの蜷川聡子 執行役員、
BuzzFeed Japanの古田大輔 シニアフェロー、翔泳社MarkeZineの安成蓉子 編集長、
JX通信社の米重克洋 代表取締役、NHK報道局ネットワーク報道部の熊田安伸 専任部長


 第1部のパネルディスカッションでは「メディアの創造性と信頼を得るためにいま成すべきこと」と題し、インターネットメディアに関わっている6人のキーパーソンが登場。モデレータに東洋経済オンラインの武政秀明 編集長を迎え、パネラーとしてジェイ・キャストの蜷川聡子 執行役員、BuzzFeed Japanの古田大輔 シニアフェロー、翔泳社MarkeZineの安成蓉子 編集長、JX通信社の米重克洋 代表取締役、NHK報道局ネットワーク報道部の熊田安伸 専任部長が参加し活発な議論を戦わせた。
 
なぜ信頼に足る情報を発信していると言えるかを、説明する必要があると話す
BuzzFeed Japanの古田大輔 シニアフェロー

 最初のテーマは「信頼されるメディア運営とは?」。口火を切ったのはBuzzFeed Japanの古田大輔 シニアフェロー。「信頼されるには、ユーザーに対して誠実な情報を発信することが大切。しかしそれだけでは不十分。なぜ信頼に足る情報を発信していると言えるかを説明する必要もある。またテクノロジーを使ってデータによって信頼性を裏打ちすることもできる」と話す。翔泳社MarkeZineの安成蓉子 編集長は「メディアそのもののビジネスがきちんとできていてこそ、信頼性が追求できる。しっかり広告モデルを回していくことも重要」と指摘する。またJX通信社の米重克洋 代表取締役は「例えば既存のメディアの選挙報道ですら情勢調査をしないのに、情勢報道を行うメディアが出始めており不安を覚える。コストを減らしながら質を維持する仕組みを考えなければならない」と話した。
 
メディアそのもののビジネスがきちんとできていてこそ、信頼性が追究できると話す
翔泳社MarkeZineの安成蓉子 編集長

 次のテーマは「表現の自由と規範をどう支えるか?」。古田氏は「表現の自由はメディアにとってとても重要。JIMAはメディアを取り締まる警察のようなことはしない。とはいえ、どんな心構えでどんな情報発信が望ましいのかを話し合うことは重要」と話す。「生活者としてネットの記事を見ていると、釣りタイトルのようなものが散見され、PV(ページビュー)至上主義が見え隠れする」(安成氏)との指摘も。これを受けてNHK報道局ネットワーク報道部の熊田安伸 専任部長は「どれだけPVを眺めていても信頼は高まらない。読者の役に立つメディアという考え方が重要だ」と話した。また、ジェイ・キャストの蜷川聡子 執行役員は「記事内容の元データのリンクを張ってほしいとよく言われる。読者に確認してもらえるようにするのがいい」と話した。米重 代表取締役は「1億総カメラマンという時代。ネットで話題になることで、それが報道につながるというケースも増え、結果として世論が見えるようになる」と、ネット時代ならではの報道のあり方を示した。
 
PVだけを求めてはならないが、読まれないものは影響力がないと話すジェイ・キャストの
蜷川聡子 執行役員

 最後のテーマは「メディア経営をどう考えればいいか?」。モデレータを務める東洋経済オンラインの武政秀明 編集長が「インターネットメディアである以上、PVをとらなければならないという面はある。しかし、そればかりを見てしまうと、特定の何かに偏って良くない物を作ってしまいかねない」と問題を提起。これに対し「確かにPVだけを求めてはならない。しかし、読まれないものは影響力がない。中身やインターフェースを工夫することで読まれる努力を怠ってはいけない」(蜷川氏)との意見もあった。また安成氏は「いいコンテンツを作っていれば自然にたくさんの人に読まれるという時代は終わった。情報を届ける仕組みまで考えた上でコンテンツづくりに取り組まなければならない」と話した。熊田氏は「西日本新聞がスタートしたオンデマンド調査報道には期待している。読者に『知りたいこと』を募り、全国のブロック紙が手を組んで、各紙で取材して報じるという試み。これから期待できる新しい動きだ」として、報道での共助の新しい形を示した。
 
情報の受け手に対してもメディアリテラシー教育の普及が急務だと訴える、
元TBS・報道番組キャスターで令和メディア研究所の下村健一 主宰

 第2部はメディアリテラシー講座として「情報に踊らされない為の4つの<ハテナ>──ネット上の『情報のキャッチボール』を支える、伝え手と受け手が身につけたい具体的メソッド」と題し、元TBS・報道番組キャスターで令和メディア研究所の下村健一 主宰が講演した。インターネットでの情報発信コストが急速に下がるにつれ、情報発信主体も爆発的に増えている。しかしそれら全てがきちんと情報を発信している主体ばかりではない。そのような状態を下村 主宰は「フェイクニュースのパンデミック(爆発的感染)」の危機が迫っていると話す。この危機を乗り越えるために、ジャーナリズム側でもファクトチェック体制を整える必要があるとしながらも、情報の受け手に対しての「メディアリテラシー教育」の普及も急務だと訴えた。下村氏は教育の例として、普段中学生対象に行っているメディアリテラシー授業を来場者向けに抜粋して紹介。情報をしっかり受け取るために「結論を即断するな」「意見・印象を鵜呑みするな」「1つの見方に偏るな」「スポットライトの中だけ見るな」と4つのポイントを示し、それぞれ例を挙げながら丁寧に説明した。(BCN・道越一郎)
 
シンポジウム会場にはおよそ300人が来場した

<JIMA(インターネットメディア協会)・正会員(2019年4月16日現在)>
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