三菱の517L冷蔵庫、「1機種入魂」で省エネNo.1達成の技術とは

新製品

2017/07/20 16:18

 三菱電機は7月19日、冷蔵庫「置けるスマート大容量」シリーズの新製品発表会を開催した。8月30日から順次発売する3シリーズ8機種のうち、注目機種は、年間消費電力量250kWhで省エネNo.1を達成した517Lの「MR-WX52C」だ。


定格内容量501L以上で省エネNo.1を実現した「置けるスマート大容量 MR-WX52C」

 同じ容量の前機種「MR-WX52A」の年間消費電力量は270kWhだったので、省エネ性能は約8%向上した。同社の鈴木聡静岡製作所長は「女性の社会進出や共働き世帯が増加し、まとめ買いをする世帯が増えたことで、冷蔵庫の大容量化が進んだ。(台数構成比で)30%強が451L以上の冷蔵庫を購入している」と語るように、ライフスタイルの変化から大容量の冷蔵庫を求めるユーザーが増えている。
 

三菱電機の鈴木聡静岡製作所長

 一方で、マンションなどの集合住宅では冷蔵庫を設置する際の幅が限られる。三菱の冷蔵庫でも幅650mmに限ってみると、最も大容量なのが517Lの「MR-WX52C」となる。それが省エネNo.1なのだから、人気モデルになる可能性は高い。まさに、省エネNo.1の獲得を狙いすましたかのような戦略が浮き彫りになる。

省エネ性能向上の要の3つの技術

 省エネNo.1を獲得した背景には技術面で3つの改良があった。「高性能真空断熱材」と「高効率冷却ユニット」の採用、そして「NEW MICLOSS(ニューミクロス、NEW Mitsubishi Cycle Loss Saving System)」の3つだ。まず真空断熱材では、断熱材の素材であるガラス繊維の直径の太さと配置の最適化を図った。

 ガラス繊維の直径を細くして密着させれば断熱性能は高まりそうだが、そうすると真空の空間が確保できなくなるため、かえって断熱効果は下がるという。あくまでも、ガラス繊維の直径と配置を最適にすることが重要なポイントのようだ。真空断熱材の表面を熱して40℃に達するまでの時間を測定する実験では、従来品が4.1時間だったのに対し、高性能真空断熱材は5.2時間。温度が上昇するまで約1時間遅らせることに成功した。
 

高性能真空断熱材の性能向上

 高効率冷却ユニットでは、庫内に冷気を循環させる冷却器の両脇に、「エアガイド」という蓋のようなものを搭載した。庫内から戻ってきた「戻り冷気」が冷却器の両脇から漏れないようになり、また「戻り冷気」が冷却器の中央を通過するようになるため、冷却ロスを抑制しつつ、冷却能力を高める効果が生まれた。
 

高効率冷却ユニットの両脇に「エアガイド」を採用。「戻り冷気」が中央部を通るようにして冷却能力を高めた

 「NEW MICLOSS」は「MR-WX52C」と600Lの「MR-WX60C」だけに搭載した省エネ技術だ。冷蔵庫の冷凍サイクルに制御弁を新たに設け、圧縮機側の高圧高温と冷却器側の低圧低温の圧力差を、圧縮機が停止中でも、稼働中と同等に維持できるようにして電力ロスを削減した。

 従来は制御弁がなかったため、圧縮機が停止すると冷媒が冷却器側に流れてしまい圧力差がない状態に戻ってしまう。そのため、庫内を冷やすために圧縮機を稼働して再度、高圧と低圧の状態に戻すための無駄な電力ロスが発生していたのだ。
 

「NEW MICLOSS」による制御弁で圧縮機が停止中でも高圧と低圧の圧力差を維持

 さらに「NEW MICLOSS」では、冷蔵室、製氷室、瞬冷凍室、野菜室の4つの庫内に温度の変化をきめ細かく検知できるセンサを搭載。従来よりも庫内を流れる風量をこまめに調整できるようにし、無駄な冷やしすぎを抑制できるようにした。これら3つの技術によって、MR-WX52Cは省エネ性能No.1を達成した。
 

「NEW MICLOSS」による温度変化を細かく検知

 価格はすべてオープン。8月30日に発売する、6ドアセンター開きで、ドア材がガラスの「WXシリーズ」の実勢価格は、700Lの「MR-WX70C」が43万円前後、600Lの「MR-WX60C」が38万円前後、517Lの「MR-WX52C」が34万円前後の見込み。470Lで、幅650mmの「MR-WX47C」は33万円前後、699mmの「MR-WX47LC」はともに33万円前後の見込み。

 9月30日に発売する、6ドアセンター開きでドア材が鋼板の「JXシリーズ」は、600Lの「MR-JX60C」が34万円前後、517Lの「MR-JX52C」が32万円前後、5ドア片開きでドア材がガラスの「Bシリーズ」は、455Lの「MR-B46C」が27万円前後の見込み。(BCN・細田 立圭志)