日本で最も売れたスマートフォンは「iPhone 5」 歴代最速の販売ペース

特集

2013/08/06 19:18

 6月2日、アップルスマートフォンiPhone 5」は前機種「iPhone 4S」の累計販売台数を抜き、「日本で一番売れたスマートフォン」の称号を継承した。2012年9月21日の発売から8か月強で「iPhone 4S」を超える歴代最速の販売ペースだ。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」のデータをもとに、これまでの歩みを簡単に振り返りつつ、取り扱いキャリアが増えた「iPhone 4S」以降の販売動向をまとめた。なお、【後編】では、およそ6対4の比率で売れている、ソフトバンクモバイル・auそれぞれのシェア獲得のための取り組み・強みについて考察する。


日本のケータイ業界とインターネットを変えたiPhone



 「BCNランキング」によると、携帯電話の年間販売台数に占めるスマートフォンの割合は、2009年8.0%、10年20.5%、11年52.7%、12年74.0%と、10年から11年、12年にかけて上昇し、今年上半期(1~6月)は80.0%に達した。店頭では、10年夏あたりから、スマートフォン中心の陳列に切り替わった。

 2008年7月11日に、国内初代モデルiPhone 3G」が発売されてから、わずか5年で携帯電話とインターネットを取り巻く環境は一変した。スマートフォンは、iPadなどのタブレット端末とともに、インターネットにアクセスするツールとして、これまでパソコンが担っていたポジションを奪いつつある。メールやオンラインストレージ動画・音楽配信などのインターネットサービスは、「クラウド」と「マルチデバイス」がキーワードになった。こうした変化は、「黒船」にたとえられたiPhoneの日本上陸をきっかけに生まれたものだ。

LTE対応の最新モデル「iPhone 5」は歴代最速・最高の売れ行き



 いまも続くiPhone人気の火つけ役となったのは、10年6月発売の「iPhone 4」だろう。モデルチェンジまで1年半以上にわたって売れ続け、スマートフォンの普及をけん引した。デザインはそのままに性能を強化した「iPhone 4S」を経て、フルモデルチェンジした現行の「iPhone 5」は、横幅は従来と同じで画面サイズを4インチに大型化し、デザインを一新。片手操作や、アップルの美学ともいえる薄さ・軽さにこだわりながら、高速通信のLTE・テザリングに対応し、より使いやすくなった。発売直後は予約が殺到し、発売から2か月ほど経った11月中旬まで、予約してもなかなか入手できない品薄状態が続いた。


 品薄が解消した後も売れ続け、今年3月は、おもに「学割」キャンペーンの効果で、12年11月に次ぐ販売台数を売り上げた。iPhoneの好調な売れ行きは、基本使用料無料や端末代の値引きなど、おトク感の高いキャンペーンを次々と打ち出すキャリアが支えているともいえる。

 2010年6月以降の携帯電話の累計販売台数を集計すると、1位は「iPhone 5」、2位は「iPhone 4S」、3位は「iPhone 4」となり、トップ3はiPhoneシリーズが独占した。販売台数シェアは合わせて19.5%に達し、過去3年間に売れた携帯電話のうち、およそ5台に1台がiPhoneということになる。

2010年6月~2013年7月累計
携帯電話 販売台数トップ10
順位 メーカー 製品名 キャリア タイプ 発売月 販売台数シェア(%)
1 アップル iPhone 5 SoftBank、au スマートフォン 2012/09 7.8
2 アップル iPhone 4S SoftBank、au スマートフォン 2011/10 6.7
3 アップル iPhone 4 SoftBank スマートフォン 2010/06 4.9
4 パナソニック モバイル
コミュニケーションズ
P-07B NTTドコモ 携帯電話 2010/09 1.5
5 ソニーモバイル
コミュニケーションズ
Xperia acro HD SO-03D NTTドコモ スマートフォン 2012/03 1.3
6 富士通 らくらくホン ベーシック3
(F-08C)
NTTドコモ 携帯電話 2011/04 1.2
7 SAMSUNG GALAXY S SC-02B NTTドコモ スマートフォン 2010/10 1.1
8 SAMSUNG GALAXY S II SC-02C NTTドコモ スマートフォン 2011/06 1.1
9 ZTE みまもりケータイ2 101Z SoftBank 携帯電話 2012/04 1.0
10 ソニーモバイル
コミュニケーションズ
Xperia acro SO-02C NTTドコモ スマートフォン 2011/07 0.9
「BCNランキング」 月次合算<最大パネル>

キャリア別ではソフトバンクが優勢、6割弱を占める



 iPhoneは、現在、ソフトバンクモバイルとKDDI(au)が販売している。発売当初はソフトバンクモバイルだけだったが、11年10月発売の「iPhone 4S」からauも取り扱うようになった。2キャリアが販売する「iPhone 4S/5」の13年7月までの累計でのキャリア別販売台数シェアは、ソフトバンクモバイルが56.7%、auが43.3%。比率はほぼ6対4で、10ポイント以上の差をつけてソフトバンクモバイルが優勢だ。


 ソフトバンクモバイルが6割弱のシェアを獲得している要因として、auでは実施していない機種変更向けキャンペーンによる既存ユーザーのつなぎ止めや、CMなどでアピールしている「つながりやすさ」の改善がありそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

→【後編】に続く(2013年8月9日掲載)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。