スマートフォンの伸びがやや鈍化、春商戦ピークの3月はどうなる?

特集

2013/03/16 12:30

 家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2013年2月のスマートフォンの販売台数は、集計開始以来、初の前年割れとなった1月に続き、2か月連続で前年を下回った。ただし前年割れとはいっても、1月は前年同月比97.0%、2月は96.6%。新製品の発売時期のズレを考慮すると、ほぼ前年並みといっていいだろう。3月は、3分の1が過ぎた12日までの累計で前年同期比104.4%と、スマートフォンの販売台数が過去最大を記録した昨年3月を若干上回るペースで推移している。例年、ピークは3月中旬~下旬なので、最終的にはまだわからない。1月と2月は、お目あての機種の発売や値下げ、より有利なキャンペーンなどを期待して購入を見送った人が多かったようだ。


「iPhone 5」と「Xperia Z SO-02E」に人気集中 2機種だけでシェア34.3%



 1月末にスタートし、2月から本格化した今年の春商戦。各キャリアは、例年以上に学生・子どもとその家族を対象とした「学割」キャンペーンに力を入れているようにみえる。そんな2月の携帯電話全体の販売台数1位は、2月9日発売のドコモのAndroid搭載スマートフォン「Xperia Z SO-02E」だった。約5.0インチのフルHDディスプレイを搭載し、クアッドコアCPU、有効約1310万画素のカメラ、防水・防塵など、最先端の技術を結集した「Xperia」の新モデルだ。2~4位には、ソフトバンクモバイルとauの「iPhone 5」の16GBモデル、32GBモデルが交互に並んだ。

2013年2月 携帯電話
販売台数ランキング<全キャリア合算>
順位 キャリア メーカー 品名 型番 販売台数
シェア(%)
発売年月
1 NTTドコモ
ソニーモバイル
コミュニケーションズ
Xperia Z SO-02E 11.3 2013/02
2 SoftBank アップル iPhone 5 16GB(SoftBank) 同左 6.1 2012/09
3 au アップル iPhone 5 16GB(au) 同左 5.9 2012/09
4 SoftBank アップル iPhone 5 32GB(SoftBank) 同左 4.7 2012/09
5 au アップル iPhone 5 32GB(au) 同左 4.0 2012/09
6 NTTドコモ パナソニック モバイル
コミュニケーションズ
P-01E P-01E 3.0 2012/11
7 NTTドコモ
シャープ AQUOS PHONE EX SH-04E 2.9 2013/01
8 NTTドコモ Huawei Technologies キッズケータイ HW-01D 2.6 2012/09
9 NTTドコモ シャープ AQUOS PHONE ZETA SH-02E SH-02E 2.5 2012/11
10 SoftBank ZTE みまもりケータイ2 101Z 2.5 2012/04
「BCNランキング」2013年2月 月次<最大パネル>

 通常は、キャリア・容量ごとにカウントしている「iPhone 5」をキャリアごとに合算すると、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」(12.1%)、ドコモの「Xperia Z SO-02E」(11.3%)、auの「iPhone 5」(10.8%)の順だった。2キャリア販売分を合算すると、「iPhone 5」は、発売以来、これで6か月連続トップとなる。しかし2月のトピックスとしては、発売日を含む2月第1週(2013年2月4~10日)から3月第1週(3月4~10日)まで、5週連続1位を獲得している「Xperia Z SO-02E」の躍進と、それに伴うスマートフォンの画面サイズの大型化を挙げたい。

5.0インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載した「Xperia Z SO-02E」


 2月に掲載した<2013年1月の携帯電話ランキング、トップの「iPhone 5」に迫る”大画面”の足音>同様、スマートフォンに限って画面サイズ帯別販売台数構成比を集計すると、1月は6.1%に過ぎなかった「5インチ以上」の構成比は、「Xperia Z SO-02E」が売れた影響で2月は23.5%に急上昇した。多くのメーカーが手がけるAndroid搭載スマートフォンでは、今年は「大画面」と「フルHD」がトレンドになりそうだ。



ドコモの隠れたヒット端末、「P-01E」「AQUOS PHONE EX SH-04E」



 続いて、主要3キャリア、ドコモ・au・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、「iPhone 5/4S」については、最初から容量を合算して1機種としてカウントしている。

2013年2月 携帯電話
キャリア別 販売台数ランキング<NTTドコモ>
順位 メーカー 品名 型番 メインカメラの有効画素数(万画素) 販売台数
シェア(%)
発売年月
1 ソニーモバイル
コミュニケーションズ
Xperia Z SO-02E 1310 23.8 2013/02
2 パナソニック
モバイルコミュニケーションズ
P-01E P-01E 510 6.2 2012/11
3 シャープ AQUOS PHONE EX SH-04E 1310 6.1 2013/01
4 Huawei Technologies キッズケータイ HW-01D - 5.4 2012/09
5 シャープ AQUOS PHONE ZETA SH-02E SH-02E 1630 5.3 2012/11
6 ソニーモバイルコミュニケーションズ Xperia AX SO-01E 1300 4.5 2012/11
7 パナソニック モバイルコミュニケーションズ ELUGA X P-02E 1320 4.1 2013/01
8 SAMSUNG GALAXY S III α SC-03E 810 3.8 2012/12
9 NECカシオモバイルコミュニケーションズ Disney mobile on docomo N-03E N-03E 1310 3.7 2012/12
10 シャープ SH-03E SH-03E 500 3.4 2012/12
「BCNランキング」2013年2月 月次<最大パネル>

 春モデルの発売を受けて、どのキャリアも順位に動きがあった。特に顕著だったのはドコモ。シェア23.8%でダントツのトップの「Xperia Z SO-02E」に続き、2位には、iモード対応ケータイ「P-01E」が入った。機種変更でも2万円以下(ドコモオンラインショップ価格)と安く、従来型携帯電話を求める層に人気のようだ。前月1位だった「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」は5位にダウンしたものの、本体下部にイルミネーションを採用するなど、主に女性をターゲットにした同じシャープ製の春モデル「AQUOS PHONE EX SH-04E」が3位につけている。

2013年2月 携帯電話
キャリア別 販売台数ランキング<au>

※「iPhone 5/4S」は容量の異なるモデルを合算
順位 メーカー 品名 型番 メインカメラの有効画素数(万画素) 販売台数
シェア(%)
発売年月
1 アップル iPhone 5 (au) - 800 37.7 2012/09
2 HTC HTC J butterfly HTL21 800 6.9 2012/12
3 ソニーモバイルコミュニケーションズ Xperia VL SOL21 1300 4.4 2012/11
4 ソニーモバイルコミュニケーションズ Xperia acro HD IS12S IS12S 1210 3.8 2012/03
5 京セラ DIGNO S KYL21 808 3.7 2012/11
6 京セラ K011 K011 808 3.4 2012/06
7 シャープ AQUOS PHONE SERIE SHL21 SHL21 1312 3.2 2012/11
8 京セラ 簡単ケータイ K012 K012 515 3.0 2012/05
9 Pantech Wireless Japan PT003 PT003 511 2.9 2012/09
10 京セラ URBANO PROGRESSO ISW12K 808 2.8 2012/05

2013年2月 携帯電話
キャリア別 販売台数ランキング<SoftBank>

※「iPhone 5/4S」は容量の異なるモデルを合算
順位 メーカー 品名 型番 メインカメラの有効画素数(万画素) 販売台数
シェア(%)
発売年月
1 アップル iPhone 5 (SoftBank) - 800 52.3 2012/09
2 ZTE みまもりケータイ2 101Z - 10.7 2012/04
3 シャープ PANTONE WATERPROOF 202SH 320 5.2 2013/01
4 シャープ PANTONE 6 200SH 1310 4.8 2012/12
5 アップル iPhone 4S(SoftBank) - 800 4.7 2011/10
6 シャープ かんたん携帯 108SH 108SH 320 3.1 2012/07
7 パナソニック モバイルコミュニケーションズ COLOR LIFE 3 103P 510 2.6 2012/07
8 富士通モバイルコミュニケーションズ ARROWS A 201F 1300 2.1 2013/02
9 シャープ FULLFACE 913SH 913SH 200 1.9 2007/07
10 富士通モバイルコミュニケーションズ ARROWS A 101F 1310 1.8 2012/07
「BCNランキング」2013年2月 月次<最大パネル>

 auとソフトバンクモバイルは、前月までと同様、「iPhone 5」が2位以下を大きく引き離してトップだった。au唯一の春モデル「INFOBAR A02」は、13位と滑り出しはやや低調。一方、ソフトバンクモバイルは、春モデルのうち、3位に全8色のカラフルな携帯電話「PANTONE WATERPROOF SoftBank 202SH」、8位に「ARROWS A SoftBank 201F」が入った。3月8日発売の「AQUOS PHONE Xx SoftBank 203SH」も、今後上位に食い込みそうだ。

テザリング対応スマートフォンは固定インターネットの代わりにはならない



 昨年秋以降に発売されたスマートフォンは、ほぼすべてが下り最大75Mbps以上の高速データ通信サービス――ドコモは「Xi(クロッシィ)」、auは「4G LTE」、ソフトバンクモバイルは「SoftBank 4G/4G LTE」、イー・モバイルは「EMOBILE LTE」――と、スマートフォンをモバイルWi-Fiルータ代わりに使える「テザリング」に対応している。この「テザリング」に魅力を感じる人も多いだろう。

 各キャリアとも、7GB/月など、利用データ量が契約内容の上限を超えた場合、通信速度を当月末まで128kbpsに制限する仕組みを導入している(ソフトバンクモバイルは「テザリングオプション」未加入で「4G LTE定額プログラム」適用の場合は適用外)。速度制限の解除には申込みが必要で、上限超過後、2GBごとに料金がかかる。「Xperia Z SO-02E」をはじめとした最新スマートフォンは、従来の3G対応スマートフォンとは異なり、上限なしの「使い放題」ではないので注意しよう。

 最近、雑誌やウェブサイトなどで、「通信費を節約するには、光ファイバー(FTTH)やADSLなどの固定インターネット回線を解約し、モバイルWi-Fiルータかテザリング対応スマートフォンに一本化すること」というアドバイスを頻繁に見かけるが、速度制限が適用される可能性があるので、データ利用量の多いヘビーユーザーにはお勧めできない。スマートフォンのテザリング機能はあくまでも補助的なもの。自宅のパソコンでも頻繁にインターネットを利用するつもりなら、回線の一本化はあきらめ、別途FTTHなどの固定インターネットサービスを導入するか、パソコン接続専用のモバイルWi-Fiルータとスマートフォンを併用したほうがいい。たとえテザリングを使わなくても、うっかり大容量の動画などを見て速度制限されないよう、使い方に気をつけたい。(BCN・嵯峨野 芙美)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

※通信速度制限の詳細については、各キャリアのウェブサイトをご覧ください(一定期間に大量の通信を行った場合、通信速度が制限される場合があります)。