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<インタビュー・時の人>グレースノート 代表取締役社長 ブライアン・ハミルトン

特集

2012/02/15 10:40

 音楽CDの楽曲に関する情報を関連製品に提供するデータベース「CDDB」を手がけ、家電製品や音楽配信サービス、モバイルアプリなどに技術を提供してきたグレースノート。コンテンツのデジタル化が進むなか、「CDDB」を採用してビジネスを手がけるベンダーが、映像と連動させるといった新しい音楽関連サービスを提供できるような環境の整備に取り組む。日本に新しいコンテンツの文化を広めるブライアン・ハミルトン社長に話を聞いた。

◎プロフィール
(Brian Hamilton)1969年9月29日生まれ。北アイルランド・ベルファスト出身。89年6月、英ウォレス高校を卒業し、ライフスタイルスポーツ&レジャーに入社。92年6月、香港にあるパインテクノロジーに入社し、国際営業部長を務める。00年10月、米グレースノートに入社し、コンシューマ・エレクトロニクス営業担当バイスプレジデントに就任。10年10月、グレースノート代表取締役社長に就任。現在に至る。

新しいコンテンツ文化を広める
映像連動など音楽データの価値を高める



Q. 米グレースノートは、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカの完全子会社だが、グループ色を出さずにビジネスを手がけている。日本法人が抱える顧客は?

A.
 現段階で、親会社のソニーが大きな顧客であることは間違いではないが、大手家電メーカーなど、ソニーの競合も確保し、キャリアやコンテンツ事業者とパートナーシップも組んでいる。また、日本音楽著作権協会などの業界団体ともいい関係を築いている。 


Q. 現在、力を注いでいる分野は?

A.
 当社は「CDDB」を武器にビジネスを手がけてきたが、今は領域が広がっている。音楽の情報だけでなく、映画など動画の情報もカバーしなければならない。曲名やアーチスト名などの情報を提供するだけでなく、その曲が使われている映画など付加情報を提供できる環境も整備する必要がある。エンタテインメント全体を網羅した会社となることが重要だ。

Q. その立ち位置を確保するためには、何が課題になるのか。

A.
 100%というわけではないが、エンタテインメントを網羅する技術はもっている。ただ、いかに日本で広めていくかがポイントだ。その意味では、課題というよりもチャレンジといった表現が適しているが、日本はコンテンツサービスに関して他国より保守的といえる。これは、技術的な問題というよりも、業界の商慣習や法制度が影響している。一方、コンシューマユーザーが求めるコンテンツサービスを提供するには、「コンテンツ」や「家電」といった業界の枠を超えて取り組んでいかなければならない時代に突入している。さまざまな業界の足並みを揃え、各業界を一つにまとめるバリューチェーンの構築が必要だ。

Q. それを構築できるのか。

A.
 今すぐに実現できるとはいえないが、当社は各業界に接点があるというユニークなポジションにある。日本に根づいた伝統的な文化と、デジタル時代に即した新しい文化。この二つのバランスを取りながら、バリューチェーンを構築していきたい。

Q. 難しいようにも感じるが……。

A.
 デジタル化が進んでいるなかで、日本に限らず、今は「こうあるべきだ」といった答えがない過渡期ではないだろうか。モバイル端末でいえば、携帯電話からスマートフォンへと変わりつつあり、コンシューマユーザーは、いつでも、どこでもコンテンツを楽しむことができるようになった。「トランスフォーム・メディア・エクスペリエンス(メディア体験の変革)」を果たす会社として、日本でコンテンツサービスの新しい流れをつくることに寄与していきたい。

・Turning Point

 20年前、香港への長期旅行中に旅費が底をついた。資金稼ぎで入社したのがパインテクノロジー。ところが「仕事が楽しくて旅行をやめた」。これが最初のターニングポイントだった。

 月日が経過して98年。新オフィスを立ち上げるために米国に渡り、「CDDB」を開発した。「当時は、32MBのMP3プレーヤーが60ドルもした。誰でも気軽に音楽が聴ける環境をつくりたいと考えて開発した」そうだ。この技術に目をつけたのがグレースノートだった。これが二つ目のターニングポイント。今は、日本に新しい風を吹かせようとしている。


※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年2月13日付 vol.1419より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは