地上デジタル放送移行に伴うテレビの買い替えが引き金となって、サラウンドシステム市場に弾みがついている。これまではオーディオやホームシアターのファンなどが購買の中心だったが、一般層に拡大。薄型テレビを購入した人の「テレビの音をグレードアップしたい」というニーズをつかんでいる。地デジやブルーレイディスク(BD)など、サラウンド対応のコンテンツの拡大も追い風になり、メーカー各社は、薄型テレビのアフターマーケットとして、一般ユーザーに照準を合わせている。

ソニーは他社テレビとの連携を訴求



 「BCNランキング」によるサラウンドシステムの販売台数は前年比2ケタ増を示し、地上デジタル放送完全移行を背景にしたテレビ特需と連動するかたちで伸びてきた。サラウンドシステムのユーザーは、これまではホームシアターファンやオーディオファンが中心だった。しかし、テレビの薄型化はスピーカー音質の低下を招き、それまで音にあまりこだわらなかった人がもの足りなさを感じはじめたことで、ユーザー層が拡大している。地デジのコンテンツやBDタイトル、ゲームなど、サラウンド対応のコンテンツが増えてきたことで、音質への注目度が高まり、一般のテレビユーザーの需要を喚起した。


 サラウンドシステムの市場規模は、さまざまな見方があるが、年間で概ね50万~60万台程度。一方、薄型テレビは昨年度だけでも2500万台規模を出荷している。テレビに比べるとはるかに小さな規模だが、一方で大きなポテンシャルがあるという見方ができる。つまり、薄型テレビのアフターマーケットとして、周辺機器のサラウンドシステムには伸びしろがあるのだ。

 家電量販店のテレビ売り場では、シャープ、ソニー、パナソニックが、自社のテレビやレコーダーとラック型スピーカーを組み合わせることで、リモコン操作の連動などの利用提案によってアピールする動きが目立っていたが、ソニーが6月に発売した「RHT-G10」などは、他社製機器との連動を訴求。オーディオメーカーとして、多くの人にいい音質を味わってほしいとの思いが製品になった。ソニーマーケティング・ホームオーディオ&エンタテインメントMK課の油井薫・マーケティングマネジャーは、「音質への妥協は一切せずに、従来に比べて1万~2万円程度、価格を下げた」と製品への自信をみせる。ホームシアターの敷居を下げて、一般ユーザーへのアプローチを強化しているのだ。

ソニー「RHT-G10」、「HT-CT550W」(下)

専業メーカーも一般層の開拓を強化



 一方、テレビを出していないオンキヨーやヤマハは、HDMI接続によってテレビやレコーダーメーカーを問わず利用できること、そして音響専業メーカーであることを武器に、こだわり派だけでなく、一般のテレビユーザーの獲得につなげている。

 オンキヨーマーケティングジャパンAV営業部営業企画課の山本誓一氏は、「ユーザーのすそ野が広がるとともに、ニーズも多様化している。そのニーズに応えて、当社はラック型やスリムタイプのバー型、ポール型を投入してきた。ここ1年ほどは、2.1chホームシアターパッケージのエントリーモデルを購入した一般のユーザーが、拡張スピーカーを追加購入する傾向が出てきている」という。山本氏は、「手軽にグレードアップできる当社の製品が受け入れられている。テレビの需要が一巡したこれからが、音響メーカーの出番。音質で勝負してきた強みを発揮できる」と意気込む。

オンキヨー「HTX-25HDX」、「HTX-55HDX」(下)

 ヤマハも、今後はさらに一般ユーザー向けの訴求に力を注ぐ。同社はYSPシリーズによって「バー型サラウンドシステム」という新しいカテゴリを生み出し、設置スペースを気にせずに導入できるホームシアター需要を開拓した。しかし、リアスピーカーを設置せずに7.1chサラウンドを再現するメインモデルの「YSP-2200」は、実勢価格7万円ほど。一般ユーザーが試しに購入するには、少し敷居が高い。企画・広報室課長代理の藤井陽介・広報担当プロダクトマネジャーは、「今後は普及価格帯のYHTシリーズの訴求を強化する」という。

ヤマハ「YSP-2200」、「YHT-S400」(下)

 薄型テレビの普及によって、「いい画を見ると、いい音が聞きたくなる」というニーズが顕在化するなかで、サラウンドシステムは、地デジ化アフターマーケットとしての大きなポテンシャルをもつ。「ホームシアターは特別なもの」というイメージを払拭することが、市場拡大のカギとなりそうだ。(田沢理恵)

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年8月8日・15付 vol.1394より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは