2010年1月、PFUがスキャナのメーカー首位に躍り出た。販売台数シェアは33.2%。「BCNランキング」06年8月以降、3年5か月ぶりのトップ交代となる。大量の紙を一度に読み取るのに適した「シートフィード型」に人気が集まったためだ。一方、2位に順位を下げたキヤノンは30.6%だった。


 07年1月以降、スキャナ市場はキヤノンが台数シェア30-60%で1位をキープしてきた。ただ、規模は徐々に縮小し、それに反比例する形でじわじわと右肩上がりの伸びをみせたのはPFUだ。PFUは「シートフィード型」を扱っており、このタイプの拡大がメーカーシェアの成長を後押しした。

 PFUの松本秀樹・イメージビジネス営業統括部第一営業部部長は、「不況のときだからこそ、企業は業務の効率化やエコ、(紙類の削減による)省スペース化に注目する。こうした動きと、スキャナを使った整理の認知度の高まりが合致した」とシェアを伸ばした理由を説明する。

家電量販店のスキャナコーナーでは、通路際(写真奥)の目立つ場所にシートフィード型が置かれていた(ビックカメラ新宿西口店)

 さらに、PFUが家電量販店で展開した拡販施策も理由の一つだろう。店頭ではPFU製品の横に小型ディスプレイを設置。付属ソフトを含め、動画と音声で使い方をわかりやすくユーザーにアピールする。「スキャナの利用価値を理解してもらえれば、まだ市場は伸びる」(松本氏)と、さらなる拡大に期待を寄せる。

 実際、「BCNランキング」のデータでも、シートフィード型の伸びは明らかだ。直近1年間の推移をみると、09年2月のタイプ別販売台数構成比は、紙をガラス面に置いて下から光を当てて読み取る「フラットベッド型」が70.4%、シートフィード型は28.2%だった。その後、シートフィード型が緩やかに拡大し、12月は構成比がついに逆転。10年1月には44.6%と過半数近くまでシートフィード型の規模は広がった。一方、フラットベッド型は42.4%だった。


 シートフィード型はこれまでPFUの独壇場だったが、09年10月にキヤノンが「imageFORMULA DR-150」を発売して市場に参入したことで、全体の勢いに弾みがついた。一方、フラットベッド型は複合プリンタの標準機能として組み込まれていることが多く、プリンタに市場を一部奪われているのが実情だ。
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 ここで1月の売れ筋モデルをチェックしよう。1位はキヤノンのフラットベッド型、CanoScan LiDE「CSLIDE 200」が販売台数シェア15.1%だった。付属のスタンドを使えば、横置きに加え、本体を縦置きにした状態でスキャンでき、机上に置いてもスペースを取らない。USBバスパワーで駆動するので、ACアダプタが不要だ。市場推定価格は1万円。

スキャナ 機種別販売台数シェア トップ10
順位 メーカー 型番 品名 タイプ 発売月 販売台数
シェア(%)
1 キヤノン CSLIDE 200 CanoScan LiDE 200 フラットベッド 2008/08 15.1
2 PFU FI-S1500 ScanSnap S1500 シートフィード 2009/02 11.8
3 エプソン GT-S620 ColorioScanner フラットベッド 2008/09 9.0
4 PFU FI-S1300 ScanSnap S1300 シートフィード 2009/11 7.3
5 浅沼商会 CFS-2.5 コンパクトフィルムスキャン35 フィルム専用 2009/06 7.2
6 PFU FI-S1500-SR ScanSnap S1500
楽2ライブラリパーソナルV5.0
セットモデル
シートフィード 2009/02 6.7
7 キヤノン DR-150 imageFORMULA DR-150 シートフィード 2009/10 5.2
8 キヤノン CSLIDE700F CanoScan LiDE 700F フラットベッド 2009/04 4.6
9 エプソン GT-X820 ColorioScanner フラットベッド 2009/09 4.0
10 PFU FI-S1300-SR ScanSnap S1300
楽2ライブラリパーソナルV5.0
セットモデル
シートフィード 2009/11 3.2
※文字色がオレンジ色の製品はシートフィード型
「BCNランキング」2010年1月 月次 <最大パネル>

 2位はPFUのシートフィード型モデル、ScanSnap「FI-S1500」が11.8%でランクインした。文書内のキーワード検索やキーワードによる自動仕分け、マーカーで囲んだ部分を切り出すなど、PDFにした後の書類整理がしやすい豊富な機能を備える。同月のスキャナ全体の税別の平均価格は2万2200円だが、「FI-S1500」の市場推定価格は4万9800円。高価にもかかわらず、2位に入った。

(上から)キヤノンのCanoScan LiDE「CSLIDE 200」、PFUのScanSnap「FI-S1500」、エプソンのColorioScanner「GT-S620」

 3位はフラットベッド型で、エプソンのColorioScanner「GT-S620」が9%だった。センサーにCCDを採用し、深い被写界深度を実現。ガラス面とすきまが生じる書籍の中央部や立体物などでも読み取ることができる。市場推定価格は1万1000円。なお、トップ10をタイプ別にみると、シートフィード型は5モデル、フラットベッド型は4モデル、フィルム専用は1モデル。過半数をシートフィード型が占めた。

 シートフィード型の動きは、スキャナ市場全体にも影響を与えている。1年前の09年2月の対前年同期比は、販売台数72.9%、金額67.6%と前年割れしていた。しかし、その後市場は徐々に回復し、12月は前年を超えた。10年1月には台数116.5%、金額116%と勢いをみせている。


 主要なデジタル家電で販売台数・金額の前年割れが目立つ中、スキャナ市場は堅調に成長している。競合する複合プリンタの存在もあり、店頭では決して目立つ商材とは言えないスキャナ。こうした状況にもかかわらず市場が好転したのは、ユーザーのニーズに合った製品を提供する、という堅実なメーカー各社の取り組みが実を結んだといえそうだ。(BCN・井上真希子)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。

*記事中の「市場推定価格」は、記事掲載時点のものです。市場推定価格は、「BCNランキング」のデータをもとに独自に算出した推定値で、消費税込みの金額で表記しています。