【台北発・安藤章司】台湾の主要ITベンダーに受注回復の兆しが見え始めた。6月2日に開幕したアジア最大級のコンピュータ見本市「コンピュテックスタイペイ」での商談は、中国やロシア、東欧、ブラジルといった新興国を中心に需要の低迷が底を打ち始めていると、複数の台湾大手ITベンダーは手応えを語る。徐々にではあるが、発注量を増やす傾向が見られるというのだ。

 サブプライム問題が顕在化し世界的な不況に陥った08年9月以降、台湾ITベンダーの受注は大幅に減少。大手台湾ITベンダー幹部によると、09年の台湾ITベンダー全体の売上規模は、前年に比べ2割ほど減少するという厳しい見通しが年初にはあった。だが、4月以降、需要は徐々に回復する兆しを見せており「落ち込みは最小限に抑えられる」(台湾ITベンダー幹部)可能性があるという。

 さらに、今回の経済危機を契機として、台湾の主要ITベンダーの側も大きな変革を推進している。従来の受託製造中心から、ネットブックなど新領域を拡大し、事業再編やビジネスモデルの見直しを急ピッチで行った。需要の底打ち感と併せて、こうした台湾ITベンダーの改革の成果も、受注拡大に貢献する。

 たとえば、コンピュータメーカー大手のエーオープンは、「デジタルエンジン」という新しいコンセプトを打ち出している。従来はマザーボードなどのパソコン用基幹部品の製造をメインに手がけていたが、これからはマザーボードを自動車の“エンジン”になぞらえ、「さまざまな製品に応用していく」(エーオープンの蔡温喜CEO)という。デジタルサイネージや受付システムなどのアプライアンス製品に自社のマザーボードを組み込むなどして、パソコン以外の需要を積極的に開拓する方針だ。

 またギガバイトは、自作パソコン(DYI)向けのマザーボードに軸足を置く従来の方針は維持しつつ、中国やロシア、ブラジルなど新興国を重点的に開拓していく。とくに中国の自作パソコン市場は年率およそ50%ずつ拡大しており、「少なくともDIY領域では不況の影響は少ない」(ギガバイトテクノロジーの高瀚宇副社長)と、中国では不況のマイナス影響より、裕福層の増加などで市場拡大の勢いの方が勝っていると分析する。

 日本では存在感が弱まっている印象を受けるネットワークベンダー大手のアクトンテクノロジーも、「中東地域の通信キャリアから無線ネットワーク関連で大型の引き合いが相次ぐ」(アクトンテクノロジーの黄安捷社長)状態。日本のITベンダーが苦手とする新興国の需要を巧みに取り込むことで業績拡大をめざす。

 台湾では、これまで需要の中心だった北米市場への依存度を下げ、不況の影響が少ない地域に積極的に進出し、自身の事業改革を並行して進めることで、厳しい環境を乗り越える動きが本格化している。