【ラスベガス発・米山淳】CES2008では、超薄型テレビとともに、各社が発表したフルハイビジョン(フルHD)の無線送受信システムも話題になった。無線を使用し、DVDプレーヤーやデジタルビデオカメラなどの映像を薄型テレビに送って視聴できるというもの。これが実現すると、HDMIケーブルなどで機器同士をつなぐ必要はなくなる。配線に関する悩みがなくなる日も近そうだ。

 「これからはケーブルはいりません」――7日の基調講演で松下電器産業の坂本俊弘・パナソニックAVCネットワークス社社長は、そう言って聴衆の前でケーブルを切った。そして開発したシステムを用い、ビデオカメラの映像を薄型テレビに転送して見せると、会場からは驚きの声があがった。松下は、自社のブースでもデモンストレーションを実施。来場者の映像を撮影した無線機能内蔵のビデオカメラを無線機能を備えたワゴンにのせ、その映像を薄型テレビに転送してみせた。


 このフルHDの無線システムに利用しているのは、「ワイヤレスHD」と呼ばれる通信技術。通信距離は屋内10メートル程度で、最大4GMbpsの大容量通信が可能だ。周波数帯は免許不要の60ギガヘルツ帯を使用する。米通信ベンチャーのサイビーム(カリフォルニア州)を中心に松下、ソニー、東芝、韓国サムスン電子などで構成する団体「ワイヤレスHD」が仕様をまとめた。サイビームが開発した「ビーム・ステアリング技術」を採用。機器の間の空間に人がいても自動的に回避して電波を送るため、テレビと機器の間に障害物がある場合でも確実に接続できるという。

 東芝も、「ワイヤレスHD」を利用し、薄型テレビなどに採用しているリンク機能「レグザリンク」を応用した次世代のリンク機能を公開。無線回路を搭載したHD DVDプレーヤーやノートPCを、HDMIケーブルを使うことなく、テレビのリモコン1つで操作できるデモを行った。


 一方、ソニーは独自の近距離の無線転送技術「TransferJet(トランスファージェット)」を披露した。同社の情報技術研究所の通信研究部が開発したもので、専用の無線通信回路を搭載したデジタルカメラを、同じく回路を積んだストレージにかざすだけで撮影した画像をすべて転送できる。

 通信速度は最大560Mbps。周波数は4.48GHz帯を使用する。無線は1メートル程度飛ばすことが可能だが、混信を避けるために通信距離を3センチメートル以内と極端に短く抑えた。無線回路のアンテナも、垂直方向のみの電波を受信する特殊なタイプを使用している。そのため、「おサイフケータイ」のように直感的に、通信したい機器同士を直接かざすだけで通信でき、面倒な接続やアクセスポイントの設定などは要らない。

 技術開発のチームリーダーを務めた岩崎潤・情報技術研究所通信研究部R&D推進室通信システム担当部長・室長は「誰でも簡単に無線を使っていろいろな機器で高画質の世界を楽しめるようにしようと思った」と、開発の狙いを話す。


 ソニーでは09年度での実用化を見込んでおり、実用化の際には薄型テレビ、デジタルカメラ、携帯電話、パソコン、ビデオカメラなどデジタル機器で「全面展開していく」(岩崎担当部長・室長)計画。また、技術仕様を公開し、他社にも利用してもらうことで無線技術の普及を図っていきたい考えだ。