日本オーディオ協会ほか、CD発売25周年でシンポ、圧縮音楽文化に苦言も

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2007/12/07 17:08

 日本オーディオ協会、日本レコード協会、CDs21ソリューションズは12月6日、「CD25周年記念シンポジュウム」を開催した。82年10月に世界に先駆けて日本で音楽CDを発売してからちょうど25年になることを記念して開いたもの。

 1877年のこの日はエジソンが蓄音機を発明した日でもあることから、日本オーディオ協会では12月6日を「音の日」として制定しており、これにちなんで同日に実施。シンポジウムでは、デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏をモデレータに「デジタル音楽25年、そしてこれから」と題したパネルディスカッションを行った。



 「多品種・少量生産をどのように実現するか」とCDの生産課題について指摘したのは、光ディスクの技術開発を手掛けてきた実績をもつ井橋孝夫・CDs21ソリューションズ幹事会議長。一方、音楽を再生するオーディオ機器に関しては、「映像コンテンツと異なり、音楽のソースはこれ以上よくできない。したがって、オーディオ機器そのものを慈しむマーケティングをして、手軽によい音が再現できる数十万円程度のオーディオが必要」と、メーカーの販売戦略を見直す必要があることを示唆した。

 音楽のデジタル化やカラオケの開発などに従事してきた、穴澤健明・ディアールエムソリューションズ代表取締役社長は、「『デジタル』は、使い方を知らなければ毒草、知っていれば薬草になる」と、携帯電話で多発する違法ダウンロードなどの実情を踏まえ、デジタル音楽の扱い方の難しさを指摘。さらに、現在、リスニングスタイルが個人化してきていることを憂慮して、「そもそも録音とは、(その場にいなかった人たちが音楽を一緒に聴いて)コミュニケーションを行うためのもの。音楽を通じて家庭でコミュニケーションが増えれば」と、家族や友人と音楽を共有する楽しさも語った。

 東芝EMIの元社員で、CD事業開発を行ってきた永嶋孝彦・テラクルー特別顧問は、音楽を文化として捉えた場合、「(携帯オーディオなどの)圧縮された音楽だけを聴いているのでは貧しい。音楽の楽しみ方を改めて啓蒙するべき」と、圧縮された音楽ばかり聴くようなスタイルに否定的な見方を示した。加えて、「団塊の世代は、良質の音楽を良質のオーディオ機器で聴いた経験があるはず。この知識を子どもや孫に伝えてほしい」と、よい音という視点から、世代を超えたオーディオ文化の伝承も提案した。


 このほか、長年アナログレコードのカッティングやCDのマスタリングを行ってきたエンジニアによる、パネルディスカッション「音づくりの立場からCD25年を語る」も実施。合間には、各パネラーが実際にマスタリングを行った、ジャズやクラシック、ポップスなど思い出の曲が流され、会場は和やかな雰囲気に包まれた。

 また、中島平太郎・CDs21ソリューションズ会長による記念講演「CD25周年を迎えて」も合わせて行われ、光ディスクの今後のありかたについて「高密度化とコンテンツの質が課題である」とまとめた。