売れ筋一新のプロジェクター、フルHD化が急、人気は依然「全部入り」

特集

2007/10/18 12:45

 安価に大画面が楽しめるプロジェクター。最近では、初心者でも使いやすいDVDプレーヤー一体型や軽くて扱いやすいタイプも増えてきた。フルハイビジョン(フルHD)対応モデルも急激に伸びており、秋の新モデルで製品の顔ぶれも一新した。そこで、「BCNランキング」で最新のプロジェクター売れ筋動向を探った。

●10か月間連続トップの「EMP-TWD3SP」、ついに9月に新製品と入れ替わり

 プロジェクター市場はこの1年ほど、セイコーエプソンが06年9月に発売した「EMP-TWD3SP」がトップを走り続けてきた。プロジェクターにDVDプレーヤーとスピーカーを一体にした人気の「全部入り」本体に、スクリーンをおまけにつけたセットモデル。06年11月から07年8月までの10か月間、機種別販売台数シェア15%前後で推移していた。しかし9月に入って、ついに同じくエプソンが発売した新モデルに首位を明け渡した。


 この9月に同社が発売したのは「EMP-DM1S」と「EMP-TWD10S」の2モデル。いずれもDVDプレーヤーとスピーカーを内蔵する「全部入りモデル」で、9月第3週(9月17-23日)に、スクリーンセットで実売9万円台と安価な「EMP-DM1S」が販売台数シェア10.2%でトップに立った。さらに、同社が07年6月に発売した業務向けブランド「Offirio」の「EMP-X5」も徐々に伸びてきており、9月以降、プロジェクターの新旧のモデルが入れ替わっている。

●1位はエプソンの取っ手付きモデル ソニーのフルHD対応も6位に


 直近の10月第2週(10月8-14日)の機種別販売台数シェアでは、エプソンの新モデルが1位、2位を独占した。トップはシェア14.5%で、持ち運びに便利な取っ手付きのプロジェクターとスクリーンをセットにした「EMP-DM1S」。重さ3.8kgと軽量でコンパクトなのに加え、DVDプレーヤー一体型で使いやすいのが特徴。オプションの天井投写キットを使えば、天井に投写して寝転がりながら映像を楽しめる。


 2位はシェア9.5%の「EMP-TWD10S」。こちらもDVDプレーヤー一体型モデルとスクリーンをセットにしたもの。レンズ部に当たる「頭」が180度回転することで、本体をユーザーの前方・後方どちらに置いても、スピーカーやDVDプレーヤーの向きがユーザー側にくるよう設計したモデルだ。スピーカーの右・左も回転と連動して自動で切り替わる。

 このほか、新モデルで注目なのはソニーが9月に発売した「VPL-VW60」。解像度1920×1080のフルHDに対応する機種で、シェア3.7%で6位に入ってきた。高画質回路「ブラビアエンジン」を搭載し、色鮮やかで深みのある映像を再現する。HDMI端子も2系統装備し、ゲーム機やデジタルビデオカメラの画質を劣化させずに投写できる。

 トップ10には、スクリーンセットモデルがエプソンで3モデルランクインしている。もともとスクリーンは数万円する高価な必需品だけに、セットモデルのお得感がウケているようだ。そのほかフルHD対応モデルがソニーとエプソンの2機種。07年9月に発売した新製品は3モデルランクインした。


●3キロ未満の軽量タイプが人気 フルHD化は8%まで上昇

 家庭用プロジェクターの場合、使うときだけ取り出して普段はしまっておくという使い方が一般的ではないだろうか。そんなとき気になるのが重さ。出し入れを考えれば軽ければ軽いほど扱いやすい。そこで、この1年間(06年10月-07年9月)で、重量帯別の販売台数シェアを調べてみた。3キロ未満の軽量タイプがおよそ4割を占めてトップ。5キロ以上7キロ未満のやや重いタイプも20%台で少しずつ上昇してはいるものの、主流はやはり軽い機種だ。一方、7キロ以上10キロ未満は右肩下がり、10キロ以上は1割を切っている。プロジェクターを選ぶ際には「重さ」もチェックしておきたい。


 また、プロジェクターならではの大画面を存分に楽しむなら、綺麗な映像が投影できるフルHD対応モデルが欲しくなる。プロジェクターのフルHDは、まるで「薄型テレビが壁にかかっている」ような感覚。標準画質のモデルと比べると少々値は張るが、それだけの価値がある高画質が楽しめる。

 フルHD対応モデルの販売台数シェア推移を見ると、1年前の06年10月はわずか1%しかなかった。しかし、07年5月以降伸び始め、07年9月には8.2%まで増えた。プロジェクターのおよそ1割がフルHDに対応することになり、フルHD化が進んできた。


●エプソンがシェア6割で不動のトップ 対前年比ではソニーが躍進

 最後に、メーカー別のシェアも見ておこう。トップシェアのエプソンは年間を通じて安定した強さを維持している。9月のメーカー別販売台数シェアでは、エプソンが60%でトップ。2位はシェア12%のソニーで、BenQ Japanが6%、三洋電機と松下電器産業がそれぞれ5%という構造だ。


 ところが、この1年間の対前年の販売台数比に注目すると、全く様子が変わってくる。トップのエプソンだが、前年割れの水準が続いており、9月には多少持ち直し91.5%まで戻してきている状況だ。そんななか、注目メーカーはソニー。07年6月までは50-100%の間を上下に変動していたが、7月には前年比225.4%と前年の2倍以上と急激な伸びを見せている。これは6月に発売した「VPL-AW15KT」「VPL-AW15」の2機種が売れ始めたことに加え、9月には同社の薄型テレビ「BRAVIA(ブラビア)」のブランドを継承した「VPL-VW60」の人気が高まっていることが背景にあるようだ。


 また、三菱電機も一時的ではあるが、8月に150%と前年を大きく上回った。こちらは「LVP-HC1100」「LVP-HC5000」などがけん引した。徐々にではあるが、メーカーの勢力図も塗り変わりつつあり、プロジェクターの強豪エプソンに挑む、各社の追い上げも激しくなりそうだ。(BCN・井上真希子)


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