詫間電波工業高等専門学校(詫間電波高専)は、2006年の「全国高等専門学校第17回プログラミングコンテスト」の自由部門で優秀賞を獲得、課題部門でも敢闘賞を受賞した。ロボコンの強豪としても知られる同校は、昨秋のロボコン決勝では5年ぶり3度目の全国制覇を果たすなど、プロコン、ロボコン両分野での活躍が目立っている。この活躍を支えるのは「創ることを楽しむ」姿勢であるようだ。

自由部門で初の優秀賞を獲得
プログラムを創ることの喜び感じる


 詫間電波工業高等専門学校(詫間電波高専)は、2006年の「全国高等専門学校第17回プログラミングコンテスト」の自由部門で優秀賞を獲得、課題部門でも敢闘賞を受賞した。ロボコンの強豪としても知られる同校は、昨秋のロボコン決勝では5年ぶり3度目の全国制覇を果たすなど、プロコン、ロボコン両分野での活躍が目立っている。この活躍を支えるのは「創ることを楽しむ」姿勢であるようだ。(倉増 裕●取材/文)

●3Dのイルカと人を結ぶ 癒し系システムで受賞

 詫間電波高専のプロコン参加は「情報工学科として組織的に取り組んでいる」(情報工学科・高城秀之講師)ことが特徴で、担当教官も毎年入れ替わる。同校では第13回から課題部門・自由部門のいずれかで審査委員特別賞を4年連続受賞しており、今回の自由部門で初の優秀賞受賞となった。

 受賞作「$フィンファンタジー」は、リアルとバーチャルの両面でイルカの動きを工夫しながらイルカセラピーという新たな癒し手法を実現したことが特徴だ。

 「賢さと可愛さを併せ持つイルカに癒しを感じる人は多い。だからこのイルカと画面上で対話しながら、時には実際にイルカのぬいぐるみが登場してこれに触れることができれば、癒し効果はさらに増す」と考えたのが情報工学科3年生の高尾美代子さんだ。

 この企画に賛同したメンバーがプロコンに向けてチームを結成、高尾さんの企画をベースに討論を繰り返しながら、人とのインタラクティブ性を重視したシステムへと構想が膨らんでいった。

 3D画面でイルカが自由に泳ぎ回ることはもちろん、マイクに向かってイルカに呼びかけると、ぬいぐるみのイルカが海面から登場する。これをやさしく撫でてやると口をパクパクさせて喜ぶなど、従来にない癒し系システムが誕生した。

 3DはDirectXで開発したが、3D開発担当の木谷仁治さん(情報工学科4年生)と森健太郎さん(同)ともにDirectXは初めての体験だった。2人は06年4月頃からDirectXの勉強を開始し、その成果をもとに夏休み頃から実際の3Dコーディングを開始した。

 「簡単な3Dを動かすレベルには到達できても、自由に使いこなせるレベルになるのは難しい。書けることと実際に使いこなせることの違いを痛感した」(木谷さん)とはいうものの、もともとDirectXに興味のあった2人の上達は速い。

 「もっと上のレベルを目指していたが、技術がそこまで到達しないためにやむなく妥協した面は多い」(森さん)との反省はあるが、プロコンという当面の目標をクリアしたことで「長いソースコードには強くなったような気がする」と感想を述べている。

●プロコンが成長の場に 集中が個性を引き出す

 イルカの動きについても当初は全くのランダムな動きを目指したが、その実現はなかなか難しいことから、「やむをえず一定の法則性のもとに動かすことにした。しかしこの法則性を誰も感じないような工夫を施している」(木谷さん)など、次善の策を講じるテクニックも身につけた。

 イルカのぬいぐるみを動かすための制御プログラムは高尾さんが担当した。「ハードの制御については初めての経験だったが、制御プログラムにもさまざまな手法があることがわかり、なかなか面白く、良い経験になった」という。

 新たな分野やツールへの取り組みはもちろん、本選を目前に控えた追い込み作業などさまざまな苦労があったことは事実だが、これらをすべてひっくるめたうえで、完成に至る作業について「面白かった」との感想が共通していることが、このグループの特徴である。

 その底には「何よりもまず学生にプログラムを創ることの喜びを感じて欲しい」という高城講師の願いがある。その喜びとは「自分で問題を見つけてその解決法を創作していく喜び」である。

 プログラム開発におけるプロコンの教育効果については、「長いプログラムを書くことによって構造化その他実践で必要なさまざまな要素の重要性を肌で感じる」ことや「プログラムは書けば動くものではなく、書いてからの検証に多大の時間とコストがかかるという現実を知る」ことなどに加えて、「本選でさまざまな高専の学生と交流することによって、上には上がいるものだということに気づいて謙虚さを取り戻す」こともプロコンならではの効果だという。

 プロコンによって学生は大きく成長するが「それは個性を伸ばすというより、プロコンに集中するなかから個性が生まれてくるという印象が強い」というのが高城講師の感想である。

 高尾さんは今回が初のプロコン参加だが、木谷さんと森さんはともに2回目の参加となり、初心者と経験者を交えたチーム構成が同校の特色だ。

 優秀賞の次は最優秀賞しかないということで、来年のプロコンに向けて意欲は十分、「音声合成の無機質な声がもっと潤いのある人間的な声になれば、これを利用する世界が変わるのではないか」(高尾さん)など、すでにさまざまなアイデアが出始めている。

●伝統ある電子情報系の高専 高畑秀行校長

 官立無線電信講習所の大阪支所として昭和18年に設立、昭和24年に香川県の詫間町に移転して詫間電波高等学校となり、昭和46年に詫間電波工業高等専門学校として再出発、伝統を引き継ぐ電子情報系の高専として知られる。香川県の西北部、浦島伝説で有名な庄内半島の基部に位置する閑静な立地は、全国の高専のなかでも勉学には最適の環境といえる。

 「こと工学の専門教育に関して高専は大学と同レベルの教育を実現している」というのが・畑秀行校長の持論だ。高校・大学トータルの就学年数より2年短いにもかかわらず同レベルの専門教育を実践できる理由は、「実験や実習を核とした専門教育機関としての自覚のもとに、あくまで学生の教育を本分とする教官の基本姿勢」にあると指摘する。

 「高専の存在価値は、1年から5年までの一貫した専門教育にあり、この意義は失われることはない。工学は実際の体験が重要で、これを10代半ばから学習することは大きな意味がある」との考えから、「高専の教育こそが本来の技術者教育だと感じている」と述べる。 高専は地場産業への貢献も期待されているが、詫間高専の位置する香川県は、技術者を受け入れる地元の企業数が十分ではないことが・畑校長の悩みだ。地元自治体や企業に対しては「出張授業その他、実効性のある方策」で貢献していく方針だ。

BCN ITジュニア賞
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昨年1月27日に開催されたBCN AWARD 2006/
BCN ITジュニア賞2006表彰式の模様


※本記事「<技術立国の夢を担う ITジュニアの群像 高専プロコンへの道>第31回 詫間電波工業高等専門学校は、週刊BCN 2007年1月8日発行 vol.1169に掲載した記事を転載したものです。