ソニーは10月12日、音にこだわった新しいウォークマン「Sシリーズ」を発表した。このところ発売前のPS3値下げやバッテリー問題でダメージを受けている同社は、この新製品で活気を取り戻すことができるのか? どこまでシェアを伸ばすことができるのか? 「BCNランキング」で占う。

 ソニーは10月12日、音にこだわった新しいウォークマン「Sシリーズ」を発表した。このところ発売前のPS3値下げやバッテリー問題でダメージを受けている同社は、この新製品で活気を取り戻すことができるのか? どこまでシェアを伸ばすことができるのか? 「BCNランキング」で占う。


●音へのこだわりを徹底してアピール

 高音質技術「クリアオーディオテクノロジー」を搭載し、新しいカナル型イヤホンを同梱。さらに上位モデルにはノイズキャンセル機能を内蔵するなど、音にこだわった姿勢を明確に打ち出した「S700・S600」シリーズ。同時に発売したHDDコンポ「ネットジューク」との連携で、PCレスの使い勝手も向上させている。


 渋谷で開いた発表会では、来場者ひとり1人に新しい「ウォークマン Sシリーズ」が貸与された。出席した記者たちに音の良さを耳で聴いて体験してもらおう、という趣向だ。例えば、あらかじめ本体にセットされたデモ音源を聞いている最中に、会場内に電車内と同じ騒音を流し、「ノイズキャンセリング機能」の効果を実体験させていた。実際効果はなかなかのもので、騒音はほとんど気にならないレベルまで小さくなった。

 また「ファンタスティック・プラスティック・マシーン」の人気DJ田中知之によるライブパフォーマンスも行われた。しかし、その音はFM波を通してウォークマンのFMチューナーで聴くというもので、このときにも会場内には電車の騒音を流すという徹底ぶりだ。


 同梱の新タイプヘッドホンの音質もなかなか良かった。低音の迫力、高音の伸び、そして、弦や管、キーボードの微妙な響きまでしっかりと再現できている。これまで、携帯オーディオに標準で付属するヘッドホンの音質はいまいち、という印象を持っていたが、その既成概念をくつがえすレベルではないかと感じた。

 さらに、同時に発表した新しいHDDコンポ「ネットジューク」との連携で、PCがなくても音楽を楽しめるシステムを提案。音楽をあくまでもピュアに、クリアな高音質で楽しむことに徹する姿勢を打ち出した。また、新しいテレビCMも披露され、英国の人気ロックグループ「オアシス」の曲「レイア」が流れた。オアシス本人たちも演奏シーンで登場しているが、彼らがCMに出演するのは、全世界で初という。


●シェア20%に見えない壁?

 このところソニーが発表する携帯オーディオはメモリタイプのみで、今回もHDDタイプは登場しなかった。こうしたことがどう響いているかはわからないが、夏ごろから20%台にまで戻していた同社の販売台数シェアは、アップルの新製品発売の影響もあって、また10%台に逆戻り。好調を支えてきたUSB端子付きの「Eシリーズ」も勢いが弱まり、9月に発売したスティックタイプのS200シリーズはまだまだという状況だ。新製品への期待は高い。


 一方アップルは、9月に発表した第2世代のiPod nanoやマイナーチェンジした第5世代のiPodに順調に切り替わっており、しばらく遠ざかっていた50%に絡む対照的な動きを示している。しかし、今後大きなインパクトを与えそうなのは、これから発売される第2世代のiPod shuffleだ。大胆にクリップタイプにきょう体を変更してより小さくなり、発売前から話題を呼んでいる。同社広報では、「間もなく発売するということは決まっているが、具体的な日取りがまだ決まらない」という。予約がかなりつみあがっている状態で、各地への出荷数量の調整に苦慮しているようだ。

●続くnano人気だが、真打の登場はこれから

 カラーバリエーションを合算した10月第1週(10月2日-8日)機種別販売台数シェアでは、1位が第2世代のiPod nano 4GBモデルで12.2%、2位は同2GBモデルで9.6%と、nanoの強さは世代が変わっても続いている。3位にマイナーチェンジをした第5世代iPodの30GBモデルが8.5%でランクインしている。


 ソニーはといえば、5位、6位にEシリーズ、9位にS200シリーズがランクインしている程度。このほど発表されたS700・S600シリーズがどれほどの出足となるかは、発売してみなければわからない。しかし、S700のノイズキャンセル機能は注目だ。現在もノイズキャンセルヘッドホンやイヤホンを販売している同社だが、特にカナルタイプのイヤホンはノイズキャンセル効果が高いと定評がある。新ウォークマンは、静かに音楽を楽しむという意外なニーズを引き出すことができるかもしれない。ただ、仮にそこそこの立ち上がりを見せたとしても、一気にシェア拡大に持ち込むにはハードルは高い。


 要因は、やはり第2世代のiPod shuffle。9800円という価格を考えても、場合によってはアップルがかなりの台数シェアを獲得する可能性がある。その上さらに新たな製品の追加投入も噂されている。こうした状況に立ち向かうには、よほど強烈なインパクトのある製品でなければ難しいだろう。とはいえ、アップルが動きを見せることで、このところ前年割れ水準に低迷している携帯オーディオが再び活気づく。他のメーカー各社も自社の対前年実績を上回るようになれば、市場の状況はかなり好転しそうだ。(フリーライター・中村光宏/WebBCNランキング編集長・道越一郎)


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