長野工業高等専門学校(長野高専、大島有史校長)は、全国高等専門学校第17回プログラミングコンテスト(プロコン)の課題、競技の両部門で本選出場を決めた。7月1日に行われた審査で、課題部門2チーム、競技部門1チームの計3チームが予選をクリア。プロコン創設から17年連続で課題・自由部門のいずれかで予選を通過したことになる。過去には5年連続で優勝した実績を持つ強豪校だけあって、10月の本選では上位入賞が期待されている。

課題、競技の2部門で予選突破
ICタグなど最新技術を応用


 長野工業高等専門学校(長野高専、大島有史校長)は、全国高等専門学校第17回プログラミングコンテスト(プロコン)の課題、競技の両部門で本選出場を決めた。7月1日に行われた審査で、課題部門2チーム、競技部門1チームの計3チームが予選をクリア。プロコン創設から17年連続で課題・自由部門のいずれかで予選を通過したことになる。過去には5年連続で優勝した実績を持つ強豪校だけあって、10月の本選では上位入賞が期待されている。(安藤章司●取材/文)

●恐竜の骨探しと、しゃぼん玉で挑戦

 今年の課題部門のテーマは「子供心とコンピュータ」。子供の持つ無邪気な心を大切にしたもので、2チームが予選を突破した。

 電子制御工学科5年生の大島直樹さんら5人のチームが応募した「発掘!恐竜大事典─友達を誘って、恐竜に会いにいこう─」と、電子情報工学科3年生の石飛太一さんら5人のチームが応募した「しゃぼん玉とばそ」が予選を通過。一方、競技部門でも1チームが本選進出を決めている。

 「発掘!恐竜大事典」は“恐竜の化石”を探し出して元の姿を復元する子供向けの遊びだ。リーダーの大島さんは、「野外で化石探しをすることで子供たちの運動不足を解消するとともに、複数人数で連携して化石を探すことによるコミュニケーション能力の向上」を狙ったものだと話す。ICタグやPDA(携帯情報端末)など最新のITを駆使して開発する。



 恐竜の化石に見立てた複数の“骨”にICタグを取り付けて、公園やイベント会場などに隠す。子供たちはICタグの情報を読み取る受信機を取り付けたPDAを持って骨を探し、必要な骨がすべて見つかった時点でPDAの画面上に恐竜の復元図が表示される仕組みだ。友だちとチームを組んで探したほうが見つかる確率が高まるため、「身体能力だけでなく、ある種の頭脳戦が求められる」(デザインとアイデア担当の奥原健太郎さん)と見る。



 リーダーの大島さんは、1年生のときから4年連続の参加経験があり今回で5回目。昨年、課題部門で出品した視覚障害者向けの誘導システム「サウンドナビゲーター」は審査員特別賞を受賞している。接触しなくても情報が読み取れるICタグの特性をフルに生かし、視覚障害者を誘導する点字ブロックを代替する新しい誘導システムの提案が評価された。

 今回の作品においてもICタグの非接触性を存分に生かす計画だ。骨のある場所から半径2メートル程度に読み取り装置(アンテナ)が近づいた段階で、あらかじめPDAに組み込んである“レーダー”ソフトが音と光を発して反応するように設定。人目につきにくいところに隠してある骨をレーダーを頼りに探し出すおもしろさを演出する。「ICタグは新しいジャンルのデバイス。プロコンを通じてICタグの将来の可能性を探りたい」(ハードウェア開発担当の内堀拓哉さん)と、目を輝かす。

 一方、石飛さんのチームが開発する「しゃぼん玉とばそ」は、コンピュータ上でしゃぼん玉を生成するシステムだ。しゃぼん玉が割れると動物の声が聞こえたり、鳥や虫が出てきて、しゃぼん玉を割ったり、玉の中に入ってしまったりと、現実には起こりえないアクションやイベントを多数用意する。コンピュータならではの遊びを採り入れることで「子供たちに“わくわく感”を味わってもらう」(山田英史さん)のが狙い。

 しゃぼん玉を膨らませるのに使うストロータイプのコントローラー(ストコン)、タッチパネル式のモニタ画面でしゃぼん玉に触れられるようにするなど、「ハードウェアも充実させる」(竹内裕哉さん)予定だ。ゆらゆら揺れながら飛んでいくしゃぼん玉をシミュレーションする高度なソフト技術とハード技術をどう融合させるのかが最大のポイントになりそうだ。

●将来はスパコンのプログラム開発も

 リーダーの石飛さんは根っからの数学好きで、プログラミングでは科学技術計算の分野を得意としている。国内最速級のスーパーコンピュータといわれる気象庁の計算プログラムや保険会社などが保険料を設定する統計学的な保険数理計算なども、「今はまだ無理だが将来的には組めるようになる」とソフト開発に自信を示す。

 担当教員で電子制御工学科の鈴木宏・助教授は、「基礎をしっかり押さえて開発に当たってほしい」と、個々の技術要素を丁寧につくり込むことが大切だとアドバイスする。電子情報工学科助手の伊藤祥一さんは、「開発スケジュールを明確にするべき」と、限られた期限の中でチームワークをフルに生かした効率的な開発が求められると指摘する。

●地域に愛される学生を育てる 大島有史校長

 長野高専は地域に愛される学生を育てることを重視している。地域に密着した学校運営を行い、「地域から期待され、愛される学生を育てることが本校の特色」と大島校長は話す。

 4年生の夏期に実施する実務訓練で学生は、地元企業の協力を得て約2週間、製造業などの現場で実務を体験する。今年で15年目になり、近年では4年生約200人のうち半分余りが実務訓練を受けている。今年度からより強力に推奨するため、卒業要件の選択必須科目に指定。今夏は例年よりも多い150人程度が参加する見込みだという。

 「地元企業の方々からの支持があってこそ成り立つ取り組み。地域との協力関係を深めていくなかで“優れた技術者は、優れた人間でなければならない”という開校以来の教育理念を具現化させていく」考えだ。

 専攻科では、1年生20人余りが後期課程の約15週間を使って実務を学ぶ制度を採り入れている。精密機械など機械産業が集積する長野県の地域性もあるが、本科・専攻科ともに地元企業の協力を得て実務訓練を行っているのは全国的にも珍しい。

 こうした地元企業との交流が下支えとなり、就職を希望する卒業生の約半数が地元で就職。過去の卒業生でみれば、Uターン組も含めて全体の約3分の2が地元に戻って地域産業に貢献しているとみられる。

BCN ITジュニア賞
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今年1月27日に開催されたBCN AWARD 2006/
ITジュニア賞2006表彰式の模様


※本記事「<技術立国の夢を担う ITジュニアの群像 高専プロコンへの道>第8回 長野工業高等専門学校は、週刊BCN 2006年7月17日発行 vol.1146に掲載した記事を転載したものです。