MacWorldでジョブズが語ったIntel Macの一部始終

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2006/01/12 02:00

 Appleにとって、そしておそらくIntelにとっても、06年は記念すべき年になるだろう。Apple創設以来、幾度となく噂にのぼっては消えていったIntel製CPUを搭載したコンピュータが、ついにAppleから発表された。日本時間11日午前2時、サンフランシスコで開幕したMacWorld Conference & Expoの基調講演で、Appleのスティーブ・ジョブズCEO自ら、06年最初のプロダクツとして披露した。同日8時間遅れながら東京国際フォーラムで開催されたマスコミ向けイベントでは、ジョブズCE

 Appleにとって、そしておそらくIntelにとっても、06年は記念すべき年になるだろう。Apple創設以来、幾度となく噂にのぼっては消えていったIntel製CPUを搭載したコンピュータが、ついにAppleから発表された。日本時間11日午前2時、サンフランシスコで開幕したMacWorld Conference & Expoの基調講演で、Appleのスティーブ・ジョブズCEO自ら、06年最初のプロダクツとして披露した。同日8時間遅れながら東京国際フォーラムで開催されたマスコミ向けイベントでは、ジョブズCEOのプレゼンテーションがビデオ上映され、実機が公開された。その模様をレポートする。



●1分間に100台、売れに売れたiPodファミリー

 基調講演のステージに登場したジョブズCEOは、まず、全世界で展開中のApple Retail Storeの好調な売れ行きを紹介した。ホリデーシーズンだった前4半期の売上げは、57億ドルという記録的な数字を達成し、iPodシリーズは前4半期に1400万台を販売したと発表した。これは、1分間に100台ずつ売れた計算。iTunes Music Store(iTMS)からダウンロードされた楽曲数も、すでに8億5000万曲を突破。第5世代iPodで再生可能なビデオコンテンツのダウンロード数も800万本を超えたことが明らかにされた。



 iTMSでは、米NBCの人気テレビドラマを放送翌日にダウンロードすることができるが、新たに、米ABCのスポーツコンテンツや、「サタデーナイト・ライブ」といった人気番組もダウンロード可能になった(いずれも米国内のみ)。米国内では、クライスラー社の車300万台がiPodに対応。これにより、全米で販売される車のおよそ40%がiPod対応となったという。

 そのiPodについてだが、第5世代iPodとiPod nano用の「Apple Radio Remote」コントローラが発表された。FMチューナーを兼ねたiPodのリモコンで、iPodに接続することで、iPodの画面上でFM局を選局できるようになる。日本でも即日発売されたが、オンラインのApple Storeでは、出荷まで2?3週となっている。また、新しいiPod+iTunesのテレビCMでは、エミネムに代わってジャズ界の大物、ウィントン・マルサリスが起用された。昨年10月の第5世代iPodの発表イベントでゲストに招かれ、華麗なテクニックを披露したのは記憶に新しい。

●プロのクリエイティブワークを超簡単にするiLife '06

 続いてジョブズCEOが語ったのは、Appleオリジナルのアプリケーションソフトについて。その中でも注目は、やはり「iLife」だろう。「iPhoto」「iMovie HD」「iDVD」「GarageBand」「iTunes」で構成される「ilife」は、Appleの提唱する「デジタル・ハブ」を具現化するソフト群である。その「iLife」が'06へとアップグレードした。「iPhoto 6」では、新たに「Photocasting」という機能をサポート。これはいわば、Podcastの写真版。AppleのWebサービスである「.Mac」を介して、写真を公開したり、共有したりすることができるようになった。また、「GarageBand 3」を使うと、Podcast用のコンテンツを実に簡単に作成することができる。「iMovie HD」では、Appleがデザインしたモーションテーマが追加され、まるでハリウッド映画のような自作ムービーをつくることができる。しかも、ビデオPodcastとして書き出すこともできるようになった。



 プロ級のクリエイティブワークを、誰でも簡単に実現できるソフトウエアスイーツが「iLife '06」だ。そして、今回のバーションでは、iTunesとiPodが創り出したPodcastというメディアの可能性を拡げるような機能が各ソフトに盛り込まれている。なお、「iLife '06」の価格はシングルユーザー版で8800円。即日発売された。

●革新は、いつも「iMac」からやって来る!?

 「MacWorldだから、Macの話もしなきゃね」と言ってジョブズCEOが話し始めたのが、Intelプロセッサの搭載について。ここで、Intelのポール・オッテリーニCEOがステージに登場する。その出で立ちは、シリコンウエハの円盤を持った半導体工場の作業員。その格好には、かつてAppleがIntelを揶揄したテレビCMに対するパロディの意味合いもあり、両社の長い対立の構図に終わりを告げるものでもあった。「スティーブ、Intelは用意ができているよ」と言うオッテリーニに、ジョブズCEOも、「ポール、Appleも用意ができたんだ」と応じる。



 そして発表されたのが、Apple初のIntelプロセッサ搭載マシンとなる「iMac」。搭載されているのは、Intelがつい先ごろ正式発表した、モバイル向けの新しいデュアルコアCPUである「Intel Core Duoプロセッサ」である。17インチモデルが15万9800円、20インチモデルが20万9900円で、やはり同日発売された。



●今度の「最後にもうひとつ」はプロ向けノート「MacBook Pro」だった


 そして、いつものお決まりの「最後にもうひとつ……」というセリフとともにジョブズCEOが発表したのが、やはりApple初のIntelプロセッサノート「MacBook Pro」だった。



 Appleのプロ向けノートパソコン「PowerBook G4」については、長らくPowerPC G5の搭載が待ち望まれていた。しかし、消費電力とパフォーマンスの関係から、G5搭載は叶わぬ夢となった。そのため現行の「PowerBook G4」は、プロ向けをうたいながら、FSBは167MHz、メモリ動作速度は333MHzと、Windowsノートと比べて一世代前のスペックに甘んじていた。

 これを挽回すべく、ノートPCとしては現在最高のパフォーマンスで登場したのが「MacBook Pro」だ。「Intel Core Duoプロセッサ」を搭載し、FSB、メモリ動作速度とも667MHzに引き上げられた。Appleの発表では、「PowerBook G4」と比較して整数演算で4.5倍、浮動小数点演算で5.2倍も高速になっているという。iSightカメラを内蔵し、Front Rowに対応、Apple Remoteコントローラも付属する。デザインこそ「PowerBook G4」を踏襲しているが、きょう体はまったくの新設計。本体の厚さは、初代「PowerBook G4」(チタンモデル)と同じ1インチと薄くなっている。画面サイズはアスペクト比16:10の15.4インチとなり、これまでの15.2インチからほんの少し大きくなった。トラックパッドも画面サイズに合わせてワイドタイプになっている。画期的なのは、電源アダプタがマグネットでの着脱式になったこと。電源コードを引っぱると簡単にプラグが本体から外れる。コードを引っかけてマシンを机から落とすような事故はもうなくなるだろう。

 「MacBook Pro」は15.4インチモデルのみだが、1.67GHzが24万9800円、1.83GHzが30万9800円。本日より予約を受け付け、2月出荷の予定。

●現行製品を併売しながら、06年中にIntelプロセッサへ完全移行

 ビデオ上映後、実機の展示会場では「iMac」と「MacBook Pro」並べられていた。その印象は、ズバリ「速い!」である。Appleでは、06年中にすべてのMacをIntelプロセッサ搭載モデルに移行する予定だ。アップルの担当者に尋ねたところ、Mac系主要ソフトがIntelプロセッサに完全対応するまで、当面、現行の「iMac G5」については、17インチモデルは在庫のみで販売終了するものの、20インチモデルは製造を継続する。また、「PowerBook G4」についても、当面は全機種を「MacBook Pro」と併売する方針。「MacBook Pro」は、「PowerBook」に代わるものではなく、まったく新しい製品ラインとして位置づけている。あえて違う名称を付けたのには、そうした意図もあったようだ。

 05年iPodで怒濤の快進撃を演じたアップル。06年、Intelプロセッサ搭載のMacで、また大きな波をとらえることができるかどうか、注目だ。(フリーライター・中村光宏)