平成の大合併で売れるWeb型地図、一夜にして市町村名が100以上消えても即応

特集

2005/08/25 00:55

 今年がピークの「平成の大合併」は、衆院選の選挙期間「中」にも6市町が合併するという前代未聞の事態まで引き起こした。この影響を少なからず受けたのは政治家ばかりではない。地図ソフト市場もそうだ。もともと鮮度が重要な地図ではあるのだが、こうも相次いで「地名」が変わってしまっては、買い控えたくなるのも人情。各ソフトベンダーもそれを見越して、さまざまな機能付加や、販売形態の工夫をこらしている。大合併に対応する地図ソフトとその動向をまとめた。

 今年がピークの「平成の大合併」は、衆院選の選挙期間「中」にも6市町が合併するという前代未聞の事態まで引き起こした。この影響を少なからず受けたのは政治家ばかりではない。地図ソフト市場もそうだ。もともと鮮度が重要な地図ではあるのだが、こうも相次いで「地名」が変わってしまっては、買い控えたくなるのも人情。各ソフトベンダーもそれを見越して、さまざまな機能付加や、販売形態の工夫をこらしている。大合併に対応する地図ソフトとその動向をまとめた。

●Web型とローカル型で展開する地図ビジネス

 現在、地図ソフトは、ネットワーク接続が必須でネット経由でデータをその都度取得する「Web型」と、あらかじめ全データを持っている「ローカル型」の2つに大別できる。Web型は常に最新のデータが閲覧できる一方、ローカル型では大規模データをすばやく検索できるなど、そのメディアごとに特徴が異なる。

 特に、これまで一般的だった地図ソフトは「ローカル型」。インストールする際に数GBもの容量を必要とするが動作が速いのがメリット。場所を探すのに、住所や事業所名、公共施設名などから自由に素早く検索できる。地図を読み込む際にもタイムラグがほとんどなく、拡大縮小やスクロールがサクサクとできる点もユーザーにとってはありがたい。しかし、ソフト発売後、データ更新するまでの間に生まれた新しい地名などには対応できない。

 一方、最近増えてきているのは、地図ソフトメーカーのサーバーに格納された地図データを随時ダウンロードして利用する「Web型」。データのダウンロードに時間がかかる一方で、常に最新の地図データを利用できるのが最大の特徴。ブロードバンドによるネット接続環境が一般化してきたこともあり、この方式であれば地図の更新はもちろん、コンビニや旅館などのスポット情報や各エリアの天候や気温情報までもリアルタイムで反映できる。価格の安さもあり、こうした「Web型」の健闘が目立っている。



●大合併が収まるまではWeb型主流?

 ソースネクストの「ゼンリンデータコム デジタル全国地図」や、インクリメント・ピー社の「MapFan.net Ver5.5 パッケージ版」、「新撰1980円 MapFan.net DVDパッケージ版(9位)」などがいわゆるWeb型。サイトの利用権は1年に限られるものの価格が1000円台からと格安なのも魅力だ。

 合併が続く今年度一杯は高価なソフトは買い控え、情報が常に最新のWeb型の廉価ソフトでまかなおうとするのは賢明な判断だろう。なにしろ2005年10月1日に合併・編入が予定されているものだけでも、全国で51ヶ所。その日だけで100あまりの市町村名が地図から消えるのだ。市町村合併とブロードバンド環境の整備。このふたつの要因がダウンロード型地図ソフトの台頭を促し、今後のメインストリームになりそうな勢いだ。

 その一方で、アルプス社の「プロアトラス」シリーズやゼンリンの「ゼンリン電子地図帳Z[zi:]7 DVD全国版」などはローカル型。通信回線でのデータ転送量を気にせずにすむため、情報量が多い。地図上の建物の形状がわかるまで拡大できるソフトもまた、ビジネスシーンにおいては根強い需要がある。より詳細な記述を求めるならやはりローカル型がふさわしいだろう。


 また「Super Mapple Digital Ver.6」のように、PCで表示した地図やルートを携帯電話にコピーできる機能など、携帯ディバイスとの連携機能を持つソフトも出はじめている。PC、カーナビ、ケータイで情報の一元化がなされれば利便性は一気に向上するだろう。


●高機能化で「地図」から「総合地域情報ツール」へ

 また、このところ目立つのが地図ソフトの高機能化だ。検索機能の充実や見栄えの美しさなど基本的な部分ばかりでなく、通り抜けの可否を考慮して、徒歩・自転車・自動車毎に異なる最適ルートを発見する「ルート探索」を行ったり、燃費計算も含めたナビゲーションシステムなどを備えたものもある。簡易商圏調査機能を持つものもあり、もはや地図ソフトは「単なる地図」ではなく、あらゆる地域のデータをカバーする「総合地域情報ツール」だ。市町村合併が一段落する来年春以降はデータ更新のペースは緩やかになる。競争の舞台はデータの更新スピードから新機能開発に移っていくことになりそうだ。


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