デジカメ市場の流れを変える「お気楽デジタル一眼」、売れているワケは?

特集

2005/07/13 23:13

 コンデジ(コンパクト・デジタルカメラ)全盛の今、一眼レフのデジカメなんて……と敬遠する向きもあろう。しかし「Nikon D50」や「PENTAX *ist DL」を使ってみれば、その考えを改めることになるかもしれない。従来の一眼デジカメ入門機よりも、「もっと」簡単だからだ。価格も安く、そして何より売れている。そこで、デジタル一眼の売れ筋を紹介しながら、とくに、新しいジャンルともいえるファミリー向けの「お気楽デジタル一眼」の動向についてまとめてみた。

 コンデジ(コンパクト・デジタルカメラ)全盛の今、一眼レフのデジカメなんて……と敬遠する向きもあろう。しかし「Nikon D50」や「PENTAX *ist DL」を使ってみれば、その考えを改めることになるかもしれない。従来の一眼デジカメ入門機よりも、「もっと」簡単だからだ。価格も安く、そして何より売れている。そこで、デジタル一眼の売れ筋を紹介しながら、とくに、新しいジャンルともいえるファミリー向けの「お気楽デジタル一眼」の動向についてまとめてみた。

●一眼デジカメ入門機より、さらに手軽で簡単

 もともと「Canon EOS Kiss デジタル」に代表される「低価格デジタル一眼」のジャンルはあった。これより、さらに価格を下げて操作を簡単にしたのが「お気楽デジタル一眼」。この新ジャンルを代表するのが「Nikon D50」や「PENTAX *ist DL」だ。

 「究極の入門用デジタル一眼」として、登場前から大きな話題を呼んでいた「Nikon D50」。同じような特性を備えたPENTAXのデジタル一眼が「*istDL」。これら老舗のカメラメーカーから「お気楽デジタル一眼」が相次いで発売されたのはこの6月から7月にかけて。共に「従来の入門機よりもさらに扱いやすい一眼レフ」として、普通の人たちを強く意識したモデル。レジャーシーズン直前でボーナス直後という時節と相まって、ブレイクするのでは? との期待が高い。

 「お気楽デジタル一眼」の特徴は、マニアックな要素を完全に捨て、素人目に鮮やかな“絵作り”を行う画像処理エンジンを搭載する点や、記録媒体に一眼レフのスタンダードであるCFではなく、コンパクトデジカメで多く使われるSDカードを使用する点などが挙げられる。また、「レンズ込みで実売10万円以下」という低価格実現するため、連射枚数を少なくしたりAFの測距点数を減らすなどのスペック調整で、コストダウンを図っている点も特徴の一つだ。



 「お気楽デジタル一眼」として去る6月29日、先陣を切って発売された『Nikon D50』。売り上げは好調だ。BCNランキング2005年6月の月次データでは、デジタル一眼全体の売り上げランキングでボディ単体(黒)がいきなり19位にランクイン。トップ20のランク外ではあるが、ズームレンズ込みのレンズキットと標準&望遠ズーム2つのレンズが込みになったWズームキットが22位につけており、実質的に発売から数日間だけでいきなりこのポジションとは正直驚きだ。いかに注目されていたのかを示す数字といえるだろう。

●「2強」の牙城を崩すのは時間の問題?

 そんな「お気楽デジタル一眼」だが、もともとこのカテゴリは、2003年の「Canon EOS KISSデジタル」に始まる各社の入門機発表ラッシュで形成された「デジタル一眼入門機」という大きな市場から派生したものだ。代表的な機種は「Canon EOS KISSデジタルN」「Nikon D70s」「PENTAX *ist DS」「OLYMPUS E-300」などだ。

 このカテゴリの特徴は「とにかく売れる」ということ。非入門機のミドルレンジ?ハイエンドデジタル一眼レフを含めたランキングにおいても、1?8位までを『EOS KISSデジタルN』、『D70s』、『D70』それぞれの色違いバージョンやボディ単体、レンズキットバージョンといったバリエーションが占め、ミドルレンジクラスといえばかろうじて8、9位にミドルレンジの『EOS 20D』がランクインする程度。



 こんなデジタル一眼市場に『D50』や『*ist DL』などのファミリー向け一眼が新たに加わり、新たなジャンルを確立しようとしているというのが現時点での市場バランスだ。しかし立ち上がりの「D50」の勢いを見ると「Canon EOS KISSデジタルN」「D70s」2強の牙城を崩すのは「時間の問題」のようだ。

 特に「D70s」は「D50」がほぼ同等の性能を備えている点を考えれば、その存在意義が薄くなり「D50」にうっちゃられてしまう可能性すらある。「*ist DL」の場合は「*ist DS」からのスペックダウンが若干大きいため、「D70s」と「D50」の関係とはやや異なるが、同じようなことが起こらないとも限らない。一口に「お気楽デジタル一眼」とはいってもあなどれないのだ。そのうえ価格も安く、デジタル一眼レフ市場全体を牽引する存在にまで成長しそうな勢いを感じる。

●どうなる“コンデジ”との住み分け

 ファミリー向けという性格から真っ先に想像するのは、コンデジだろう。いくら「D50」や「*ist DL」がファミリーを強く意識した簡便な操作性を持っているとは言っても、その本質は一眼レフ。「お気楽」という点においてはコンデジに一歩も二歩も譲る。またサイズに関しても一眼レフはコンデジに太刀打ちできるはずもなく、多くのユーザーがコンデジを求めるという傾向は大きく変わることはないだろう。

 ところが、一歩「絵づくり」の世界に踏み込んでしまうと、とたんにコンデジではお手上げになってしまう。「運動会などで望遠レンズを使って子供を十分に“寄って”撮りたい」とか「おもいっきり“引いた”風景写真をじっくりと撮りたい」とか「ボケ味を活かして赤ちゃんの印象的なポートレートを撮りたい」などがその代表例だろう。かといって、従来のデジタル一眼は高価で難しい。思いどおりの写真を撮りたくても、「まあコンデジで我慢するか」という人たちも多かったに違いない。

 「お気楽デジタル一眼」は、そんな人たちにぴったりだ。さらにその完成度の高さゆえ、従来の銀塩一眼レフユーザーにも十分納得できるカメラともいえるだろう。「ユーザーに余計な撮影技術を求めず、誰もが美しいと感じる鮮やかな写真が簡単に撮れる」という特性を持つ「ファミリーデジタル一眼」。新たな市場形成へ向け、更なる機種の充実も期待したい。(市川昭彦<Aqui-Z>)


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